アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 895

スコップを持った石川さん。逮捕前日の五月二十二日に撮影された。

石川被告と親しい関係であった関 源三巡査部長。

【公判調書2788丁〜】

                 「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                          * 

宇津弁護人=「今あなたが言ったのは、石川君が最初にあなたに、まあ、やったということを述べたくだりですか」

証人=「それで申し上げますけれども、飯塚さんがじゃあ少し休んだら行ってみろと言われたので、私は行ってみたんです。だけどその部屋へ入る前に、私が休んでいる時に、誰か、その人は忘れたですが、飯塚さんの所へ来て、めしを食わないで弱ったものだという話をしていたわけです。そいつを私は、まあ、相手が話していたことですけど、そばにいたから聞きましたんで、入って行った時に、なんだお前、石川君めしを食わなきゃしょうがないじゃねえかと私は入って行ったんです。それで、うん、いや、いいだという風に言ってたです。その時に長谷部さんだの、青木さん遠藤さんと思うんですけれども、部屋にいまして、で、だめだお前めし食わなきゃだめだぞと、誰が言ったか、ちょっとなんですけど、そういうことを言っておったです。それで私も、この暑いのに、めし食わなきゃどうしようもない、痩せちゃうじゃねえか、めしだけ食わなきゃだめだぞと言って、そういう話のやり取りと言いますか、そういう話をそこでしたわけです。それをやってるうちにいや、おらいいんだと、めし食わなきゃ痩せっからと、痩せたっていいんだと石川君が言うから、そんなばか言うんじゃねえよと、またそこで話が切れちゃって、石川君、何だか俺に用があると言ってたけど、そんなこと言ってるんじゃおら来たってしょうがないから、帰るぞと、また話がそこで切れて、みんな黙っちゃったんだけど、そのうちに石川君が、いや関さん、こうだと、言い出したんです。だから特別、私が調べろと言われたわけじゃないんですけれども、そういう風になっちゃって、そこで出て、飯塚さんに実はこういうわけだと報告したら、それじゃその調書をお前が取れと、それでその晩は一番最初の晩ですけれども私が調書を取ったんです。だから、直接お前が調べろとか何とか言われたんじゃなく、そのときになってそうなったんです」

宇津弁護人=「その後に、先ほどから問題にしました裁判長の読んでくれた自転車の紐と鞄と一緒におっぽったということが含まれている調書をあなたが取調べて作ったことになってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それはどなたの指揮で調べたことになったんですか」

証人=「やはり飯塚さんです」

宇津弁護人=「そのときあなたは、自宅から川越の方へ直行したのですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「前の日に飯塚さんから明日も調べるようにと言われたんですか」

証人=「ええ、言われたんです。で、それはあの晩に鞄を・・・・・・」

                                            *

裁判長=「ちょっと、弁護人。その晩に、その調書が作られたと仰るのですか」

宇津弁護人=「その後で、ということです。その晩とは言いません」

裁判長=「その後にと言ったんですか」

宇津弁護人=「はい、その後にということで分けて言ったんです。で、調書では、二十一日付の紐と鞄を一緒におっぽったという調書が作られており、その後さらに、今度あなたが抜けて従前通り青木さんたちが中心になって調べが始まったことになりますね」

                                            *

証人=「はい」

宇津弁護人=「だから、肝心な時に登場して、すぐまたあなたは消えていくという役割なものだから、聞きたいんですが」

証人=「それは、二十一日の関係につきましては二十日に、じゃあ関さん、また来たら、その時、おら鞄を捨てたのを教える、と、そんな風なことを言ったわけです。それも飯塚課長には報告してありましたんで、じゃお前また明日来て、そいつを聞けと。それで二十一日に私はまた、うちから出て来たわけです」

宇津弁護人=「その紐と鞄を一緒におっぽったという時の調書を作った模様については、青木さんたちに模様を話したんですか」

証人=「私は青木さんというよりも課長に報告して課長が青木さんたちにも全部話したと思います」

宇津弁護人=「あなたは、二十一日付の調書が出来上がる前に図面を書いたりあるいは取調べそのものをやってるうちに中間的に飯塚さんに報告したことはあるのですか」

証人=「それははっきり記憶していませんが、調書が終わってからは全部調書を持って行って報告しましたんですが」

宇津弁護人=「そのときに青木さんなり飯塚さんから、あんたの調書じゃ教科書と鞄が一緒になってるが、実は教科書は全然別な所から出てるんだという話はなかったですか」

証人=「そういうのは、ありません」

(続く)

狭山の黒い闇に触れる 894

事件当時の石川一雄さん宅(1963年6月18日撮影)。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2786丁〜】

                     「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                             * 

宇津弁護人=「前にも聞いているので詳しくは言いませんが、あなたは本件発生して一審の判決があるまでの間、石川君宅に何回足を運んだ記憶がありますか」

証人=「それも前に、先生にそれを聞かれたんですが、はっきり覚えておりませんが、四、五回は行ってると思います」

宇津弁護人=「石川君のお母さんがお風呂場で洗濯していたような時に行かれたこともありますか」

証人=「洗濯ではなく、裏の部屋の中に立ってたです。私が行った時には」

宇津弁護人=「裏の部屋というと、台所ですか」

証人=「いや、そうじゃない、道から入ると庭になってまして、左側が玄関で、右側の方がお勝手の方の部屋だったわけです。で、私が道から庭に入って行った時に、お勝手の方に立っていたことがあります」

                                            *

裁判長=「最初、裏の部屋に立っていたと言うんじゃないの、それと今の、勝手というのはどう違うの」

証人=「部屋じゃなく、勝手です」

裁判長=「最初から勝手の方に立っていたことはあると」

証人=「はい」

                                            *

宇津弁護人=「風呂場の方で洗濯して、声をかけてもなかなか返事がなかったということがありませんでしたか」

証人=「洗濯をしてて声をかけてですか・・・・・・」

宇津弁護人=「洗濯かどうかは別として、お風呂場辺りで何かやってて、そこに声を何回かかけてやっと聞こえたという時がありませんか」

証人=「そういうことはないです」

宇津弁護人=「ないということをはっきり言えますか」

証人=「言えます」

宇津弁護人=「じゃ、石川君のお母さんと、あなたの言うお勝手で立ち話をしたことはあるんですか」

証人=「私が庭の方へ、お袋さんが部屋というか、家の中ですが、そこで立ち話をしたことがあります」

宇津弁護人=「私の言う質問は、お勝手にいるお母さんと、お勝手か台所の方かであなたが立ち話をしたことがあるかと、部屋の中で」

証人=「部屋の中はありません」

宇津弁護人=「それじゃ、石川君の下着を持って行ってやりたいがと言った時に、後で持って行くとか何とかで、下着を差し出さなかったということがありますか」

証人=「今、先生にそう言われて思い出したんだけど、そういうことがあったかも知れません」

宇津弁護人=「証人は時計に関して、何か下命を受けてやったことがありますか」

証人=「時計のことは全然ありません」

宇津弁護人=「するとさっきの、六月二十一日付の調書にちょっと戻るんですが、あなたが鞄のことを聞いたり図面を書かしたりというような、いわゆる取調べを行なうようになったのは、誰の指示によるんですか」

証人=「それは飯塚課長です」

宇津弁護人=「青木一夫さんからは直接は、やらなかったんですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「どういう事情であなたに調べるように言ったんでしょうか」

証人=「それは私に竹内署長が、今晩六時頃までに川越の分室へ行って青木課長がいるから、用があるからそこへ行けと、そこへ行って指揮を受けろと、こういうわけだったんです。それで私が大体時間は六時頃だと思うんですけれども、行きましたら、青木課長がいまして、いや、石川君がなんか用があると言うから来てもらったんだと、だからまあ、少し休んでくれ、一服やったら石川君の所へ行けと、こういうわけだったんです。それで私、少し休んでいまして、時間はどのくらいかはっきり記憶ないんですが、少し休んでいたら、じゃあ、行ってみるかと、飯塚課長が言うので、それで取調べの部屋へ行ったんです」

宇津弁護人=「あなた、狭山からわざわざお出かけになったんですね」

証人=「そうです。その当時、狭山署で自分の仕事をやっておりました」

宇津弁護人=「わざわざあなたに白羽の矢が立って取調べに参加するというのは、それなりの事情があってのことだと思いますが、そこを何か、今の、そこはかとないことじゃなく、もう少しあれば率直に述べていただきたいんですが」

証人=「私は、署長から言われて、今晩行けと言うんだけど、実はその時、前ならば堀兼の向こうにいましたが、自分の部署に帰ってやってて、何の用があるのかなという感じがあったんです。だけど、行けと署長が言うものですから六時前後に行ったわけです。それで飯塚課長がいまして、今申し上げたように、石川君が何か用があるからと・・・・・・」

                                            *

裁判長=「さっきね、竹内署長は、向こうへ行って青木の指揮を受けろと、こう言ったと。それから向こうへ行って、青木が、石川が何か用があるから、そこで休んでいろと、そしたら飯塚が、今度は行ってみるかと言ったというんで、青木と飯塚二人出てくるが、どっちか」

証人=「私は飯塚課長だと思うんです」

裁判長=「最初、竹内署長から青木の指揮を受けろと言われたのか」

証人=「私は、飯塚課長から・・・・・・」

裁判長=「今、竹内署長から青木の指揮を受けろと言われて、向こうへ行ったら、青木から石川が用があるからと言われた、それで休んでから、飯塚が初めて、それじゃ行ってみるかと、それで行ったと」

証人=「それじゃ私の申し上げたのは間違いで、最初から飯塚さんです」

                                            *

(続く)

 

 

狭山の黒い闇に触れる 893

狭山事件捜査本部は当初この事件について次のような見解をもっていた。

同本部は犯人がさる三日午前零時過ぎ佐野屋付近において、殺された善枝さんの姉登美恵さんと離れて会った時、登美恵さんとの応答に使った言葉は明らかに埼玉訛りがあった。また中田さん宅へ投げ込んだ脅迫状はたどたどしい文字や誤字がたくさんあった。この中に「西武園」という文字だけが正しく書かれていた・・・これらの点から犯人はあくまで土地カンのある者か土地っ子と推定している。

当局が犯人は善枝さんと顔見知りとみているのは、善枝さんが顔見知りでなかったなら、なにも学校帰りに人通りの少ない第一現場と見られる山林内に入っていなかったのではないか。それを山林内に入って行ったのは、やはり犯人と顔見知りではなかったかと見ているわけだ。当局の四日夕方から夜にかけての聞込み捜査の焦点は善枝さんの通学コースである入間川と自宅間、ことに入間川と殺された現場の間に絞っているところから犯人は善枝さんの通学コースの中でも、特に入間川と現場間の地理に詳しい者としている(狭山差別裁判第三版=部落解放同盟中央本部編より引用)。

 

【公判調書2784丁〜】

(五月二十五日、被害者の教科書・ノートが雑木林と畑の境界の溝で発見された。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

                  「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

宇津弁護人=「六月の二十七日頃、教科書が出たことを聞いたというが、何らかの必要があって特に詳しく調べてみたとか人に聞いたことがあるかも知れないけれども、教科書が発見されたということを六月二十七日に聞いたというのはちょっと不正確でしょう」

証人=「二十七日というのは、川越へ行って幾日かしてからだと思うので、六日か七日、必ず七日とは言えません」

宇津弁護人=「教科書が、いわゆる狭山時代発見されたということで、新聞記者なんかも大騒ぎしてたんじゃないですか」

証人=「今私どもが考えても教科書の出たのは幾日か、本当のことははっきり分からないです」

宇津弁護人=「何日に発見されたかをあなたから聞き出すことよりも、客観的には警察に嘘がなければ五月二十五日に教科書類が発見されたことになってるんです、訴訟の資料の上でね。だからその日に知ったかどうかは別として、その頃、つまり狭山時代とも言いますか、その頃教科書が発見されたんだということを、あなたが当然知っていたのではないかと思うので聞いてるんです」

証人=「その発見されたというその当時は、私は分かりませんでした」

宇津弁護人=「あなた、石川君と前から知り合いだということで、この事件の内容については関心を持っておられたんでしょう」

証人=「そうです、私、友だちですから」

宇津弁護人=「それから、狭山時代も川越に行ってからも上司の指示でいろんな、部分的ではあれ、取調べにも捜査にも従事されたようですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「ところであなたは、六月の二十一日かどうかは別として、青木さんたちが石川君に鞄を捨てた場所を聞いていた時に、服を泥だらけにして、石川君のところに現われたことがあるのではないですか」

証人=「泥だらけということはございません」

宇津弁護人=「しかし、青木さんの取調べの時に立会人になっているはずの遠藤さんという人は、別なことで法廷に来られて、あなたが泥だらけになって来たようなことを述べてるんですが」

証人=「泥というのは絶対ないです。オートバイで砂利道を走って来るとほこりが、まっ白になるんです」

宇津弁護人=「仰る通り泥とほこりは違うね」

証人=「ですから泥とほこりは違うんです」

宇津弁護人=「私の聞いているのは、違いに立って、あなたがお尻とか手の方も泥だらけになって、こんなに捜しても無かったぞというようなことを言いながら青木さんたちの所へ来たことはなかったかと聞いてるんです」

証人=「泥だらけということはございません」

宇津弁護人=「それから次の質問ですが、石川君が取調べをしている方々から万年筆のことを聞かれていた時に、あなたもちょっとその側にいたということがありますか」

証人=「私も、調べてる時、出たり入ったりしてましたから、その時、あるいは万年筆なり鞄の取調べをしていたかどうか分かりませんですが、そうしたことははっきり記憶ないんですが」

宇津弁護人=「あなたは石川君に、弟の友だちの誰かに、上がっていって持って来てもらおうかという趣旨の声をかけたことはないですか」

証人=「いや、ないです」

                                            *

裁判長=「ちょっとわからないんですが、どういう質問ですか」

宇津弁護人=「被告が述べていることなんですが、被告に、弟の友だちに持って来てもらおうかと、声をかけたことがないかということです」

裁判長=「弟のね」

                                            *

宇津弁護人=「はい。とにかく、万年筆のやりとりの時に、たまたま入って耳にしたことがあるのですね」

証人=「そういう話があったとも言い切れないし、ないとも言い切れない、よく分からないんですが」

宇津弁護人=「万年筆の内容について聞くのはあまり深入りしませんが、万年筆に関してやりとりしている時に、たまたま、いて、耳にはさんだことがあるのでしょうか」

証人=「そういうことがあるかも知れません」

宇津弁護人=「それから本件発生当時のあなたのお住まいですね、それと石川君の家との距離はどの程度だったんですか」

証人=「直線にしますと二百メートルか、まあ、二百か二百五十メートルぐらいです」

(続く)

 

 

狭山の黒い闇に触れる 892

写真は証人=関 源三巡査部長(階級は事件当時のもの)

【公判調書2781丁〜】

                    「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

宇津弁護人=「それから六月二十一日、その同じ日付の、青木一夫さん、立会人遠藤さん。この人たちが作った調書があるのですが、あなたは青木さんたちが・・・まあ、あなたが調べた後になるんだろうと思うんですが、調べていた部屋にいたとか、そういうことがありましたか」

証人=「出たり入ったりしてました。ずっと立ち会うというのは、私はなかったんです」

宇津弁護人=「青木さんたちに、石川君が鞄についてどのようなことを聞かれたり述べたりしていたか、耳に挟んではおりましたか」

証人=「それは知りません」

宇津弁護人=「あなたが同じ日に、青木さんたちが調べる時に出たり入ったりしていたというのは、何の用件があったんですか」

証人=「お茶を持って来いとか、何とか。そういう時にお茶を持って行ったりなんかしたです」

宇津弁護人=「あなたが、石川君に聞いたという時点では、つまり、最初の図面を書いてもらったという時点では、当然、鞄とゴム紐を一緒におっぽったというんで教科書も鞄の中に入れたまま、おっぽったという理解であったわけですか」

証人=「一緒におっぽったということは、その中にそのまま入っていたんじゃないかという風に思ったわけです」

宇津弁護人=「同じ日の青木さんの調書の中では今度は本と鞄は別々だということが現われてくるわけですがね、その辺のいきさつをご存じですか」

証人=「いや、それは、調べにわし行ってないんで分からないです」

宇津弁護人=「あなたが最初に捜しに行って無かったというのであれば戻ってきて、今度青木さんがやはり鞄を捨てた場所について調べている模様については見てるわけではないですか」

証人=「私は行って、ただ無かったというだけで、そこに、調べには立ち会っていませんです」

宇津弁護人=「いや、青木さんたちが鞄のことで聞いたり図面を書かしてることを見てるんですか」

証人=「図面の時は私は一緒にいました」

宇津弁護人=「その段階では、当然、本と鞄は別々なところだという話題は出てたのではないですか」

証人=「いや、私が飛びこんだ、というとあれですが、その部屋へ入りまして、いや、行ってきたけど無かったよと、そう言ったところが、その時少し間があったんですけれども、それで、じゃあ今度、ここだからもう一ぺん行ってくれと、石川さんが書いたんで、その時だけは私いたんですが、それを持ってまた部屋を飛び出したんで、あとは、調べの状況は分からないです」

宇津弁護人=「それでは、第二回に行ったというならば第二回目の時は、今度はあるという心証を持って行ったんですか」

証人=「あるかも知れないというような感じはあったです」

宇津弁護人=「しかし客観的には第二回目の時には、川越からとそれから捜査本部ですか、そのほうから、かなりの人数を動員して落ち合って行ったようですね。鑑識も連れてね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「警察としてはその図面で行けば必ず鞄は出てくるだろうという考え方があったのではないですか」

証人=「私はあるかも知れないというような感じはありました」

宇津弁護人=「それはどういう理由でそのように考えられたのですか」

証人=「図面から行きますと溝の中なんです。溝は私は見てないから、あるいはあるかなという気がしたんです」

宇津弁護人=「六月二十一日に、あなたが調べをしたというんですが、あなたが鞄のことを調べたという時期には、教科書ノートなどが客観的にはすでに発見されていた時期になるわけですね」

証人=「ええ、そうです。あとで聞いたからそれは分かります」

宇津弁護人=「石川君は、ポリグラフ嘘発見器にかけられた時に、本が出てきたところを示されてテストされてるようなんですが、そういう模様は証人はご存じですか」

証人=「いや、全然知りません」

宇津弁護人=「本がどこから出てきたか、後で知ったというんですが、それではいつ頃知ったことになるんですか」

証人=「それは川越にいるうちですから、六月のいずれにしても二十六、七日じゃないかと思うんですが」

宇津弁護人=「どういう機会に知りましたか」

証人=「それは皆が話していたのを聞いたんです」

宇津弁護人=「しかし、それより一ヶ月以上も前に五月二十五日に教科書類が発見されたということで、警察では大変な話題になっていたはずなんですがね」

証人=「それは、この間の時も先生に言われたんですけれども、私のほうは捜査やってないから、ほかの人は誰も話さないんです」

宇津弁護人=「ちょっと待って下さい、仮に警察からでなくてもゴム紐発見、教科書発見、死体発見というのは当時の狭山事件、善枝さん殺し事件で大きな話題になっていたと思うんですが、当の、直接何をやっていたかは別として、警察官の一人であるあなたが五月二十五日頃にすでに教科書が出てきたのだということを知らないというのは、ちょっと理解できないんですが」

証人=「この間、先生に言われた通りなんですけれども、当時直接捜査にあたっている人はいろいろ分かると思うんですけれども、ほかの係の者には、捜査の人も状況は全然話さないし自分の仕事で追われていて、そういう間がない、間がないというとあれですけど、こっちも、どうだという風に捜査の状況を聞こうともしなかったから尚分からなかったです」

宇津弁護人=「あなたは当時、テレビを見たり新聞を見たりする習慣はありましたか」

証人=「テレビなどおそらく見たことありません」

宇津弁護人=「新聞はどうですか」

証人=「新聞もたまっていたのを大きい記事だけひょっと見ただけであの当時の狭山の署員は何て言いますか、ゆっくり新聞を見てる余裕はなかったです」

宇津弁護人=「あなたは、テレビを見ない、新聞もろくろく見ない状況というのは、どういう特別な状況があったんですか」

証人=「それは夜も遅くなって、数が、結局人員も少ないし、雑用に追いまわされ、まあ追いまわされてると言うと何ですが、雑用に使われ、夜も、帰りも遅いし、署ではテレビを見てる間もないし、あの頃は自分でテレビを見たことはありません」

宇津弁護人=「あなたの自宅で新聞は取ってましたね」

証人=「取っております」

宇津弁護人=「何新聞を取ってましたか」

証人=「あの頃は読売です」

宇津弁護人=「ざっと新聞に目を通す程度はやっておったんじゃないですか」

証人=「朝起きると、上だけちょっと見て飛び出す程度です」

宇津弁護人=「新聞の各紙面をさっとめくって目を通すぐらいのことはなさっていたのですか」

証人=「はい」

(続く)

狭山の黒い闇に触れる 891

昨日は、強風が吹く中、何とか晩飯を入手し生命を維持することに成功する。

酒瓶の右側に見えるビニール包みの平べったい物質はコンビニ特売おにぎりである。写真手前に写るのは本日のメインディッシュ、鮭塩焼きであり、これは干からびた大根おろしを添え、頂いた。はっきり言うと刑務所の食事の方がかなりマシに思えるが、しかしそこに酒は無く、食後の一服も望めない。ならばこの現状をこの上ない幸福と捉え受け入れよう・・・。

                                            *

昭和三十八年五月四日、狭山事件特別捜査本部が狭山市役所堀兼支所に設置され、本部長は中=県警刑事部長、副本部長は竹内=狭山署長、山中=県警鑑識課長、本部付警視として長谷部梅吉、将田政二が任命され、県下各署より八十二名の警察官の応援を得て、狭山署員を含め百六十五人の捜査員をもって構成された。これより先、三日の山狩りで、関 源三巡査部長が被害者中田善枝の自転車の荷台にカバンをしばっていたと思われるゴム紐を発見したと各紙は伝えた。関 源三の一審における証言で、入間川井戸窪の山林の中でS字形になって投げ出されていたという。この場所は現在すでに切り開かれて住宅地になっているが、急傾斜の山林で、どうしてこんなところを自転車で通ったのか、極めて不自然に考えられる場所である。なお、このとき新聞記者はゴム紐と一緒に「布地の切れはし」(毎日新聞5・4)を発見し、付近にタバコの「みどり」の包み紙と油じみた軍手袋の片方が落ちていたことを掴んでいるが、ゴム紐を除く物品の意味は少しも明らかにされていない。

このゴム紐が被害者中田善枝のものであったとすれば、事件の証拠品の最初の発見なのだが、発見者が関 巡査部長だったということを差し当たって記憶しておく必要がある。なぜならこののち、カバンを発見したのも彼であって、この事件に果たした関の役割は極めて大きいのである(狭山差別裁判第三版=部落解放同盟中央本部編より引用)。

【公判調書2778丁〜】

                    「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

裁判長=「分かりますか、弁護人の言ってることが」

証人=「分かります」

裁判長=「それじゃ念のために、あなたの作った調書を読んで聞かせておきましょう。記録第七冊一九九六丁の表、三行目から、『その鞄を自転車のけつへくっつけて手紙を善枝ちゃんの家へ持って行き乍(なが)ら、捨てたんだね、自転車のけつには紐がついていたんだ、どんな紐だったかはっきりしたことはわかんなかった。それで善枝ちゃんが死んだ所から、山の中を山学校の方へ行って、山を出はずれる所の畑から二十メートルくらいで山の中から行くと、道の左側で三十メートルぐらいの所へ捨てたんだ。鞄の中には帳面と本があったのは知ってるけどその他何かあったと思うけどわかんなかった、それを自転車からおろして鞄ごと山の中へおっぽうっちゃったんだ、それから山学校の方を回って、善枝ちゃんの家へ手紙を持って行ったんだ、自転車の紐も鞄と一緒におっぽうっちゃったんだ、それっきり行かないから鞄がどうなっているか知らない』、そういう風になっていて、この前見せてもらった六月二十一日と鉛筆で、石川一夫と書いてある図面がくっついてるわけだ、それを今聞かれるわけです。それに答えて下さいというわけだね。紐から何十メートルというのは確かにこの調書には書いてない、そう初めから被告が言ったならば調書に書いてしかるべきものだということが確かにあるんじゃないか、それもくるめて弁護人は聞いているんだが」

証人=「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

                                            *

宇津弁護人=「どうですか」

証人=「よく分からなくなってしまったんです」

                                            *

裁判長=「よく分からないというのは、最初から紐から西のほう五、六十メートルの所に鞄は捨てたんだと被告人が言ったんだか言わないんだか、それが分からないというのか、どの辺がか、はっきり言えるなら言って下さい」

証人=「一緒に捨てたというのと、実際の図面で見ると、ゴム紐より五十メートルも離れているのを、じゃあ、そこがおかしいからどうしたんだと、そのことは、どうもはっきり分からないですが」

裁判長=「(記録第七冊一九九九丁、昭和三十八年六月二十一日付被告人の供述調書添付図面を示す)この図面でそういうことが分かるのですか」

証人=「この間ここへ来た時にこの⬜︎印のところが鞄を捨てた位置と言いましたが今もそう思っているわけです。で、これとこれが約五十メートルくらいです」

                                            *

宇津弁護人=「これとこれというのは」

証人=「この✖️印だと思うんです。学校の方から来た道の西側のここから四、五十メートルくらいあるわけです」

                                            *

裁判長=「その図面には、あまり説明の文句が書いてないんだが、ここは紐を捨てたところというような説明がないでしょう、ここに」

証人=「はい」

裁判長=「どうして説明をつけさせなかったの、ここは紐を捨てた所、この四角いところは鞄を捨てた所という風に被告が図面において示したならば、そう書かしておけば調書と相まって一番よく分かる。調書の中には確かに一緒に捨てたと、一緒に捨てたというのは、疑えば、場所的意味の一緒というのか、その時の時間的あるいは五十メートルやそこらぐらいの距離はあっても、大体その辺という風な意味の一緒を意味するのか、それは考えられないこともないが、まあ正確を欠くね。一緒と言うんだから同じ所だという風に普通考えるかもしれない、それを図面の上で説明させなかった。というのは、ほかの図面では説明させてるところがあるでしょう、これは何かを捨てた所とか書かしてある、ほかの図面ではね」

証人=「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

裁判長=「あなたはほかの図面には関係してないのか、二十日と二十一日だけか」

証人=「はい」

裁判長=「ほかの警察官が書かせたのでは、これは時計を捨てた所とか、何をした所という風に書かせてあるんだ。それは符号だけで⬜︎とか✖️しかないから、✖️は紐を捨てた所、⬜︎は鞄を捨てた所というのが図面の上じゃ分からない。あなたの説明を待たなければ分からないんでそれも今日になってみると"だろう"という証言しか出来ない原因になってるわけだね」

証人=「はい」

                                            *

宇津弁護人=「あなたは、当時の理解としてゴム紐を捨てた所は、インクの染みがあって隣に✖️がありますね、ここだと言われたんですか」

証人=「じゃないかと思うんですが」

宇津弁護人=「その✖️の下の印は何であるか思い出しませんか」

証人=「これは、今言われたんですけれども、細かい点が分からないんで・・・・・・」

宇津弁護人=「あなたは、地元にある程度長くお住まいになっていた方のようですが、ゴム紐と鞄を一緒におっぽったという言葉の意味ですが、たとえばそこに一緒にぽんと捨てたんだという風な理解になりますか」

証人=「それは、私一緒というのは、ある程度の付近も一緒のうちに入ると思ったんです」

宇津弁護人=「狭山地方でごく一般的に、これとこれを一緒におっぽったんだと言う時に、それは一緒に捨てたんだということになるんじゃないですか」

証人=「一カ所にまとめてという意味ですか」

宇津弁護人=「二つの物を持ってて、一緒におっぽったということは、そこに、それは何センチの隔たりがあるかは別として一緒にそこへ捨てたということになりませんか」

証人=「一緒におっぽったということは、同じでなくても、そんなに遠くはない所に捨てたというのが普通、一緒に捨てたと言ってるんです」

宇津弁護人=「今、裁判長のほうで、多少離れても一緒におっぽったという意味が含まれているのではないかと言ったのであなたはそういう風に言ったんじゃないですか」

証人=「いや、そういうことはありません」

                                            *

裁判長=「いや、裁判所は、そういうことは言いませんよ、あり得ると言ったんです」

                                            *

宇津弁護人=「あり得るということをヒントに言ったんじゃないですか」

証人=「そうじゃないです。ただ一ヶ所にまとめる、そういうことも含めてるんですが、そう遠くない範囲に捨てたのも、まあ、普通一緒におっぽったと、そういう風に言ってますから」

宇津弁護人=「あなたの言い方によると、ゴム紐と鞄を五、六十メートル 離れた所に捨てたという意味を、一緒におっぽったんだという風に理解していたということになるんですか」

証人=「その点が、五十メートルも離れてるということになると、一緒に捨てたというのもおかしいと思うんです。五メートルとか十メートル、そのへんならばあれですが」

(続く)

                                            *

 

 

 

 

狭山の黒い闇に触れる 890

【公判調書2776丁〜】

                   「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

宇津弁護人=「それでは、最初捜しに行って、どれくらいの時間捜したのですか」

証人=「全部で、出てから二時間ちょっとかかったんじゃないかと、今、そういう風に感じます」

宇津弁護人=「川越から、いわゆる現場まで何で行きましたか」

証人=「オートバイです」

宇津弁護人=「往復どれくらいの時間ですか」

証人=「往復大体三十分くらいです」

宇津弁護人=「すると、一応一時間半程度、区切られた地点で捜したということですか」

証人=「はい、時間は正解に一時間半とはっきり言い切れませんけれども、大体そのくらいの見当です」

宇津弁護人=「すると、かなり広い範囲で、その山の中を捜したことになりそうですね」

証人=「ええ、そうですね。学校の方から来る道があるんですが、その道の西側ということなんです、ですから最初そこを、その山を捜したんです。それからもう少し、それじゃこの道を間違ったかなという感じもいろいろしましたんで、その辺付近を捜したんです」

宇津弁護人=「道の東側はどうなんですか」

証人=「東側はあまり捜さなかったんですが」

宇津弁護人=「でも少しは捜したんですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「山裾の溝か川か、そういう窪みの辺りにもあるかという想定で捜されたことがありますか」

証人=「そっちは行かなかったんです」

宇津弁護人=「どうしてでしょうか」

証人=「裾の方と、図面を書いたところとは方角が違うし、山の何と言いますか、中腹の所ですから」

宇津弁護人=「しかし、あなたの言う第一回の図面がくっついている調書の内容と照らし合わせますとね、自転車の紐も鞄と一緒におっぽっちゃったんだという表現で書かれている調書なんですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そういう調書の内容と、今あなたが述べている、いわゆる第一回の図面の鞄を捨てたという場所は、ゴム紐から五、六十メートル西方だというのとは大きな隔たりがあるのですが」

証人=「一緒に捨てたということでございますか」

宇津弁護人=「あなたが取った調書の内容がその調書に添付した第一回の図面となっているようですが、その図面の内容が大きな隔たりがあるようだけれども」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

宇津弁護人=「それともあなたの、六月二十一日付のゴム紐と鞄を一緒におっぽったという風に書いた調書に添付されている図面は、あなたが捜す時持って行った図面と違うものなのですか」

証人=「いやそれは持って行ったのは同じなんです」

宇津弁護人=「と、真実、石川君がゴム紐のところから西方、五、六十メートルのところに捨てたような趣旨のことを述べていたとするならば調書がそのようになっていないといけないのではないかと思うがどうですか」

証人=「調書では鞄と一緒におっぽったという風に私は記憶しておるんですが」

宇津弁護人=「質問についてどうですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

                                            * 

裁判長=「弁護人、証人に質問を繰り返して下さい」

                                            *

宇津弁護人=「質問を繰り返しますが、あなたが取った六月二十一日付の調書の内容には、自転車の紐も、鞄と一緒におっぽっちゃったんだという風な記載があるのです。それでその調書には、あなたの言う第一回目に捜しに行った時使ったという図面が添付されているのですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「その図面であなたが当時理解したのは、ゴム紐の地点から西方、およそ五、六十メートルということだ、というのが只今の証言でしたがそうすると、最初述べたゴム紐と鞄を一緒におっぽったんだという供述とは大きな隔たりがあるのですが、それはどういうわけですかという問です」

証人=「最初は一緒におっぽったというのに、先生の言う五十メートルも違うのでは、その点が違うと、こういうことでございますか」

宇津弁護人=「そうでもないんだ、あなたがね、自転車の紐と鞄と一緒におっぽったんだという調書を六月二十一日に作っておるようなんですね」

証人=「私もそれはそういう風に記憶しております」

宇津弁護人=「その調書に添付されてる図面がいわゆる第一回に捜しに行った時に使った図面だというわけでしょう」

証人=「はい」

宇津弁護人=「すると、あなたがその図面、あるいは石川君が説明したというならば、図面及び石川君の説明によって理解した地点はどこかということの答えとしては、ゴム紐発見地点より西のほう五、六十メートルのところだという説明でしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「調書作成、あるいは図面作成の時点でそのような説明があり、あるいは理解があったとするならば、調書の中身が鞄とゴム紐を一緒におっぽったという風にまとめられ完成するのはおかしいんですよ、それは何故だろうかと、実際に取調べをしたというあなたに聞きたいのです」

(続く)

                                            *

⑬は教科書発見地点であり⑭が鞄発見地点となる。石川被告人はこれらを"一緒におっぽった(捨てた)"と供述、これは調書に記載される。ところが、実際の教科書・鞄の発見地点は距離が離れ過ぎており、"一緒におっぽった"という供述とは乖離している。

図面左下⑬教科書発見地点。図面中央やや上⑭鞄発見地点。⑬と⑭はこれだけ距離があるが、これを一般的に、"一緒におっぽった"と言えるのか、また取調べ側も疑問に感じなかったのか、証人を含む警察側は後世まで重大な疑義を残すこととなる。

 

狭山の黒い闇に触れる 889

【公判調書2767丁〜】

                     「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

昭和四十六年十一月九日 午前十時。

                                            *

宇津弁護人=「前回、山狩りのことをお尋ねしましたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「五月三日の山狩りの時にあなたがゴム紐を発見したということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「その時、これは事件に関係あるものではないかという風に感じたということでしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それが、被害者の自転車の付属品であるとはっきり確認されたのはどういう時期になるのでしょうか」

証人=「それは本部の方で、向こうの被害者の家へ行って確認したんです。で私は、直接行って確認はしないです」

宇津弁護人=「と、大体、発見のその日のうちに被害者宅に見てもらって、これは善枝の自転車に付けてた紐だということがわかったということですか」

証人=「それは、その日か翌日かどうかはっきりしませんです」

宇津弁護人=「その日か、翌日ぐらいだろうという感じですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「このゴム紐が発見されたということになって、それではそのほかの品物がそこを中心に発見されるかも知れないということで、引き続き捜索を行なったということがありますか」

証人=「はい、そのまま山狩りを続けたわけです」

宇津弁護人=「前回、五月四日も山狩りを続けてその結果、死体が発見されたということは述べていただいたわけですね、あなたは参加しなかったそうだけど」

証人=「はい」

宇津弁護人=「私の今のお尋ねは、やや観点を変えて、ゴム紐を発見したということがきっかけになって、その他の品物も、ゴム紐発見付近から発見されるのではないかという予測でその付近の捜索が行なわれたことがあるかということなんです」

証人=「特別そうは感じませんけれども、いずれにしてもゴム紐が被害者のじゃないかという風に感じたんで、その辺に何かまだあるかというような感じはありました」

宇津弁護人=「あなたの感じは聞きましたが、捜査陣として、あなたが入っても入らなくてもいいが、五月三日のゴム紐発見に引き続いて、その他の物件の発見に、その現場をさらに捜索したことがありますかという質問なんですが」

証人=「さらにというのはないと思います。私は、まあ四日の関係は分からないんですけれども」

宇津弁護人=「四日に限らなくてもいいんですよ、五日でも六日でもね。もう少し問いを簡単にしますとね、五月三日にゴム紐発見されてから後ですね、三日、四日、いずれも結構ですが、そのほかの物件について捜索が行なわれたかどうかです」

証人=「それは分からないですが」

宇津弁護人=「それでは、前回の証言では、ゴム紐を発見されて、その直後のあなたの行動について若干言い方の変更もありますが、最終的にはあなたは誰かに頼んで捜査本部に連絡したということでしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「で、山狩りはそのまま先に進んでいったということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それで、証人は現場と申しますか、そこに残ったんだということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そこに残ったのは、証人お一人ですか」

証人=「いや、私だけではないです。あと消防の人が幾人かいたという風に、数は分かりませんけれども考えております」

宇津弁護人=「警察官は、あなた以外に誰か残ったのですか」

証人=「誰かいたんですけれども、忘れてしまいました」

宇津弁護人=「総勢何人くらいそこに残ったという記憶ですか」

証人=「四〜五人ぐらいと思っております」

宇津弁護人=「その四〜五人の方々は、そこで何をされたのですか」

証人=「別にこれということはしないで結局、本部からの指示、連絡があるまで待ってろというわけで待ってるわけです」

宇津弁護人=「何もしないで待機していたのですか」

証人=「そこにぶらぶら、何といいますか、ひと休みしてるような格好でいました」

宇津弁護人=「本部からの何らかの連絡、あるいは指示があったのですか」

証人=「ええ、あったんです」

宇津弁護人=「あなたに直接その連絡はあったのですか」

証人=「実況見分をやるからという連絡があったんです」

宇津弁護人=「その後、実況見分が行なわれたことになるんですか」

証人=「それで、関口部長と思いますが、実況見分をやることになったということを聞きました」

宇津弁護人=「と、実況見分が行なわれるという段階では、あなたはその現場を立ち去ったのですか」

証人=「そこに私もいたんですが、関口部長たちが来たその時に、入曾の方の山狩りをするんでお前は向こうへ行けというような指示が本部からあったと思います」

宇津弁護人=「それは、本部の方々がその現場に到着してから、そういった指示を受けて、入曾の方に行ったということですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「その現場に本部の方々は全部で何人くらい見ましたか」

証人=「関口部長のほかに二人くらいと思いますが」

宇津弁護人=「その入曾の山狩りというのは、あなたとそれから一緒に残っていたとそれから、一緒に残っていたという消防団の人たちも一緒に入曾の方にまわったんですか」

証人=「私は、先に一人でまた行ってしまったんです、入曾の方へ」

宇津弁護人=「消防団の人々は」

証人=「で、あとの人は、私が行く時はいたんですけれども、あとは帰ったかどうかということはちょっと分からないんですが」

宇津弁護人=「あなたは実際に入曾の方の山狩りというのに参加したのですか」

証人=「それから行ったんです」

宇津弁護人=「それは前回述べていただいた五月三日ですね」

証人=「三日です」

宇津弁護人=「前回お述べになったような山狩りの態勢ですね、それと全然別個に入曾のある所を山狩りしたというご趣旨ですか」

証人=「別個でなくゴム紐のあった山は一応終わったので向こうへ移動したわけです」

宇津弁護人=「あなたは、ゴム紐のいわゆる実況見分が終わった段階で当日もしくは翌日以降でもいいですが、ゴム紐発見現場付近を、何か物を捜して歩いたということがありますか」

証人=「いやありません」

宇津弁護人=「証人は鞄の捜索に関係されているようですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「今までの証言ですと、最初図面を書かせて行って捜したが無くて、二回目の図面を持って行ったら出たということになってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「最初、鞄の現場に行ったというけれども、その時は誰かと一緒でしたか」

証人=「私と清水部長と思います」

宇津弁護人=「清水輝雄さんですか」

証人=「ええ、そうです」

宇津弁護人=「その際には、石川君の取調べにはあなたの他に清水輝雄さんも立会人みたいになっておったんですか」

証人=「それは二十一日でございますか」

宇津弁護人=「いや、日にちは特定することないが、あなたの言う、第一回の図面を書かせて行ったという時ですね」

証人=「そのときは、誰もいなかったと思います」

宇津弁護人=「と、捜しに行く時だけ清水輝雄さんを誘って行ったという形ですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「捜しに行く時には、上司に連絡あるいは指示を受けて出かけたのですか、第一回の時」

証人=「はい」

宇津弁護人=「どういうことを言って、どういう指示を受けて出かけたのですか」

証人=「こういうところに捨てたと言ってるからということを報告しましたら、じゃあ、行って捜して来い、見て来いと、こういうわけで私が言われたんですが、それでじゃあ清水部長、お前と二人で行けということで、二人で行きました」

宇津弁護人=「第二回目に行った時は、川越の方から以外に捜査本部の方からもある場所で落ち合って、合流して何人かの人間が行ったことになってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「第一回目に行った時には、どういうわけであなたと清水輝雄さんだけが行ったということになるんですか、何か理由があるんじゃないですか」

証人=「どういうわけというのは私は分からないですが、その報告をしましたら飯塚課長が、じゃあ、清水部長と二人でお前行って来いと言われて、それで二人で飛び出したんです」

宇津弁護人=「二回目の時には鑑識とか、そういうメンバーも加えて行かれたようですが」

証人=「はい、そうです」

宇津弁護人=「最初の時には証人は、この図面では現場になぞ、鞄は無いであろうという、ある程度の予測を持っていたのではないですか」

証人=「私は、無いんじゃないかという気はしました」

宇津弁護人=「その根拠は、どういうところからですか」

証人=「それは、私が五月三日の日に、その場所だろうと見当がついた、まあ何というか、図面から見てこの辺だという所は、私が実際に通った所ですから」

宇津弁護人=「すると第一回のいわゆる図面というのは、ゴム紐が発見されたという地点とほぼ同じ地点になるのですか」

証人=「それから六、七十メートル離れていると思います。まあ五十メートル以上あると思います」

宇津弁護人=「ゴム紐発見地点からどちらの方向になりますか」

証人=「ほぼ西、大体西の方角です」

宇津弁護人=「つまり、山裾の方になるとも言えるのですか」

証人=「山裾でなく、山裾の方へ降りると学校の方になるんですが、学校を北という風にしますと、大体西の方向です」

宇津弁護人=「あなたが図面で指示した地点と鞄を捨てた所という地点は今言われたような地点であるように理解して出かけたのですか」

証人=「はい、西の方という風に感じて出かけたわけです」

宇津弁護人=「つまり図面を書かせた時に、ゴム紐発見された地点から西方約五、六十メートルの所だなあと理解できたのですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それでは出かける前に、これは散々大勢で山狩りして、無いことは分かってるんだと、ここじゃないんじゃないかというような、そういう吟味はしてないのですか」

証人=「自分が通った所だから、まず無いんじゃないかと思ったんですけれども、見落としたかなという感じはしたわけです」

宇津弁護人=「実際には、一度目の図面を書かせて、その図面によってわざわざ現場にあなたが行ったということはないのではないですか」

証人=「あります、行ってます」

宇津弁護人=「警察がすでに何らかの方法で発見されていた鞄を、あなた自身が持参して現場付近に埋めたことはありませんか」

証人=「絶対ありません」

(続く)

                                            *

○ここからは裁判を離れ、事件に関連する書籍での話であるが、石川被告に書かせた最初の図面を手に、第一回目の鞄捜索へ向かった証人=関 源三は、やがて泥まみれで署へ戻って来たという。この泥まみれになった原因とは何か。まさか何かを埋める作業によって汚れたのではあるまいな。ただし"泥まみれ"という表現は、その汚れ具合が明確でなく、ズボンの裾に土が付着した程度であってもそのような表現をする場合もあり、そこで当時の鞄発見現場の写真から、その泥汚れの具合が分かるか検証してみる。

(写真は当時の被害者の鞄が発見された現場付近。皆、白系のTシャツ、半袖シャツに黒系のズボンを着用している)

(こちらは鞄を溝から掘り出す捜査員の写真。上の写真に写る人々よりも衣服が汚れる度合いが高いと思われるが・・・・・・)

(左端の方のズボンはピシッと糊が効いている印象を受けるが、このような現場に何かを捜しに来て泥まみれになるのか、という疑問は結局解けず、老生の不粋な検証結果となる)