(狭山事件裁判資料より転載)
【公判調書2034丁〜】
「第四十一回公判調書(供述)」⑪
証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)
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中田弁護人=「六月二十五日、私どもが知る限りでは新聞その他の報道によると、中さんは石川一雄君が自供したということで記者会見をしているようですが、知っていますか」
証人=「ええ、そんな記憶、ありますね」
中田弁護人=「あなたはそれに立会いましたか」
証人=「はっきり覚えてませんね、確かに二十・・・あの頃記者会見は中さんがしたように覚えてますね」
中田弁護人=「立会ったかどうかの記憶はない」
証人=「記憶ありませんが、あるいは立会ったかも知れません。あれはこっちだったと思いますね、狭山だったですね。川越だったかな、狭山のほうで記者会見したように記憶しておりますが」
中田弁護人=「六月二十五日の記者会見の時についてのあなたの記憶ははっきりしないようですが、あの記者会見が自供したという最初の発表でしょう」
証人=「そうでしょうかな・・・・・・。そうでしょうねえ」
中田弁護人=「最初の自供を発表するということになると、かなりこれは重要な発表ですね」
証人=「はぁ」
中田弁護人=「どういう形で発表するかという相談はあなたは受けなかったでしょうか」
証人=「記憶ないですね。あんまりはっきり・・・・・・」
中田弁護人=「石川君から自供があってすぐ記者会見ということになったという記憶ですか」
証人=「その辺ははっきりしません」
中田弁護人=「先ほどのあなたの証言によると、あなたが狭山署で関さんと一緒に石川君に会ったのも、川越署に移ってから後に関さんを派遣したのも、いずれも捜査が進展しなかったからというのが大きな理由だったわけでしょう」
証人=「そうです」
中田弁護人=「つまり関さんには自供してくれるんじゃないかと思ったということですね」
証人=「まあ強いて言えばそういうことでしょうね」
中田弁護人=「当時警察としては石川君が自供するかしないかが大きな関心事だったんでしょう」
証人=「はあ」
中田弁護人=「さていよいよ自供したとなれば、それをいつどういう形で発表するかということも、特に捜査を指揮していたあなた方とすれば重要な問題でしょう」
証人=「ええ、重要ですね」
中田弁護人=「それでもう少し記憶を喚起してもらいたいんですが」
証人=「確かに発表は間違いなく当時の刑事部長がしたと思います。いつどこで私、立会ったかどうか、その辺が記憶がちょっとはっきりしないのですが」
中田弁護人=「いずれにしても自供があってから、一週間も二週間も経ってから発表するというようなことはしませんな」
証人=「まあ、それはありません」
中田弁護人=「あなたが関さんと狭山署で石川君に会った日なんですが、先ほど十二、三日頃というように言われたんですが、十六日頃という記憶はありませんか、六月の」
証人=「とにかく、再逮捕はいく日ですか」
中田弁護人=「十七日」
証人=「その前でしたですね、二、三日か、四、五日か、はっきりしませんが、前は前ですね、再逮捕の」
中田弁護人=「今、十六日、つまり再逮捕の前日と限定して伺ったのは、関さんが十六日頃だと言っておられるからなんですが」
証人=「私は十二、三日と記憶しておりますが、あるいは十六日・・・・・・、前の日ですか、そんな余裕があったかなその日・・・・・・」
中田弁護人=「再逮捕の直前」
証人=「ええ直前は直前ですが、十二、三日のように、十六日は余裕がないように思いますが、書類を作って裁判官の令状をもらって・・・・・・、十六日は令状請求する書類を作ったんで、多分十六日は時間の余裕がないように思います」
中田弁護人=「そこで伺いたいのは、あなたが関さんと会った頃は勾留の満期に近づいたから、というよりは勾留の満期があって捜査本部の内では石川君に対して再逮捕をするか、しないかということがしきりと議論になっていた時期じゃないんですか」
証人=「そうですね、一日、二日前はもう議論になってましたですね」
中田弁護人=「つまり私ども弁護人が石川君の保釈を請求していたり、勾留理由開示の請求をしたということがあなた方に分かっている時期にあなたは関さんと一緒に石川君に会ったんじゃないですか」
証人=「その辺がはっきりしませんね。いつ勾留開示があったか、いつですか。再逮捕の二、三日前という記憶があるんですが」
中田弁護人=「二、三日前も既に再逮捕するかどうかは話題になっておった時期ですか」
証人=「若干なっておったですね」
中田弁護人=「繰り返して伺うことになるんですが、石川君が裁判所へ行ったら今まで言わなかったことを言ってやるというようなことを言いませんでしたか。さっきも尋問したことですが」
証人=「私は聞いてません」
中田弁護人=「このあいだ河本さんという検事がこの法廷に来られまして、若い検事さん、ご存じですね」
証人=「知ってます」
中田弁護人=「河本さんなんかも石川君は裁判所に行ったら言うという話をしきりにしてたという話をしていたんですが」
証人=「検事のほうにしたんじゃないですか、私は聞いてません。直接は」
中田弁護人=「その頃はちょいちょい検事さんは狭山署に来て調べていたんですか」
証人=「そうは調べてなかったですよ、主として警察が調べていて、まあ、ああいった時に調べたという程度じゃないんですか」
中田弁護人=「ともかくあなたが関さんと会った時にはあなたとしては捜査の進展なしということを非常に痛感していた時期なんですね」
証人=「まあ、そういう風ですね」
中田弁護人=「なかなか石川君に求めている自供がされなかった、こういう時期ですね」
証人=「まあ幾分何か、まあ記憶ですと、まあ自供とまでいきませんが、まあ口を開いた時期もあったようですが、本論には入りませんで動いておったようです」
中田弁護人=「それはあなたのさっきの説明では六月二十日前後のことなんでしょう」
証人=「ええ、そうです。再逮捕前はそう進展はしておらなかったんです」
中田弁護人=「再逮捕前はしなかったんですね、再逮捕後、口を開きかけたけれども一転、二転、三転して、又どうも事情がよくわからんから捜査も進展せずと見込まれて関さんを出したという結果になるんでしょう」
証人=「そういう結果になるでしょうね」(続く)
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