(写真は"劇画・差別が奪った青春"部落解放研究所・企画・編集より引用)
【公判調書2686丁〜】
「第五十一回公判調書(供述)」
証人=長谷部梅吉
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山上弁護人=「青木さんおったんですか」
証人=「いや、誰かおりましたが青木さんじゃないような」
山上弁護人=「刑事ですか」
証人=「刑事かどうか、自殺をされないように付けておく者がおったと」
山上弁護人=「刑事の調べの場合、いつでもやるんですか」
証人=「何ですか」
山上弁護人=「茶碗をほかの取調べなんかでも」
証人=「いやいや、いつもやりません」
山上弁護人=「何で石川君の場合だけこういうことをやったんです」
証人=「こういう事件がいくつもありますか、世間に」
山上弁護人=「いくつもあればいつもやるの、あなたは」
証人=「こういう凶悪な事件での被疑者の心理はそういう風になると、自供する前はやりませんよ、自供して本人が悲観しては・・・・・・」
山上弁護人=「ほかの事件でやったのはどれですか。茶碗を当てるとか、ふざけたのは」
証人=「それはほかの事件では」
山上弁護人=「ないでしょう」
証人=「そうですね」
山上弁護人=「何でこの事件だけそうしたんです」
証人=「石川君○○(注:1)だったら困りますから」
(注:1)印字不鮮明により解読不能。
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石田弁護人=「中田という紙文字を鋏で切って作ったことがあるということでしたね。それ以外にも紙で文字なり絵なりを紙を切って作ったことがありますか」
証人=「全然ありません、私はそのほかには知らないんです」
石田弁護人=「真ん中の中という字と田んぼの田という字は簡単に出来るわけですか」
証人=「はい、出来ます」
石田弁護人=「それは何のためやったんですか」
証人=「今ご説明申し上げたように石川君が自供してもうその・・・・・・」
石田弁護人=「今申しましたようにというのは湯呑み茶碗の件で言われたことですか」
証人=「そうでなくて、湯呑み茶碗の方は後で、中田というの切る方が先で、そういうのばかりじゃなくてこういうのもあるぞと言って、湯呑み茶碗が出たんです」
石田弁護人=「紙切りで中田という字を作ったのは」
証人=「ですから石川君が中田という字が書けないと言ったから、何あんなものは小学校五年も行ったんだから書けるじゃないか、線一本引けば書けるぞと言うと、書けませんよと言うから、じゃ書いてみようかと言って、その場で切って見せたんです」
石田弁護人=「中田という紙文字を作られたのはいつ頃の時期でしょうか。川越分室でですか」
証人=「川越署で自供しまして、自供調書も何も取ってしまって、調べが終わってそれからのことですね」
(以上 沢田怜子)