アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 948

【公判調書2979丁〜】

                      「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                            *

福地弁護人=「滅多にないことが書き込まれているのは、特別の理由があると思われますが、どういう理由で書き込んだかを説明してくれませんか」

証人=「古いことだから記憶がはっきりは致しませんけれども、この時は、関さん、巡査じゃなくて巡査部長かな、居たんですが、その関くんが石川くんから図面をもらったんじゃなかったかな、もらったと記憶していますが、それによって鞄の捜査か何かに行った、それで帰って来た時に、無かったというので帰って来たような感じがしますが、その際、私が石川くんに、石川くんが言った場所に無かったじゃないかと、関さんが泥んこで帰って来て、無かったという話なんだが、あんまり人を騒がすもんじゃねぇということを私が言ったような記憶ですがね、それからまた調べが進んで、石川くんが図面を書いた、調書と図面と一緒だか別々だったか、その点は記憶ありませんけれども、とにかく石川くんが書かれた二度目の図面を持って関くん他、誰かがその鞄の捜査に行ったことがあったと記憶しています。そういう関係で、この時間が書かれたんじゃないかと思います」

福地弁護人=「そういう関係でと、あなたは強引に結び付けられちゃったけど、全然どういう関係か分からないんですが、どうして午後五時ということを書き込んだのですか」

証人=「だから、関さんが、今申し上げたように、泥んこになって帰って来て、無かったというようなことから、石川くんに私が、あまり人騒がせするもんじゃないと言ったような記憶があります、その時がもう、三時か、四時じゃなかったかという感じがするんですが、それから今度はまた、改めて石川くんが図面を書いたのを持って行った、その場合に作った調書が、この、五時じゃないかと思いますが」

福地弁護人=「そういうことは、別にこの日に限ったことじゃないでしょう、調書は一日に何通も作られているでしょう」

証人=「そうですね」

福地弁護人=「この日に限って、なぜ五時という具合に書いたんでしょうか」

証人=「だから、今言ったような状況で書かれたんじゃないかと思いますが」

福地弁護人=「今、あなたは、関さんが捜しに行ったと、泥んこになって、無かったと言って帰って来たと言いましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「最初に関さんが捜しに行った時は、図面を持って行ったんでしょうか」

証人=「関さんが石川くんから書いてもらった図面を持って捜しに行ったと思います」

福地弁護人=「あなたの推測ですか」

証人=「推測でなくて、石川くんが書いた図面を持って行ったわけです」

福地弁護人=「見たんですか」

証人=「推測じゃございません」

福地弁護人=「推測じゃないというのは、あなたは何か見たんですか」

証人=「要するに関さんが帰って来て、ここには無かったということでしたから、図面を書かれて、行ったんじゃないかと思います」

福地弁護人=「その図面をあなたは見たことがありますか」

証人=「その図面を私見たという記憶はございません」

福地弁護人=「じゃ、どうして、図面を持って行ったということが分かるんですか」

証人=「図面を持って行かなければ分からないんじゃないかと思います」

                                            * 

裁判長=「今、あなたは、ここには無かったと、関が帰って来て言ったと言いましたね」

証人=「はい、申しました」

裁判長=「ここには、というのは、何かなければここにはという言葉は出ない、あなたが図面を見たか見ないかにそれは関係してくるんじゃないですか」

証人=「はい」

裁判長=「図面は見なかったと言ったね」

証人=「はい」

裁判長=「その点を弁護人が聞いてるんだ」

証人=「その点がはっきりどうも古いことで記憶がないです」

裁判長=「記憶がなきゃいいが、ここには無かったと関が言って帰って来たということは、そうなんですね」

証人=「ええ、無かったというんで帰って来ましたね」

                                            *

福地弁護人=「関さんが出かけたのは知っておりますか。関さんが泥んこになって帰って来たことは分かったが、出かけたのは知ってますか」

証人=「いつ出かけたということは知っておりません。ただ、関さんが鞄を捜しに行ったということを青木警部か長谷部警視かに聞いて、それで鞄を捜しに行ったんだということは分かっておりました」

福地弁護人=「すると、関さんが帰って来たのはどこで見たんでしょうか」

証人=「来たのは、いわゆる、分室に控室があったわけです。そこじゃなかったかと思います。そういう言葉でお答えするより仕方がないですが、控室だったと思いますね」

福地弁護人=「これは記憶がなければいいんですが、関さんが鞄を捜しに行ったということを長谷部さんか青木さんから聞いたと言いましたね、今」

証人=「ええ、誰かから聞かされたです」

福地弁護人=「聞いた場所は取調室でしょうか。それとも控室でしょうか、それとも別な場所でしょうか」

証人=「取調室じゃなかったかと思いますが」

(続く)

                                            *

ここで私は次の証言を引用しようと思うが、残念ながらそれは公判調書に記載されたものではなく信憑性に欠け、今となっては検証することも不可能な事柄であるが、しかし度々読み返してしまうほどの要素を含んでいることは確かである。

                                            *

証言するのは狭山市内南入曾の燃料商・S氏(三十二歳)。事件当時、狭山消防団第三分団所属、事件三日後に行なわれた山狩りに参加した方である。

著者=「当時の週刊誌を見ると、S氏が『善枝さんの持ち物を見つけた』って出ているものもあるんですが、あれはどうなんでしょうか」

S氏=「ああ、カバンか・・・・・・」

著者=「やはりカバンがあったんですか」

S氏=「でもあれ・・・・・・場所が違うんだよな」

著者=「え・・・・・・どういうことなんですか」

S氏=「置いてあったの」

著者=「・・・・・・・・・・・・え」

S氏=「あの死体発見現場の横には茶垣が一列になってあったでしょう・・・・・・カバンはその根元に置いてあったんだよね」

著者=「その話は初めて聞きました。そうだったんですか・・・・・・。これまでの報道とは全然違いますね。でも、茶垣の下っていうことは、何か隠すような感じで置かれてあったんですか」

S氏=「いや、違うね。普通に置かれてあった。通り(農道)からすぐ見えたからね」

著者=「Sさんはその時、カバンの中身はご覧になったんですか」

S氏=「いや、それは見なかった。我々(消防団員)だけだったら見たんだろうけど、警察の人が一緒だったからね」

著者=「でも、これは確実に善枝さんのものだろう、と」

S氏=「そう。学生の使うようなものだったから、『こりゃあ、間違いない』ってことになって。それで『(死体が)埋まってんのはこの辺りなんじゃないか』って思って見回したら、それらしいところがあるじゃない。新しい土が出てて、軟らかくなってるようなさ・・・・・・」

                                             中略

著者=「カバンはどうなったんですか」

S氏=「機動隊の人に渡した。だから、そっちで持ってったと思うよ」

著者=「でも、カバンはその後一か月半も経ってから、捕まった石川さんの自白に基づいて、全然違う場所から発見されているわけですよね。そのニュースを聞いた時は不思議に思いませんでしたか」

S氏=「・・・・・・不思議に思ったよねぇ・・・・・・」

                                            *

○この消防団員の証言は、この書物の中だけにとどまりその内容が弁護団を動かす事へはつながらなかった。