アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

狭山の黒い闇に触れる 41

罪を認めれば十年で出れるとの、警察官による約束を信じ石川氏は自白を維持、しかし弁護人は無罪を争うという極めて特異な形をとった( 自白崩壊 狭山裁判二十年 狭山事件再審弁護団編より)第一審。対し、第二審冒頭、中田弁護人が「あなたは中田善枝さんを殺…

狭山の黒い闇に触れる 40

低く垂れ込めた鼠色の暗雲を眺め、私は言いようのない不安に襲われた。なにか、近寄ってはならない、言葉に出来ぬ圧力を感じながら、しかし私は狭山の湿った農道を進んだ。道端の水路でナタに付いた血を洗う老人がおり私を見て微笑する。見て見ぬ振りをし再…

狭山の黒い闇に触れる 39

刑事調査官・長谷部梅吉は署に戻り、自殺した男の家族から聴き取り調査した結果を上司に口頭報告する。ここまでの一連の流れを公判調書で確認してみると、法廷では弁護団が長谷部梅吉に対し執拗に攻める。何をといえば自殺した男についてだ。それは男の血液…

狭山の黒い闇に触れる 38

狭山事件における、最初の自殺者が出たときの模様を第五十一回公判調書より覗いているが、当時、狭山市に集まった報道関係がどれだけの規模だったのかが窺われ事件の甚大さがよくわかる。さて、重要容疑者の自殺に伴い狭山警察署竹内署長の秘密指令を受けた…

狭山の黒い闇に触れる 37

たとえ刑事調査官であろうとも、土地勘のある浦和から狭山市へ応援に行き、突然、市内の堀兼だか青柳のどこそこへ向かえと言われても、それは機敏には動けなかったであろう。その頃すでに新聞記者が届出人という道案内を連れ自殺した男の家へ向かっていたが…

狭山の黒い闇に触れる 36

前回の続きである。被害者宅で過去に作男をしていた男が実家の井戸に飛び込み自殺した。まもなく近所の者が駐在所に届けに来た。駐在所では新聞記者が二人ほど休憩していたが、そこで届け出を聞いたのは駐在所の奥さんであり休憩中の二人が新聞記者とは認識…

狭山の黒い闇に触れる 35

作男(農家に雇われ住み込みで田畑の耕作に従事する)が自殺する。昭和三十八年五月六日、狭山事件の被害者宅で過去に二年ほど作男をした男が、実家の井戸に農薬エンドリンを飲み飛び込む。井戸に水は無く底は湿っていたという。が、死因は溺死として処理され…

狭山の黒い闇に触れる 34

前回からの続きである。戸門クラ〈石田養豚場の隣家〉が「五月一日の夜、犬がほえた」と述べた供述調書が検察庁にあり、一九七七年八月三十日の時点で弁護団が開示請求している件である。一審、二審を通じて証拠としては提出されていない。私が前回述べた「…

狭山の黒い闇に触れる 33

ボーッとして読み落としそうになった記述が目に留まる。たいまつ新書63 「狭山事件・現地からの報告」(たいまつ社)p.165記載【資料】《狭山差別裁判再審証拠一覧》にある戸門クラ供述調書〈石田養豚場の隣家〉である。内容は「五月一日の夜、犬がほえた」〈…

狭山の黒い闇に触れる 32

狭山市にあった狭小古本屋で購入した「狭山事件・現地からの報告」(たいまつ社) を再読していた所、見逃していた箇所があった。学校を出た被害者は関口自転車店の先の二又になっている道を、左の人通りの多い方へは行かず天岑寺(てんしんじ)の山門の前を通る…

狭山の黒い闇に触れる 31

狭山事件では、被害者を最後に目撃したのは一学年下( 中学時代 )の学生であったが、この目撃証言が被告の自白に対し非常に重要な意味を帯びるのである。それとは、学生の目撃時間が正確だとすると、被告は被害者と出会わない事になり、警察が練り上げた辻褄…

狭山の黒い闇に触れる 30

「狭山裁判と科学」(武谷 三男編 社会思想社) 読了。 締め括りとして執筆者である大物科学者たちが座談会を行い、その模様が記載されている。これがまた刺激的で面白い。以下抜粋してみると、「だけど今度の場合は、かなり多くの物証をでっち上げていったと…

狭山の黒い闇に触れる 29

読み応え充分な「狭山裁判と科学」であったが、第五章【死体】については、もうひとつ加えてもらいたい項目があった。本章では死体に関しての内、殺害方法の問題を中心に述べているが、他の、姦淫の態様、死斑の問題、死体の逆さ吊り、胃内容物と殺害時刻等…

狭山の黒い闇に触れる 28

五年以上押入れの最下層でつぶれていた本書は、現在私の良き友として、ときに伴侶として光り出した。 ( 本書埋没現場となった自宅押入れ。昼でも薄暗い ) 百円で購入した「狭山裁判と科学」であるが、その購入額には申し訳ないほど満足させてもらっている。…

狭山の黒い闇に触れる 27

前回に続き、第六章【筆圧痕問題の意味】について。 その前に記しておきたいが、この第六章は込み入った内容について非常にわかりやすく記述されており、ここを担当した、科学者であろう執筆者のさらに別の高度な能力がうかがわれる。難解な事柄を噛みくだき…

狭山の黒い闇に触れる 26

現代教養文庫938「狭山裁判と科学」法科学ノート 武谷三男編(社会思想社)第六章【筆圧痕問題の意味】 狭山事件における三大物証である、鞄、万年筆、時計は、被告の自供により発見されたとされているが、その供述調書が取調官により工作されていた可能性があ…

狭山の黒い闇に触れる 25

「狭山裁判と科学」第四章 【筆跡】「脅迫状の字は被告人の筆跡である」と結論を下した四人の鑑定人。関根・吉田両鑑定人( 埼玉県警刑事部鑑識課 )長野鑑定人( 科学警察研究所技官 ) 高村鑑定人( 科学警察研究所 )らの出した結果を下敷に第二審寺尾判決も「…

狭山の黒い闇に触れる 24

「狭山裁判と科学」第三章 【足跡】 井野 博満( 東京大・応用物理学 )は結論として「現場足跡が十文三分の地下足袋によって印象されたということを力強く推認している」と述べる。この第三章【足跡】は私にとって難解であり、理解できたのは上記の記述と章の…

狭山の黒い闇に触れる 23

「狭山裁判と科学」第二章【土壌】において、生越 忠 ( 和光大・地質学 )は、警察による土壌鑑定( 星野鑑定)に対し「この鑑定があまりにも多い不知の要素に基づいて、それを適当にまとめあげただけの、ずさんきわまりないものであること、したがって、鑑定の…

狭山の黒い闇に触れる 22

狭山事件発生後十日程たってから、遺体発見現場付近の麦畑からスコップが見つかり、付着していた赤土が遺体埋没穴の土とほぼ一致したと狭山署特捜本部が鑑定、そして一審、二審を通しこのスコップは被告と犯行とを結びつける証拠とされる。スコップが発見さ…

狭山の黒い闇に触れる 21

「狭山裁判と科学」(武谷三男 編 : 社会思想社)に取り憑かれた私は、この本を肌身離さず持ち歩いている。 わずか三百ページの中に狭山裁判における科学鑑定の分析・考察が凝縮され、この一冊と狭山事件公判調書があれば、私は一生、生きて行けるだろう。とこ…

狭山の黒い闇に触れる 20

読み直す程に味わいを増す本とは本書であった。 この、地味でちっぽけな、朴訥とした文庫本であるが、見た目からは想像もつかない高濃度の狭山事件裁判・分析本である。私が思うに古書価格五千円くらいの内容だと評価したがアマゾンでは激安で出回っており「…

狭山の黒い闇に触れる 19

馬鹿な私は完全に侮っていたが本書は本物である。 超A級の上質な情報で埋め尽くされている。一部、レベルが高すぎ難解な箇所もあるが、狭山裁判第二審、寺尾判決を揺るがし崩壊させる、科学からの視点による内容に「やはり誤判であったのだな」と納得、安心…

狭山の黒い闇に触れる 18

昭和時代に起きたいくつかの冤罪事件に関する書籍を読んで見ると、それぞれが関わった事件を早期に解決したいが為、警察は拷問や証拠ねつ造を繰り広げ、更に検察がそれらを足で踏み固め強固なものとし、裁判官たちを騙し、欺き、有罪判決を聞きながら、それ…

狭山の黒い闇に触れる 17

先日、北方領土問題が解決しない事により利益を得る輩が存在するという事実を知り驚いた。国益もクソもない、私も見習いたいほどの守銭奴どもが跋扈しているのだな。 だがこの辺りに関しては作家の佐藤 優氏の著作を読んでもらうとして、狭山事件が解決しな…

狭山の黒い闇に触れる 16

狭山事件公判第二審において(p2919)、山梨検事が石田一義証人に、自殺した兄、T利造について質問するのだが、質問内容を要約すると、*腕力の強さ。*ドラム缶をかついでどの程度運べるか。*ドラム缶(空)の目方。*どういうふうにして運ぶか。*中身が入っ…

狭山の黒い闇に触れる 15

昭和38年5月6日付の「奥富○二」に関する身辺捜査(狭山裁判 ・下 野間 宏著 岩波新書)によると、5月1日、入間川駅(現 狭山市駅)近くの勤務先を午後3時40分頃退社。翌5月2日〜3日は8時から5時まで勤務、同僚の話では「変わった様子はない」とある。そしてこの5…

狭山の黒い闇に触れる 14

「狭山裁判 上・下」(野間 宏著 岩波新書)を久しぶりに読んだが、迂闊にも上質な情報が記述されていることに今、気がついた。野間 宏氏が松本健男弁護士より得た書類「奥富○○の身辺捜査」の記述である。これは当時、狭山警察署の警部補2名が署長宛に提出した…

狭山の闇に触れる 13

小雨の中、畑の隅に老婆がうずくまり一心不乱に鎌を研いでいた。刺激せぬよう、私はそっと後ろを通り過ぎる。が、かすかに老婆の独り言が聞こえた。「南無阿弥陀 南無阿弥陀 南無・・・」・・・。そんな光景に出くわしながら自転車で狭山市青柳付近を通る。…

狭山の黒い闇に触れる 11

陰鬱で湿った、薄暗い暗渠のような狭山、第2ガードに立ってみる。飲み込まれないよう注意しながら。昭和38年5月1日午後3:30頃、ここに立つ被害者の姿が、中学時代の担任の先生により目撃されている。しかしこの目撃証言は一審・二審共に採用されていない ま…