アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1041

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

写真は事件当時の狭山市堀兼地区。

【公判調書3252丁〜】

                  「第六十回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=山下初雄(三十四歳・農業) 

                                            *

宇津弁護人=「あなたと登美恵さんとの間では、登美恵さんが亡くなるまでの間に肉体関係というか、性交渉はございましたでしょうか」

証人=「ありました」

宇津弁護人=「登美恵さんは、あなたのうちに来て泊まっていくことがありましたか」

証人=「ありません」

宇津弁護人=「あなたが中田さんの家のほうに行ってお泊まりになるということはありましたか」

証人=「ありません」

宇津弁護人=「それから、別のことですけれども、先ほど、新狭山のお巡りがあなたの所へ来たそうですが、結局何か、名前を書いて、判子を押したことがありましたか」

証人=「ないです」

                                            *

樺島弁護人=「証人は、先ほど裁判長がちょっと触れられたのですが、証人喚問を最初どういう形で受けましたか。何か書面が来ましたか、裁判所へ来いという」

証人=「ええ、初め連絡来ました」

樺島弁護人=「どこから」

証人=「裁判所だと思います」

樺島弁護人=「裁判所から手紙の形で連絡を受けたんですね」

証人=「先に電話がありました」

樺島弁護人=「それは誰からですか、裁判所の職員からですね」

証人=「とにかく、そのうち書面が着くだろうということで」

樺島弁護人=「それに対してあなたは、自分は関係ないし、行きたくないと言われたのですか」

証人=「はい」

樺島弁護人=「それ詳しく教えてもらえませんか」

証人=「行きたくないと、まあ、仕事も忙しかったり、直接石川さんの事件のあれでなんか関係ないと思ったから、仕事なんかもあったから一応拒みました」

樺島弁護人=「もう一度聞きますが、電話をかけた人の名前は覚えていませんか」

証人=「言ったのは言ったと思いますが書類のあれと同じじゃないですか」

樺島弁護人=「書記官というようなことを言ってましたか」

証人=「書記官・・・・・・」

樺島弁護人=「書類のあれと一緒じゃなかったかというと、そのときあなたが電話で聞いた人の名前と、後から来た書類の名前は同じ名前だったですか」

証人=「同じだったと思いますね」

樺島弁護人=「それで、大体どういう内容について証言することになるというようなことも聞きましたか」

証人=「聞かないです、ただ出頭してくれという連絡を受けました」

樺島弁護人=「電話の長さはどれくらいですか」

証人=「出頭してくれという電話で、それだけです」

樺島弁護人=「電話がかかってきて、自分がそれをとって、受話器を下ろすまで何分くらいですか」

証人=「二分か、そこらだと思います」

樺島弁護人=「出なくないという風に言ったら裁判所はどんな風にに言ってましたか」

証人=「裁判所ですか」

樺島弁護人=「電話をかけてきた人」

証人=「とにかく、一度だけは出て、言ってくれと頼まれましたからね。その時に言ったこと自体において、分からなかったら分からないと答えていいと」

樺島弁護人=「電話がかかってきたのはいつ頃ですか、今日から数えてどのくらい前ですか」

証人=「最初に電話かかったのは、一週間ぐらい前じゃないですか」

樺島弁護人=「それから、先ほど、他の弁護人がお聞きになった新狭山派出所から警察官が来たのは、いつですか」 

証人=「書面が着く前です」

樺島弁護人=「電話がかかって・・・」

証人=「その後です」

樺島弁護人=「これは、裁判長がちょっと触れられたのを援用したいと思いますが、それは何か、証人に出頭することについて警察官から説明があったんですか。裁判所に出頭することについて、何か警察のほうから、行くようにとか、あるいは証人とはこんなものだとかいう風な内容の話があったんですか」

証人=「ないです」

樺島弁護人=「じゃ聞きますが、電話があった後ですか、警官が来たのは」

証人=「最初に電話があってから後です」

樺島弁護人=「書面が到達したのは、いつですか」

証人=「五日くらい前です」

樺島弁護人=「電話があったのが一週間前で、書面が来たのが五日くらい前。警察官が来たのは、電話と書面との間ですね」

証人=「書面が来る前かな・・・・・・」

樺島弁護人=「しかし、警察官がぽっと入ってきて、あんたの住所と名前は何というのかと、それから、皐月の話をして帰るなんて、ちょっと普通じゃ考えられないことですがね」

証人=「ああ、そうですか」

樺島弁護人=「そうですか、じゃないよ」

                                            *

裁判長=「ちょっと弁護人、そういう責めるような尋問は、あまりしないように」

樺島弁護人=「普通の人間であれば警察官が入ってくれば何か、公の仕事をかかえてその人間のところへ来るから、氏名、住所は当然知ってるんだ、氏名、住所を聞いて、皐月の話を聞いて帰るなんてことは、これは普通あり得ないことなんで、大変、弁護士としては不思議に思う、だから聞いてるんです。しかも時期的に言って、裁判所から電話をかけたところが、本人が嫌がったので、だれか警察を通して、裁判所のほうが、これは裁判所の善意だったと思うが、証人のことについて、あなたに話をしてもらったと言いましたね、そういうことを言いましたね、裁判長」

裁判長=「警察を通してと言いません。そのことについては電話聴取書二通ぐらい作成させてありますからご覧下さい」

                                           *

樺島弁護人=「じゃ、それは、全然誤導ですから申し訳ありません。いかにも時期的に狭まっていますし、あなたの説明そのものが、普通の経験上から言っても納得出来ないから」

証人=「おまわりさんのあれですか」

樺島弁護人=「ええ、警察官がやって来るのは、あなた自身が悪いことをしたとか、誰かが、悪いことをしたことについて聞くとか、その他、警察の公務をかかえて来るんですね、さっきの関係と氏名、住所で二十分もかけたとは、いかにも納得出来ないです」

証人=「なんか、別に、時間的に二十分がどうかね、それ自体があれだけど」

樺島弁護人=「あなた自身、警察官が何しに来たか、本当に考えなかったですか、疑問に思わなかったですか。大体そんなこと、馬鹿にしてるじゃないですか、氏名、住所を聞きに来て、皐月の話をして帰る、僕だったら馬鹿にされた感じがするね、誰だってそうだと思うよ。あるいは怖くなる、あなたはそう思いませんでしたか」

証人=「そのときですか、だから電話が先にかかってきたでしょう、だから僕は、そのことについて来たのかなと思ったですよ、お巡りさんは」

樺島弁護人=「そうすると、やはり、証人に出てくれということについての電話と関係ある用事でお巡りさんは来たと思った」

証人=「ええ、そのときはね。だけどその内容は、さっき言った通り住所と、皐月の話をして帰りました」

樺島弁護人=「住所と氏名だけ聞いたんですね」

証人=「ええ」

樺島弁護人=「それは、ほぼ一分程度で終わりますね」

証人=「そうですか」

樺島弁護人=「そうですか、じゃないです。あなたは名前は何というんですか」

証人=「山下初雄です」

樺島弁護人=「住所は」

証人=「先ほど言いました狭山市堀兼○○○○番地、です」

樺島弁護人=「ほとんど、三十秒もかかりませんね、それが二十分というと、ほとんど皐月の話をして帰ったというんですか」

証人=「はい」

樺島弁護人=「あなた、ほとんど皐月の話しかしないので変だと思わなかったですか、ふざけんなと、一言言わないですか」

証人=「言わないです」

樺島弁護人=「何でですか」

証人=「何でって、別に不思議とも思わないし」

樺島弁護人=「そんなこと、よくあるんですか、お宅で」

証人=「ないです」

(続く)