2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧
【公判調書1680丁〜】 「筆跡鑑定について」 中田直人 二、筆跡鑑定の科学性(後) フランスの筆跡専門家ソーランジュ=ぺルラー(注:1)は、「筆跡は、強さ、形、大きさ、連続、整頓の関係で決まる」と言った。日本文字に即して、筆跡鑑定でよく使われる用語で…
【公判調書1677丁〜】 「筆跡鑑定について」 中田直人 一、本件における筆跡とその鑑定の位置づけ 一通の脅迫状が被害者の自宅へ投げ込まれた時から、狭山事件における犯罪の存在が明らかとなった。脅迫状とその封筒が、真犯人への最も重要な手がかりである…
【公判調書1673丁〜】 第三{被害品} 橋本紀徳 三、筆入 被害者の未発見所持品の内に筆入がある。筆入は前出の五月二日付中田栄作の供述調書第十七項によれば「空色セルロイド、細目のフタつきのもの」である。 六月二十九日付の警察官調書第二十一項で被告…
【公判調書1670丁〜】 第三 {被害品} 橋本紀徳 二、三つ折財布 次に問題になるのは自白調書の中でしばしば述べられている身分証明書在中の三つ折財布である。これも善枝さんの所持品であるが、チャック付財布同様まだ発見されていない。この財布については…
【公判調書1669丁〜】 第三{被害品} 橋本紀徳 一、財布 五月一日当時、善枝さんはチャック付の財布を持っていたものと思われる。三十八年五月二日の警察官に対する供述調書の中で、中田栄作は善枝さんの当時の所持品について説明しているが、その中で「財…
【公判調書1666丁〜】 第二{脅迫状の疑問点} 橋本紀徳 五、加入訂正文字をめぐる謎 脅迫状と封筒の文字に加入訂正の跡が顕著に残っている。脅迫状は第一行目「子供の命がほ知かったら四月二十八日の夜十二時に」とあるうち「四月二十八日」が抹消されて「…
【公判調書1662丁〜】 第二{脅迫状の疑問点} 橋本紀徳 四、「リボンちゃん」 (1)被告人が単独犯行を自供し始めたのは、調書上では六月二十三日からであるが、翌二十四日の第二回警察官調書、六月二十五日の第一回検事調書と云う比較的早い段階から脅迫…
【公判調書1660丁〜】 第二{脅迫状の疑問点} 橋本紀徳 三、「少時様」の謎 脅迫状封筒表面に「少時様」と宛名が書かれ、後に消されている。脅迫状の本文欄外にも「少時このかみにつつんでこい」と記載されている。 「少時様」とは一体誰を指すのであろうか…
【公判調書1657丁〜】 第二{脅迫状の疑問点} 橋本紀徳 二、大学ノートとボールペンの出所 (2)ボールペンの出所も証明されていない。 自白によると、脅迫状の本文、及び封筒の最初の宛名「少時様」と書いたボールペンは、「兄ちゃんのもので、四畳半の手…
【公判調書1651丁〜】 第二{脅迫状の問題点} 橋本紀徳 一、封筒 (3)第二の疑問点は、被害者宅に届いた封筒がすでに封を切られていたと云う点である。原審第二回公判における中田健治の証言によると「封筒はちぎれておりました。・・・・・・そして、入れたと…
【公判調書1654丁〜】 第二 {脅迫状の疑問点} 橋本紀徳 一、封筒 (4)封筒に関する第三の疑問点はその出所である。前述のとおり、自白によると封筒の出所は自宅の仏壇の抽出しとあるが、右の自白も他の物証の場合と同じく、何ら補強されていない。四月二…
【公判調書1648丁〜】 第二{脅迫状の問題点} 橋本紀徳 一、封筒 (1)被害者中田栄作方に届いた脅迫状は、表側やや水色の入った白色、内側水色の二重封筒に入れられていた。捜査官の供述では、どこにでもある封筒で格別の特徴は見当たらないという。封筒…
【公判調書1645丁〜】 第一 {遺留品をめぐる問題} 橋本紀徳 七、玉石と棍棒 (1)ビニール布と同様、本件にどのような関係があるのか全く不明で不思議なものに、玉石と棍棒がある。死体発見現場に関する前記大野喜平の実況見分調書によると、「死体の頭に…
【公判調書1643丁〜】 第一 {遺留品をめぐる問題} 橋本紀徳 六、ビニール布と「丸京青果の荷札」 三十八年五月四日付大野喜平作成の死体発見現場に関する実況見分調書添付十一号写真によると、「ち : ビニール布」として映し出されているものがある。 一体…
【公判調書1640丁〜】 第一{遺留品をめぐる問題} 橋本紀徳 五、スコップ (1)スコップの処置について自白は次のようである。 「私は善枝さんを埋め終ると二階家の方へシャベルを持って帰りかけましたが、それを途中から右へ曲がって畑の中を通り、埋めた…
【公判調書1637丁〜】 第一 遺留品をめぐる問題 橋本紀徳 四、荒なわ (2)本件死体に荒なわが関係していることは、死体発見直後から大々的に報道されている(五月四日夕刊各紙、五月五日朝刊各紙)。 中川ゑみ子は当公判廷において、新聞で「荒なわ」のこと…
【公判調書1635丁〜】 第一 遺留品をめぐる問題 橋本紀徳 三、細 引 死体の喉と足首に巻きつけられていた細引の出所、用途、共に自白は客観的事実と合致しない。極めて重要な自白の矛盾点である。この点はすでに冒頭の中田弁護人の陳述に詳論されているので…
【公判調書1633丁〜】 第一 遺留品をめぐる問題 橋本紀徳 二、タオル 被害者の目かくしに使用されたタオルは、東京都江東区所在の月島食品工業株式会社が、昭和三十四年から三十七年までの間に作って、お得意先である食品店などに配った八千四百三十四本の内…
【公判調書1631丁〜】 第一 遺留品をめぐる問題 橋本紀徳 (3) 以上のように、手ぬぐいという本件の重要な犯行用具の出所に関する自白は、客観的事実と一致しないにも関わらず、敢えて被告人に、手ぬぐいは家より持出したものとの供述を維持させ続けてきた…
【公判調書1629丁〜】 第一 遺留品をめぐる問題 橋本紀徳 一、手ぬぐい (2)捜査官はこの苦境を切り抜けるため二つの推測をした。この推測は当公判廷で、前記滝沢検事が陳述する。第一の推測は、手ぬぐい捜査を知った被告人宅の誰かが、問題の手ぬぐいがな…
【公判調書1626丁〜】ここには、昭和四十五年四月二十一日の日付で、弁護人=橋本紀徳による東京高等裁判所第四刑事部宛の “弁論要旨・「 荒なわ」などの物証の問題点” が記載されている。内容は以下のとおり。 第一 遺留品をめぐる問題 一、手ぬぐい 二、タ…
【公判調書1623丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 万年筆 〉 六、ところで、万年筆が本当に被告人の自供によって発見されたのかを吟味する必要がある。被告人は当公判廷において、むしろ長谷部から、万年筆が君の家にあるぞという風に言われていると供述…
【公判調書1622丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 万年筆 〉 四、ところで、この第二次家宅捜索については、捜索差押調書が作成されたことが、小島証言により明らかである。しかし何故か検察官は、原審以来この第二次捜索に関する調書を証拠請求せず、弁…
【公判調書1621丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 万年筆 〉 三、捜査当局は六月十八日、第二次家宅捜索を実施している。当審の小島朝政証言によれば、この第二次捜索は、万年筆、鞄、時計といった重要な被害品の発見が直接目的になった。そして当日朝六…
【公判調書1619丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 万年筆 〉 一、六月二十四日付青木調書に、「万年筆は風呂場の敷居の上に今でも隠してあるから善枝さんの家に返してくれ」という記載がある。そして六月二十六日の、いわゆる第三次家宅捜索によって、被…
【公判調書1618丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 時計 〉 三、次に時計の「発見」について述べる。 時計を捨てた場所の捜索にあたったという飯野源治証人の証言内容は、極めて奇異なものであった。飯野証人は同僚四名くらいで、六月二十九日、三十日の二…
【公判調書1615丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 時計 〉 一、自供調書によれば、六月二十四日付青木調書に、初めて時計の形状についての供述がなされ、時計の図面が添付され、さらにその時計は、狭山市田中辺りで捨てたという供述とその地図が添付され…
【公判調書1615丁〜】 三つの「証拠物」 宇津泰親 〈 鞄 〉 五、『さらに右の点を裏付ける二つの事実を指摘しなければならない。 一つは関源三の泥まみれの点である。彼は何故か、この泥まみれになって取調室に戻ったことを否認している。被告人とはこの点で…