アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 912

【公判調書2884丁〜】

                  「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

佐々木弁護人=「そうしますとあなたが面会に行かれたのはあなたのご記憶では三回ですか」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「それから、差入れに行かれたのは何回ですか」

証人=「それは面会に行った時に、その差入れなんですけれども、それが三回面会に行った内の二回」

佐々木弁護人=「お金を差入れたのは」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「手紙の内容から見○○(印字不明瞭)差入れはもう少し回数が多いようですけれども、それははっきりしませんか」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「そうしますとあなたが面会に行かれたのは勤務時間中ですか」

証人=「それは泊まり明けの時かなとも思うんですが」

佐々木弁護人=「泊まり明けでもよろしいですけれども、お会いになるのは日中でしょう」

証人=「日中です」

佐々木弁護人=「それは勤務時間中になるんですか、非番ですか」

証人=「泊まり明けは非番なんです」

佐々木弁護人=「そうでない時は」

証人=「そうでない時は勤務中です」

佐々木弁護人=「それは公務になるんですか」

証人=「昼間なら休暇を取って行けば公務じゃないですけれども」

佐々木弁護人=「ですからそれは休暇を取っておいでになったんですか」

証人=「私休暇を取って行ったような気もしないですから、泊まり明けに行ったんじゃないかと思っておりますが」

佐々木弁護人=「全部泊まり明けで非番ということになるんですか」

証人=「ええ、 泊まり明けは非番です」

佐々木弁護人=「全部勤務時間中でない非番の時」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「あなたが面会においでになったのは、これは面会簿には載っていますわね」

証人=「はい。向こうには載っていると思います」

佐々木弁護人=「接見禁止中にもお会いになったんですか」

証人=「その最初の原検事さんの時は浦和ですから接見・・・・・・禁止中か、解けてからか・・・・・・」

佐々木弁護人=「接見禁止中だったようにさっき仰ったように思いますから」

証人=「私も禁止中かなという気もするんですけれども」

佐々木弁護人=「接見禁止中だったというご記憶であるということを前提としてお尋ねするわけですけれども、それははっきりしないんですか」

証人=「接見禁止中か、あるいは解けた後だったか、その点はっきりしないんですが、だけども家族と面会に行った前は前です」

佐々木弁護人=「接見禁止中だったようにあなたが先ほどの弁護人の問いに対してお答えになったものですから」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

佐々木弁護人=「それはどうなんですか」

証人=「禁止中であったかどうかははっきりしません」

佐々木弁護人=「そしてあなたがお会いになったのは全部非番ということになるんですか」

証人=「いや、それがですね」

佐々木弁護人=「昼は昼ですね、お会いになったのは」

証人=「昼です」

佐々木弁護人=「全部それは非番で休暇を取らないで行ったということになるんですか。これは名簿を見れば分かるんですけれどもね、非番であるかどうかというのは」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「それもはっきりしないんですか」

証人=「まあ非番と思いますが」

佐々木弁護人=「勤務時間中だとすればこれは原則として公務になりますわね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「その辺の手続きを取ったようなご記憶はないんですか」

証人=「まあ口頭では一応断わるということなんですけれども、何月何日にこれこれこうだと言ってはっきり書類で出したような記憶もないです」

佐々木弁護人=「ですから、おいでになった時は非番であればこれは別ですよ。日中だとすれば、勤務時間中だということになれば上司の許可を得て行くのが普通ではありませんか」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「その上司の許可を得て行ったというご記憶はどうなんですか」

証人=「はっきりしないです」

佐々木弁護人=「で、あなたが面会されている時は立会人は拘置所の看守の人はおったわけですね」

証人=「はい」

佐々木弁護人=「そうすると勤務時間中だったかどうかもはっきりしない」

証人=「おそらく勤務の時じゃないと思うんですけれども、はっきりしないです」

(続く)

 

 

 

狭山の黒い闇に触れる 911

【公判調書2882丁〜】

                    「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

宮沢弁護人=「石川君の所へ面会に行っている時間は日中ですか」

証人=「日中です」

宮沢弁護人=「そうするとそれは勤務時間中なんですね」

証人=「勤務時間でですね、浦和の時は何か連絡事項か何かで浦和へ行って・・・・・・いや、連絡事項で行った時か、あるいはまた泊まり明けか、それははっきりしません。とにかく昼間は間違いないです」

宮沢弁護人=「あなたの記憶では連絡事項で浦和へ行った時というような記憶もあるんですね」

証人=「その時に行ったのかどうかも私記憶ないんですが」

宮沢弁護人=「そんなような記憶もあるということですね」

証人=「これははっきりじゃないですけれどもそんな時かなという気もするんですが」

宮沢弁護人=「石川君に会いにその拘置所へ行く場合どういう風な形で会っているんですか。あなたが石川君と二人だけで会っているんでしょう、浦和の場合」

証人=「浦和の場合、東京も誰かがいたですね」

宮沢弁護人=「あなたの他に」

証人=「ええ」

宮沢弁護人=「誰ですか」

証人=「拘置所の人がいたと思うんですが」

宮沢弁護人=「東京の場合は」

証人=「浦和も誰かいたような気がします」

宮沢弁護人=「その会う場合の手続きはどういう風に。あなた現職の警察官なんだから直接拘置所の中に行ってそして石川と会えるわけでしょう」

証人=「いえ、受付に話してそれで向こうにじゃ面会簿に書けと言うんで面会簿に書いて、それで向こうの許可証と言いますか、それで面会をしたんです」

宮沢弁護人=「そうするとあなたと石川君とが会って話しましたね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「それ、二人で話しているわけでしょう」

証人=「そうです」

                                            *

裁判長=「二人で話すという意味はそこに立会人がいないという意味ですか」

                                            *

宮沢弁護人=「そうです」

証人=「いや、立会の人は拘置所の人はいたです」

宮沢弁護人=「それはメモか何かしていましたですか」

証人=「いや、私は網のこっちですからよく見えなかったですけれども、人がいたのは覚えております」

宮沢弁護人=「人がいなかった場合もあるんじゃないですか」

証人=「私と石川君だけの場合はないですね」

宮沢弁護人=「一回や二回あったんじゃないんですか」

証人=「いや、それは原検事さんがあの時に浦和の拘置所へ一緒に来たんですね、それでその時は検事さんと私と石川君だった」

右弁護人=「それだけで会ったことはあるんですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「それはいつ頃のことでしょうか」

証人=「それは一番早くですから家族の人と行く前です」

宮沢弁護人=「そうすると一番初めの三十八年の段階という風に承っていいわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「その時お金を渡したりしたことがあるんですか」

証人=「それが五百円なんです」

宮沢弁護人=「そうするとその時五百円渡したわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「そうするとその時は原検事とあなたと石川君と三人で会ったと。その時あなたは五百円を渡したと」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「その時は接見禁止中ではなかったんですか」

証人=「それは初めですから接見禁止の時だったかも知れないですね」

宮沢弁護人=「そんなような記憶があるわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「そういう風にして会ったのはその時一回だけでしょうか」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「そうすると、その時は別に休暇というようなことで行ったわけではないのですね」

証人=「だからそれが泊まり明けで行ったのか、あるいは何か他の用があって行ったのか、よく覚えてないんですが」

宮沢弁護人=「そうするとその五百円を渡した時は原検事さんもそれはご存じだったわけですね」

証人=「それは受付の方ですから知ってると思うんですが、その点はどうも私もはっきりしないんですが」

宮沢弁護人=「あなたとしては知っていると思うと、こういうことですね」

証人=「ええ、あんまりよく分かりません。と言うのは断って、原検事さんにこうするからと言うんじゃないですから、知ってるかもしれないんですが、あるいは知らないかもしれないんです」

宮沢弁護人=「あなたとしては知ってるかもしれないというのは知ってるだろうというあれがあるわけですね」

証人=「はい」

(続く)

                                            *

宮沢弁護人の最後の質問に出ている「〜知ってるだろうというあれがあるわけですね」の"あれ"とは何を指すのであろうか。ここはきちんと適切な言葉で表現して欲しかったが。

 

狭山の黒い闇に触れる 910

【公判調書2879丁〜】

                     「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

裁判長=「手紙は十七通あって、日時は三十八年から四十五年にわたっておりますね」

証人=「はい」

裁判長=「そうするとあなたの今言われるのはその一つ一つの手紙を出すたびに、上司に被告のところへ手紙を出しましたということは、別に言ってるという意味なのか、言ってないという意味なのか、どっちだ」

証人=「それは言っていないんです」

裁判長=「さっき何か手紙を出す時はそのことを言っているという感じのことを言ったところがあるんだけれども、金を出すということは言ってない」

証人=「面会に行くということですね、それは言ったような気持ちもしているんです」

                                            *

(と、ここで問題が発生する。引用中の公判調書2880丁上段右側二行目以降に印字不明瞭な箇所が現われた。写真参照)

(したがってこの部分は写真での引用、記録とした)

                                            *

裁判長=「捜査の方ではそれは十七通まとまって、近年控訴審になって今まで手紙をだいぶやり取りしているようだというので、それなら見せろということだから、まとまったものを見せたんじゃないの」

証人=「そうです」

裁判長=「だからいちいち三十八年から三十九年、四十年、飛んで四十五年、そういう手紙をやった都度、手紙をやったということを上司の人、あるいは同僚に報告したり、あるいは出しますということを事前に言ったりしたことはあるのか、ないのか」

証人=「そういうことはないです」

裁判長=「それじゃ出しましたということを言ったことはあるんじゃないの」

証人=「手紙を出したということは言ったことはないんです」

裁判長=「と、今度は上司なり同僚なりが手紙を出していたんだということを知ったのは、まとまったものを保存しているということを聞いてから、あなたの方で出したから、それでそれじゃ今までそういう手紙をやり取りしていたのかなということを上の者が知ったと、こういう意味なのか」

証人=「はい」

                                            *  

宮沢弁護人=「そうすると面会に行ってるのはもう昭和三十八年の段階から行ってるわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「そうするとその面会に行く時は一応上司に、今日は行くというような話はしてるわけでしょう」

証人=「そんなはっきり行って来ると」 

宮沢弁護人=「だけど当然上司はあなたがどこへ行ったかと分かるような話はしているわけでしょう、それは先ほどの証言でそうだったんじゃないんですか」

証人=「・・・・・・・・・」

宮沢弁護人=「くるくるしょっ中あなたの証言は変わるんですがね、それはそうなんじゃないんですか」

証人=「それは、はっきり今日行って来ると断るというんじゃなく、自分の休暇で休みをもらって行くんですから、はっきり今日行って来ますというようなことでなく、まあ何と言いますかね、面会に行って来たいんですというその程度に話をしたというような」

宮沢弁護人=「面会に行って来るということは言っているんでしょう」

証人=「そういう気がするんです」

                                            *

裁判長=「それは石山に面会に行くということがわかるという程度に言ってあるわけか。今日面会に行って来ますと、こう言えば他の人じゃない石川の所へ行って来るんだということが当然わかるんだという風な意味なのかね、石川の所へ行きますと言わなくても」

証人=「・・・・・・・・・まあ、東京の拘置所と言えば他にはいないんですけれども」

裁判長=「だからさっきは東京の拘置所へ行く時のことをちょっと言ったような体裁になっているんだがね、今私が聞くのは東京拘置所だけでなくて浦和の拘置所のことも含めて言ってるつもりなんだがね。そういう時に面会に行って来ますといつも言ってたとすればこれは石川の所へ行くんだなということが聞いた方ではわかるような意味で言ったのかどうかということを聞いている」

証人=「まあ石川君の所へこれから行って来ますとはっきり言わなくてもそれはわかるだろうと思います」

裁判長=「それは浦和も東京もかい」

証人=「浦和の一回はこれは私は最初から行くわけじゃなかったんですが面会に来てくれと言って石川君の所からうちへ言付けに私行ったわけです。その時はこれはそのままですからよく道もわかんないなと言うものですから、じゃ一緒に行こうと言って、それで行ったからこれは言ってないですね」

裁判長=「うちの人に会いたいと被告が言うからそれでうちの人を案内して行ったことは一回ある、これは警察の上司には報告しないで一緒に案内して行ったと」

証人=「はい」

裁判長=「それはあなたが浦和の方へ面会にさっきから行った行ったと証言している一つに入るのか、入らないのか」

証人=「それは一つに入っているわけです」

                                            *

宮沢弁護人=「そうすると上司が当然知っているだろうという風にあなたは感じたと」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「その帰って来てから石川君の話題というようなものもあなたの捜査の同僚とか、そういう中で多少話題にしたこともあるんでしょう」

証人=「まあ元気でいるという程度のことですね」

宮沢弁護人=「元気でいるとか、石川君がこうだったというような話はしているわけですね」

証人=「ええ」

宮沢弁護人=「そうするとあなたと石川君とはそういう浦和なり東京にいる段階からそういう風に接触があったということは狭山署の捜査の人達も上司も分かっていたわけですね」

証人=「少し遅れてそれは分かっていると思いますね」

宮沢弁護人=「だから大体分かっているわけですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「そうするとあなたが文通をしているということも大体分かっていたんじゃないですか」

証人=「最初は分かんなかったと思うんです。だけども本部の方でも、手紙が来てるそうじゃないかと私の所へ聞いた時も手紙がいくつ来ている、そういうことは本部でもおそらく分からなかったんです。それでその時は来ている数は言わなかったですけれども来ていると、じゃそいつはいくつなんだか見せてくれないかと」

宮沢弁護人=「本部の方でそういう風に言って来るについては何かやっぱり」

証人=「誰かが結局私の所へ手紙が来ているというのを知ったというか、ですからきっとそういう話が出たと思うんです」

宮沢弁護人=「そういうことを誰に話したんですか」

証人=「私も誰という風にはちょっと忘れたりなんかしておりますからはっきり答えようがないけれども、石川君の所に手紙を出したということは誰かに自分でも話していると思います」

(続く)

                                            *

春めいた気配に誘われ、どれどれ野良猫どもは元気であろうかと某公園を訪ねてみた。以前ここで4、5匹の猫と戯れたことがあり、その見るからに愛おしい風体は、再びここを訪れエサを与えることを私に誓わせたのだが・・・。

しらみつぶしの捜索の結果、この公園内で彼らの存在は確認出来なかった。

缶ビール片手にゼイゼイと息を切らし血走った目で猫を捜す姿は、 この日この公園を訪れていた家族連れやカップルの目にはよほど異様に映ったであろうか、まるで八つ墓村に登場する、日本刀と猟銃で武装し村民虐殺へ向かう多治見要蔵でも見るような、そんな視線が私に集中していた。

公園から猫がいなくなった理由としては、どうやら野良猫を保護し愛猫家に引き取ってもらうという活動を行なっている団体の活動結果が原因だと思われる。だとすれば、これは猫自身が幸福な人生に恵まれるという判断が出来、私も納得も得心もいくのである。

以上、この公園における野良猫、その全ての情報を分析検討した結果、当公園に私は足を運ばないという決断に至った。

そしてただ単に、撫でたい時に野良猫を撫でたいという私のわがままを満たす場所はすでに見つけてある。朝晩、決まった時間におばちゃんがエサを与えに来て猫にとっては言うことなし、したがって彼らがその公園を離れることはない。私としては、やはりこういった和(なご)める場所は人生に必要だと考えるが、どうであろうか。

 

狭山の黒い闇に触れる 909

【公判調書2877丁〜】

                    「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                             *

宮沢弁護人=「あなたの所へ石川君に差入れて欲しいというような趣旨の手紙が来たということをさっき証言されたんですが、所沢の山口の石山さんですね、これはあなたを知っている人なんですね」

証人=「石山さんは私は知っているんです。練馬の人というのは全然見当もつかないんです」

宮沢弁護人=「石山さんという人は知っているんですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「どういう人ですか」

証人=「駐在所に私がいて、じきそばだったので顔も知っているし」

宮沢弁護人=「どういう人なんですか」

証人=「役場へ行っている人です。今は何をしてるか分かりませんけれども、その当時は支所にいたんです」

宮沢弁護人=「所沢の市役所の支所にいた」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「名前は何と言われるんですか」

証人=「名字は石山なんですが、名前ははっきりしないんですけど」

宮沢弁護人=「所沢の支所ってどこの支所ですか」

証人=「山口です」

宮沢弁護人=「所沢の山口の支所に当時いた人ですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「年齢はどのくらいですか」

証人=「私より一つか二つ若いように思います」

宮沢弁護人=「支所でどういう内容の仕事をされている人ですか」

証人=「仕事の内容はよく分からなかったですが、支所には幾人もいないんです」

宮沢弁護人=「もちろん男の方ですね」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「住所はあなたご存じですか」

証人=「知ってます」

宮沢弁護人=「山口なんですか」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「どこですか」

証人=「番地は分からないですけど氷川様というのがあるんですがその前です」

宮沢弁護人=「もう一人の練馬の人はあなたは知らないと言うんですがね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「しかしあなたの宛名で来ているわけでしょう」

証人=「そうです」

宮沢弁護人=「通常だったら狭山警察署というような形で来るのが私どもとしては通常だと思うんですがね、だけどもあなたの名前を特定してそういうのを送られてきたという何か思い当たるところはないですか」

証人=「狭山警察の私なんです。私宛と言っても住所じゃないんです」

宮沢弁護人=「狭山警察署の関源三さんという宛名で来ているわけでしょう」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「だからそういう風にあなたの名前を特定して来ているということについては何かあなたに関係のある人なんでしょう」

証人=「それが見当がつかないんですがね、その人が練馬の方ということは書いてあるから練馬と私は思っているんですけれども、私の名前を知っているわけもないし、私もその人は知らないんです」

宮沢弁護人=「その二人についてあなたの上司の諏訪部課長なり、そのほかの狭山署の捜査係の方は知っているわけですね」

証人=「その手紙が来たことですか」

宮沢弁護人=「はい」

証人=「全部はおそらく知らないでしょうけれども」

宮沢弁護人=「少なくとも諏訪部課長は知っているわけですね」

証人=「諏訪部課長は知っておりますね、私は諏訪部さんだったような気がするんですから」

宮沢弁護人=「そうするとこれを石川君に渡したのはあなたか別の捜査の係員だと、こう言うのですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「あなたでないとすれば、あなたとしてはそれじゃ捜査の係員としてはどんな人だという記憶でしょうか」

証人=「それは川越ですから諏訪部さんももちろん川越にいたんです。あと飯塚課長とか長谷部さんとか青木さん、それから遠藤さん。あとまだ三、四人おりましたです、川越には」

宮沢弁護人=「そうするとそういう人達は大体あなたが石川君とこういった接触をしているというようなことは皆さん知っていたわけですね」

証人=「接触というのは」

宮沢弁護人=「要するに手紙を出したりお金を持って行ったりしていることですね」

証人=「その預かったと言いますか、練馬の方とかあるいは所沢の石山さんとか、それはおそらく知ってます」

宮沢弁護人=「その二件のお金については少なくとも知ってるわけですね」

証人=「ええ、知ってると思いますね」

宮沢弁護人=「そのほかあなたが面会に行くとか、あるいは手紙を出されるというようなことは知っているわけですね」

証人=「まあその当時知っていたかどうか分かりませんけれども、まあ今になってみればきっと知っていると思います」

宮沢弁護人=「当時から知っているという風にあなたは考えるわけですね」

証人=「いや、その手紙を私が出したそのことを、ずい分古いことですけれども」

宮沢弁護人=「話したわけですね」

証人=「いや、話しません」

宮沢弁護人=「先ほどの証言では話したような趣旨の証言だったでしょう」

証人=「改めて手紙を出しているとか来ているとかいうことは別に話さないけれども今はまあ知ってると思うんですがね」

宮沢弁護人=「それはどうして知ってるんですか」

証人=「それはずっともう大分前ですけれども、捜査課のほうで、手紙が来ているという何か噂のようなことを聞いたけれども来ているかと言われたことがあるんです。そしたら来ていると、それじゃ見せてみろということがあったから、ですから今は知っていると思うんです」

宮沢弁護人=「そうするとその手紙は全部上司に、あなたとしては見せたわけですね」

証人=「捜査課の人には見せたです。ですから上司のみんなに見せたというんじゃなくて」

宮沢弁護人=「少なくとも捜査課の人には見せたわけですね」

証人=「はい」

(続く)

狭山の黒い闇に触れる 908

○法廷では弁護人が、拘置所に収監された石川被告への、証人=関 源三による接触の動機やその過程、方法等の尋問に相当な時間を費やしているが、その意図は何か、今のところ私には全く分からない。

ただ、石川被告本人の自白を維持させるために彼の気が変わらぬよう関 源三が面会し激励、金を差入れたのではないかという観点から見れば、これら尋問は予想以上の含みを待つと思われるのだが。

証人=関 源三氏。写真は"狭山差別裁判・第三版=部落解放同盟中央本部編、部落解放同盟中央出版局"より引用。

【公判調書2874丁〜】

                  「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

 

                                            *

石田弁護人=「昭和四十年頃東京拘置所へ石川君を尋ねて面会したことはありますか」

証人=「日ははっきりしないんですけど一回行ってるんです」

石田弁護人=「四十年頃頃ということで、つまり移監になった、浦和から東京に移監になった翌年ですね」

証人=「いずれにしても東京へは私一回行ってるんで日ははっきりしませんけれども、まあ一回行ってるんですが、それ四十年だったかも知れませんですね」

石田弁護人=「東京拘置所へ面会に行った際に金を渡しましたね」

証人=「はい」

石田弁護人=「差入れしましたね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その金の差入れについて石川君と面会した際にあなたは諏訪部刑事課長から渡してくれるように頼まれた金だということで石川君に説明したのではありませんか」

証人=「それは違うと思いますね、私は諏訪部さんに言われたのはないんですから」

石田弁護人=「それから未決の刑事被告人と警察官である立場の人とが文通を多く交わしたり、あるいは金の差入れを行なうということは、あなたの経験からするとよくあったことでしょうか、それとも本件が初めての経験でしょうか」

証人=「帰ってきた時まあ早く帰ってきて良かったとか何とか、そういうことはありますけれども、差入れとかいうのは石川君だけです」

石田弁護人=「そうしますと、まあ非常に異常なことですね、通常のことではないですね」

証人=「川越から浦和へ行く時、石川君おれ面会に行くよと実は言ってあるんです。それで面会に行ったんです、私は」

石田弁護人=「まあいずれにしても石川君と面会するなり、あるいは石川君に金を差入れたりするような際には、警察の上司の承諾を得るなりあるいは上司の指示を得るなりしてやっているのではありませんか」

証人=「面会にその時は・・・・・・・まあ手紙を出しているのは、私は手紙を出したということもこれはこういう訳で出すというのじゃないけれども、石川君から手紙が来たと、だから返事を出すというようなことも言っております」

石田弁護人=「お金を渡す時は」

証人=「それは言わないと思います」

石田弁護人=「あなた独自の判断でそれは出来るんですか」

証人=「友達と言いますか、だからというような気持ちで私は行ったんですけれども」

石田弁護人=「たとえばあなたの先ほどからの話によりますと、川越分室に石川君が留置されていた頃、まあ、あなたにとっては未知の所沢の石山さんという人と練馬の人から手紙で送られてきた金を石川君のため差入れたということを仰いましたね」

証人=「いえ、それは石川君のために行ったんではなく、石川さんにやってくれというような内容で来たのですから、それを捜査の方で浦和へ行く時にあの前に私にだったか、いずれにしても誰かに渡してあるわけです」

石田弁護人=「それは狭山署長なり、あるいは刑事課長クラスの人なりが承認していたことですね」

証人=「そうです」

石田弁護人=「あなたの単独では出来ないことですね」

証人=「それは私の宛名で来たんですけど私がもらった金じゃないんです。ですから捜査の方にやってありますからこれは全部知ってるわけです」

石田弁護人=「だからその金を石川君に差入れするというのかな、そのことはあなたの上司である課長なりあるいは署長なりが承知していることですね」

証人=「そうです」

石田弁護人=「それで浦和の刑務所なり東京の拘置所なりで金をあなたが差入れたことも上司の許可を得るなり指示を受けたりしたためにやったことではありませんか」

証人=「それは上司に直接断ってはないです」

石田弁護人=「事後に報告はしたわけですね」

証人=「・・・・・・報告はしなかったような気もするんですが」

石田弁護人=「した記憶はないんですか」

証人=「どっちかというとしない方が強いような気もします」

石田弁護人=「東京の拘置所に面会に行くということは上司は知っておるんですか」

証人=「ええ、それは東京へ行くと言ってますからですね」

石田弁護人=「石川君と会うということは言ってありませんか」

証人=「石川君に会うということははっきりは言わないけれども、東京の拘置所へ、石川君の所に行くということは言ってますから知っておると思います」

石田弁護人=「どんな状況だったかということをその直後に尋ねられるなり、あなたの方から進んで報告するとかいうことはありませんか」

証人=「自分がと言うと何ですけれども、私が自分で個人で行ったんですから私も行って来たということは言ってあると思うんですけれども、別に報告という改まった報告はしなかったんです」

石田弁護人=「上司から聞かれたんではありませんか、石川君の状況はどうだと」

証人=「・・・・・・今はっきり、聞かれたかどうか、はっきりしませんですが」

(続く)

 

狭山の黒い闇に触れる 907

記者会見に応ずる竹内狭山署長。狭山事件発生時には連日六百人近い報道陣がつめかけた。

同じ狭山署内での石川一雄氏。写真二点は、"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2873丁〜】

                  「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

山上弁護人=「あなた、その当時交通係をしておったんですね」

証人=「そうです」

山上弁護人=「石川事件については山狩りをしたことと六月二十日前後でしたか、竹内狭山署長と何か警察署長室かどこかで石川君と会ったことがあるんですね」

証人=「署長室じゃないですがあります」

山上弁護人=「それは何日頃でしたか」

証人=「六月」

山上弁護人=「七日か八日かな」

証人=「その頃だったと思います」

山上弁護人=「その当時警ら交通係の人は狭山署に何人いたんですか」

証人=「交通の係長と私と、あと係が三人くらいと思います」

山上弁護人=「同僚は三人くらいと聞いていいんですね」

証人=「大体三人くらいだと思います」

山上弁護人=「その中から特にあなたが石川君と署長と会うようになったというのは何か理由があるんでしょうかね。交通は皆さんお忙しいんでしょう、その中からあなたが特に署長室で会うようになったというのは何かそこに理由がないとおかしいと思うのでお伺いしているんですがね。石川君を知っているという事実があれば関君来いよということも分かるんですがね」

証人=「分かっていたかどうかは私は知らないんですけれども、石川君と私の家はすぐそばだということがあるんです」

山上弁護人=「分かっておった、狭山署長にもね」

証人=「はい」

山上弁護人=「そうすると、そういうこともあって自分は呼ばれたんだなとあなたは思ったと聞いていいですか」

証人=「呼ばれる時は私は何だか分からなかったんです」

山上弁護人=「あなたの石川君と知り合ってるということで呼ばれたんだなという気持ちはあったんですね」

証人=「すぐそばですから、それで呼んだんかなという気はしました」

山上弁護人=「それ以来あなたが石川君の、我々からすれば嘘の自供ということになっているんだけれども、自供に立ち会うという重要な役をなさり、それからずっと四十年まで手紙を出したりお金を差入れたりしている。あなたはやはり自分で立派な役目をしたなと思っておりますかどうですか、現在」

証人=「まあ私は警察官という立場から行けば、やっぱりこれは犯罪があればやらなくちゃならん立場ですから」

山上弁護人=「あなたは趣味として青年時代催眠術の勉強をしたというようなことはありませんか」

証人=「私は全然そういうことはないです」

山上弁護人=「石川君というのはまあ三年間お付き合いなさって、それでどういう性格とあなたは思っていますか」

証人=「私は『おっ』と言える仲でしたから悪いとかそういう感じは持っていなかったです」

山上弁護人=「最初はおれは殺してないんだとか、手紙を持って行ったとか、それから実は三人でやった、入曾、入間ですか、そういうことから変わってきているんですが、この人の言うことをあなたは後ろにいるから言いにくいでしょうけれどもあてにならんでしょう、どう思いますか。今考えてちょっと虚言癖と言うか、どこを信用していいか分からんという気持ちはありませんか」

証人=「・・・・・・特にそういう感じもしないんですが」

山上弁護人=「しかし、くるくるくるくる変わっているのはあなたの感じとしてはどう受け取ってます」

証人=「・・・・・・まあ簡単に言えば嘘を言ってるということでございますか」

山上弁護人=「まあ供述が大きく変わっているんですがね、それはご存じですね」

証人=「それは聞いておるから知っております」

山上弁護人=「それを今あなたが考えてみて石川君というのは喋ることを信用していいのかどうかということで、あなた自身何を信用していいか分からんという気持ちになっておったかということです」

証人=「そういう気もしないんです」

山上弁護人=「あなたの判断で石川君は『おっ』と言う仲で、まさかあの男がという感じは今もあるんですか」

証人=「私はその時はそう思ったですね」

山上弁護人=「性格は一般的に言えばどうなんですか」

証人=「私は普通に付き合って、向こうも普通だったと思うんですよ」

山上弁護人=「で、四十年まで、あなたに対してさっきの弁護士さんがお読みになったけれども、ああいう素直な手紙を書いてますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「多少暗示にかかりやすい性格だとは思われたのかね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

(続く)

 

狭山の黒い闇に触れる 906

事件当時の石川一雄氏。写真は逮捕前日の五月二十二日に撮影されたが、これは事前に警察のリークを受けた通信社が偶然を装い撮影したものであった。

【公判調書2870丁〜】

                    「第五十四回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳)

                                            *

山上弁護人=「あなたは五月二十三日に石川君が恐喝未遂と言いますかね、逮捕されたわけですが、これはあなたはどういう機会に知ったんでしょうね」

証人=「あれは石川君が逮捕されたその日からだいぶ経ってです。だいぶと言ってもひと月もふた月もというんじゃないんですけれども」

山上弁護人=「どれくらい」

証人=「・・・・・・その日とかその次の日とかいうんじゃないないんです」

山上弁護人=「十日くらい」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

山上弁護人=「あなた、よく考えながら言うんでいいんだけど、本当のことを言って下さいよ」

証人=「本当のことを言ってます」

山上弁護人=「いつ頃知ったの」

証人=「日は幾日ということははっきりしませんけれども、仮に今日の日だとすると直ぐ今日だとか、明日とかいうんじゃないんです。一週間」

山上弁護人=「一週間くらい」

証人=「はっきりしませんけれども、五日か一週間、いずれにしても少し過ぎてる」

山上弁護人=「あなたは五月三日には山狩りをなさっていますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「石川君というのが逮捕されたということで、ああ、あの今まで野球していた石川かとぴんと来ましたか」

証人=「いや、私はそれを知った日にはあれっという気がしたですよ、石川が?といったような、まあそういう感じでした」

山上弁護人=「石川君がまさかと、そういう気で」

証人=「ええ」

山上弁護人=「それはどういうところから感じられたんですか」

証人=「いや、私はさっきも申し上げた通り野球や何かしていて私のことを、『おっ関さん』と言って私も『おっ石川』と言って石川というのはどうかと思うんですけれども、関さんですか、石川さんですかというんじゃなしに『おう』『うっ』というように言っていたんですから」

山上弁護人=「まさか石川君がという風な感じで受け取ったんですか」

証人=「そういう感じですね」

山上弁護人=「石川君なら無理もないという風な感じとは反対ということですね、少なくとも」

証人=「はい、そうです」

山上弁護人=「石川君が逮捕された後、あなたは今までの相弁護人(注:1)の尋問によれば長期に手紙を差入れて、何回もですね、それからお金も差入れている、これ素直にとればあなたはやさしい方だと、ぼくは思うんですが、逮捕された以降、自分の方から石川だったら自分の感じではおかしいと思うと、どうかひとつ自分に石川を会わせてくれんかと、確かめてみたいという風なことをなさったことはありませんか、そういう思い付いたことがありますか」

証人=「そういうよりも、まあこの前も私申し上げて捜査のほうはタッチしないでいたものだから、よく分からなかったと言ったんですけれども、だけども捜査のほうは捜査の方だけでやっていたからどういう風にやってるのかこっちには私のほうには分からないわけですね」

山上弁護人=「それは私の今の質問に対する答えには直接ないように思うけれども、もう一度お尋ねしましょう、あなたが石川君が逮捕されたニュースを受けて石川君に一度会って自分から今まで親しかったし、話を聞いてみようかと思ったことがあるかと、聞いているんです」

証人=「そういう風に特別私聞いてみようという気もなかったです。というのはもう捜査のほうでずっとやっていて私らがどうこうというわけには行きませんからね」

山上弁護人=「あなたが石川君と五月一日以前を標準(原文ママ)にすれば三年前から知り合っておったということは警察の上部の人は五月一日当時知っておりましたか」

証人=「私は知らないと思うんです」

山上弁護人=「あなたの方から警察の上部とか同僚に、実は石川というのは三年前から野球などして知っておるんですというような言葉を上司なり同僚なりに五月一日以降話したことがありますか」

証人=「いや、そういうことは言わないです」

山上弁護人=「そうするとまあ、あなたの上司と言えば仮に特定すれば狭山の署長、竹内さんね、あの人が石川君とあなたが馴染んでるということは事件を通じて知っておったんでしょうか、知らなかったんでしょうか」

証人=「知っていたかどうか、私それは知りませんけれども」

山上弁護人=「竹内さんが聞いたことはありますか」

証人=「私に石川君を知ってるかとですか」

山上弁護人=「うん」

証人=「そういうことはないです。ただ私はそう言うとおかしいですけれども子供でも大人のチームでも今でもやるんですけれども、野球の友達は随分いるんです。で、竹内さんのほうからお前石川知ってるのかとかいうようなことも聞かれたこともないです」

山上弁護人=「あなたの方からは」

証人=「私も石川君をおれ前から知ってると言ったこともないんです」

(続く)

(注:1)相弁護人=複数の弁護人が付く場合の相方の弁護人。