アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 955

(いつのまにか入間川河川敷へ着任し、さっそく付近の警備にあたっていた新顔の猫)

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【公判調書2995丁〜】

                   「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

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山上弁護人=「それからまあ、一番最初の証言に戻りますが、川越分室にも地図があったか、なかったか、あなたはないと言うので、念のため長谷部さんの五十一回の証言を読むと、『川越分室にも本部にも図面はあった、一種類ではなく二種類以上の図面があった、それは署で作った図面です。それで一応確認しました、被疑者の取調室にも一部ありました』はっきりこう長谷部さんが言っておるんだけれども、あんた思い出して下さい、地図はあったんでしょう」

証人=「ありませんね」

山上弁護人=「その地図を見ながらあなたは石川君に確かめたでしょう」

証人=「そんなことありません」

山上弁護人=「あなたは、五十嵐さんというお医者さんがお作りになった死体の鑑定書が、確か五月二十六日付だったか十六日付だったかで狭山署長さんの方に送られていると思うんですが、そういうのをご覧になったことがありますか」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「(記録第三冊の八七四丁以下の五十嵐勝爾の鑑定書末尾添付の写真を示す)これ、見たことあるんじゃないの」

証人=「あります」

山上弁護人=「それから大野喜平さんて、おりましたね、死体を発掘した時にその穴の状況とか、そういうものを作った方、それは知ってるでしょう」

証人=「ええ、おりました」

山上弁護人=「その方がやはりあなた方の捜査のための参考になる実況見分調書というやつをお作りになっておるんですけれども、それもやはりご覧になったことはあるでしょうね」

証人=「ええ、見ました」

山上弁護人=「それで石川君が単独自供してから殺害方法が変わったようなことがありましたか」

証人=「意味が分かりません」

山上弁護人=「私が一人で善枝さんを殺しましたという自供だったわけですね」

証人=「ええ」

山上弁護人=「殺し方が変わったようなことはない」

証人=「要するに三人というような話の時とは変わってきたことは間違いございません」

山上弁護人=「三人の時じゃなくて僕が聞いてるのは一人でやったと言ってから」

証人=「そう変わったような記憶はございません、私は」

山上弁護人=「あなたはしかし、相当警官の経験をお持ちの人が一番大事な殺害方法で取調べ中に変わったかどうか記憶ない」

証人=「はい」

山上弁護人=「(昭和三十八年六月二十三日付の被告人の供述調書末尾の証人の署名=原審記録第七冊の二〇四八丁を示す)これ、あなたの署名がありますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「それでこの調書の二項を見ると、『私が今でもすまないという気持ちでいたということは狭山警察の伝々』それから『無事に出られたら一週間に一度ずつお参りに行きます』こういう風なことを言ったことになっていますね」

証人=「はあ」

山上弁護人=「この時の殺害方法はどういう風に供述しているか覚えておりますか」

証人=「覚えておりません」

山上弁護人=「この供述調書では、どうもタオルで絞め殺したというようなことになっておるようですね」

証人=「そうですか」

山上弁護人=「覚えありませんか」

証人=「ありません」

山上弁護人=「そして二通あと作ってるね。二十五日付ですか、その調書から、手で首を押さえて殺した、という具合に、まるきり殺害方法が変わっておるんだけどね、あなたは追及したことがありますか。おかしいじゃないかお前さん、一週間ごとにお参りに行くと言った時の調書はタオルで殺したということになっていて、二日後はもう変わっている、どういうことからこうなったのか、聞いたことありますか」

証人=「私はこれまで調べの時に、お前これ違うじゃないかということについて聞いたことございません。どの被疑者についてもそういうことを言ったことはありません。ただ本当のことを申しなさいと言うだけです。これまでどういう被疑者についても自分でやってないんだから違うじゃないかと言えないんです」

山上弁護人=「それであなたはさっき鑑定書を見たと言いましたね」

証人=「当時見たと思いますね」

山上弁護人=「あなたとしてはどういう殺害方法であったかという一応の推定を持っていましたか」

証人=「推定は持っておりませんな」

山上弁護人=「鑑定書をあなたは読んだんですか」

証人=「読んだと思いますけれども、しかし鑑定書がこうなっているからというようなことで私は聞いた覚えもございませんし、もちろん今まで被疑者を聞くについて、これはこうじゃないか、ああじゃないかということを言った覚えはありません。したがって石川君に対しても私はそういう調べをしていないんです。もちろん私はいわゆる裁判官で言えば陪席くらいの程度ですから」

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佐々木哲蔵弁護人=「あなたは立会人というのはあなたも被疑者に聞くわけですか」

証人=「聞く場合もございます。しかし取調べ主任というのは青木警部ですから、青木警部が主として聞いたわけです」

佐々木哲蔵弁護人=「そうすると調書に文言を書かれるのは青木さんがご自分の書き方で書かれるわけですか」

証人=「さようでございます」

佐々木哲蔵弁護人=「この字は青木さんの字ですか」

証人=「青木さんです」

佐々木哲蔵弁護人=「書いてる調書は青木さんがお書きになられた」

証人=「青木さんです」

佐々木哲蔵弁護人=「つまりこれは要領筆記ですから要領は青木さんがまとめられる」

証人=「そうです」

佐々木哲蔵弁護人=「あなたも尋ねられる」

証人=「はい」

佐々木哲蔵弁護人=「どのくらいの割合であなたはお尋ねになる」

証人=「割合にすれば一か二くらいでしょうな」

(続く)

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(警備中に彼が見せるその真面目な勤務態度には目を見張るものがある)

(新設された入間川河川敷派出所)