【公判調書2428丁〜】
「第四十七回公判調書(供述)」
証人=斉藤留五郎
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中田弁護人=「あなたは、お医者が川越分室の方に来た時にはいなかったんではないかと思うと言いましたね」
証人=「はい」
中田弁護人=「それは」
証人=「お医者さんの来たのは私は見ておりませんし、又あれが、幾日頃かな、休みをくれた時もあるんです。その時には自宅に帰れたんです」
中田弁護人=「それは石川君が川越に移ってから後のこと」
証人=「はい」
中田弁護人=「関さんが来て、何日間か関さんが調べた後ですか、前ですか」
証人=「確たることは申せませんが、おそらく後ではないかと思います」
中田弁護人=「あなた方が川越署の分室で泊まっていたという場所はどこなんですか。さっき書かれた図面にはない場所」
証人=「廊下の一番右端の方の部屋です」
中田弁護人=「(本速記録末尾添付の図面を示す)この図面を見てもう一度仰って下さい。事務室の隣の廊下と書いてあるところと留置場との間に部屋があったんですか」
証人=「間じゃなくて廊下から突き当たる部屋と覚えてます」
中田弁護人=「事務室の横の廊下の突き当たりの部屋だと思う」
証人=「ええ」
中田弁護人=「関源三さんなどもいる時はそこに泊まっていたんですか」
証人=「はい、泊まっておりました」
中田弁護人=「この図面書いてある裏出入口というところを出た左手のところに柔道や剣道する場所があったでしょう」
証人=「あったかも知れませんが今、私の頭に浮かんで来ません」
中田弁護人=「押収した自転車や証拠物件がかなり置いてあったんですが」
証人=「そうですか」
中田弁護人=「記憶ないですか」
証人=「はい」
中田弁護人=「それから私共の記憶によると、小使室と書いてある隣の部屋で私共が石川君と接見したんですが」
証人=「もしかするともう一つ・・・・・・」
中田弁護人=「おそらく小使室と調室として書いた間には、あなたが書いたように二つではないかと僕も思うんですが」
証人=「それじゃもう一つ部屋があった方がいいのかも知れません」
中田弁護人=「ああそうですか。で、伺いたいのは私共が接見に使っていたその部屋に雨が大変激しく降って、石川君を移したようなことはありませんか。調室を移したようなことがあったんではないですか」
証人=「私にはその覚えはございません」
中田弁護人=「それでは取り寄せにかかる謄本類を示して若干質問したいと思いますが、当審第三十三回公判に提出された埼玉県警察本部及び狭山警察署から取り寄せられた供述調書謄本ないし写しをこれから示しますが、記録三〇六六丁以下に編纂されているこれらの番号に従って特定いたします。
(狭山警察署から取り寄せたもの、番号十七昭和三十八年五月二十四日付山下了一作成の調書を示します)
ちょっとこれご覧下さい。謄本であることが上に書いてあり、その最後のところにあなたの署名がありますね。この謄本はあなたが作られたと思われるんですが、見て下さい」
証人=「はい、そうです」
中田弁護人=「あなたの字ですね」
証人=「はい」
中田弁護人=「これは万年筆のようなもので書いてありますね」
証人=「はい」
中田弁護人=「これ狭山で作られたものだと思いますが。五月二十四日はまだ狭山にいるときですからね」
証人=「はい」
中田弁護人=「狭山にいるときは一つの原本について謄本を何通作っていたか記憶ありませんか」
証人=「ありません」
中田弁護人=「これを見ると、万年筆で一通謄本が作られているんだけれども、一通だけしか作らなかったか、同じ謄本を何通か作ったかという記憶はありませんか」
証人=「ございません」
中田弁護人=「今ご覧になったこの調書をどこで作ったか、謄本をですね、場所は記憶ありますか。狭山署の捜査課の部屋であるとか、調室の隣か」
証人=「これだけ作ったのでは隣の部屋かと思います」
中田弁護人=「調室の隣の」
証人=「はい」
中田弁護人=「その頃、その調書をそういう風に作るようにあなたに命ずるのは誰ですか」
証人=「山下警部さんだったと思います」
中田弁護人=「作成名義人の山下さんが命じたと思うと」
証人=「はい」
中田弁護人=「(同じく、番号十七の調書に添付してある図面の謄本を示します) この図面にはあなたの署名押印がありますね」
証人=「はい」
中田弁護人=「この図面はあなたが謄本作成したものですか」
証人=「そうです」
中田弁護人=「この中に例えば"エきどんり" とか、"かんこばす" とか、石川一夫と署名指印の字がありますが、これもあなたの字ですか」
証人=「はい、そうです」
中田弁護人=「この図面をどういう風にして作成されたか覚えてますか」
証人=「今これを見て、定規で引いて作った謄本と思います」
中田弁護人=「石川君が書いただろう図面を見て、それを見ながらあなたとしては定規を使ってこの図面を書いた」
証人=「はい」
中田弁護人=「横に置いて、見ながら書いたということですね」
証人=「はい」
中田弁護人=「石川君が書いたという図面を直接写したというようには今、この図面を見て考えられないんですね」
証人=「はい」
番号十七の調書添付図面は見当たらず私は途方に暮れた。