【公判調書2981丁〜】
「第五十六回公判調書(供述)」
証人=遠藤 三(みつ)・七十歳
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福地弁護人=「(先ほど示した原審記録第七冊二〇〇三丁、昭和三十八年六月二十一日付、青木一夫作成の被告人供述調書添付図面を示す)それは、すると、石川くんが書いた鞄のありかを示す図面になるわけですね」
証人=「と思います」
福地弁護人=「すると、鞄のありかとしては、その図面に鞄という風に書いて、線が引っ張ってありますね」
証人=「あります」
福地弁護人=「そこに鞄があると、こういう趣旨でしょうか」
証人=「そうですね」
福地弁護人=「この図面の見方ですけれども、ぎざぎざが付いてない一本の線ですね、実線と言いますかね、これは道路を示すんでしょうね、違いますか。縦、横、斜めに線があるのは、道路を示すんでしょうね」
証人=「と思います」
福地弁護人=「"かばん"という説明文の文字のすぐ上にぎざぎざになってるところがありますね、"みぞ"という具合に説明がありますね。鞄は、そうするとこの溝ではなくて、道路の部分にあるように説明がしてありますね。そういう趣旨に受け取っていいでしょうね」
証人=「私がこの図面から見ると、そうじゃないですね、道路じゃないですね」
福地弁護人=「では何ですか」
証人=「道路じゃなくて、どうも上手く説明が出来ないから分からないけれども、道路のある程度こういう風なところになるんじゃないでしょうか」
福地弁護人=「どうしてそういう説明になるんですか」
証人=「そこのところよく分かんねぇが」
福地弁護人=「だってあなたのさっきの説明では、そこは道路じゃないですか」
証人=「線は道路かも知れませんが、線じゃないでしょう、これは」
福地弁護人=「線でしょう、それは」
証人=「線じゃないですよ」
福地弁護人=「何ですか」
証人=「何だか分かりませんが線じゃないですよ、古いことですから記憶ないですよ、そう畳み掛けられても古いことなんで暫く考えなければ出てこないですよ」
福地弁護人=「最終的にはよく分からないということですか、結論としては。古いことだから」
証人=「いや、図面上で申し上げると、これは線の上じゃないんじゃないかということです。これは、線のところへ幾らかなっているから道路で言えば側溝みたいな格好のところじゃないかと」
福地弁護人=「どれが側溝ですか」
証人=「この辺がね、一本の線になっていないところだから」
福地弁護人=「今、あなたが示したところは一本の線じゃないですか」
証人=「なってませんよ、側溝じゃないかと、こういう記憶だということです。私は側溝のように見えるなという風な、まあ、そうではなかろうかということです。ただし今、弁護士さんが言うのには、この線は道路だと、こう聞かれたから線は道路だと思うと、こう言ったわけです」
福地弁護人=「その、今問題にしている部分の下に、ぎざぎざの線がありますね、"みぞ"と書いてあります」
証人=「はい、ありますね」
福地弁護人=「側溝のほかに溝があるという風に、あなたは理解しているんですか」
証人=「その図面がよく記憶がございませんけれども、この間が溝になるかも知れないですね」
(続く)