アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 780

この写真は本文とは関係ないが、昭和三十八年六月二十八日に狭山市付近で撮影されたもの。右奥に三柱神社(荒神様)の鳥居が見える。中央を走る砂利道が昭和世代の哀愁を掻き立てるが。

【公判調書2426丁〜】

                 「第四十七回公判調書(供述)」

証人=斉藤留五郎

                                            *

福地弁護人=「先ほど鞄が発見されたときは、僕等も不思議だと思うんですけれども、あなたがこれを知ったのは翌日だったという風に供述しましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「鞄のあとで万年筆が発見された、さらにそのあと時計が発見されたですね、そういう記憶ございますか」

証人=「そういう細部にわたっての何は(原文ママ)確かにあとから耳に入っておりますが、いつどこからどういう風に入ったか記憶しておりません」

福地弁護人=「時計が発見されたということを聞いた記憶はありませんか」

証人=「あとから聞いておりますが」

福地弁護人=「あとでというのは時計が発見されてから何日ぐらい経ってからでしょう」

証人=「それはいく日後か今覚えはありません」

福地弁護人=「あなたは本来、大宮警察の勤務ですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「狭山警察へ応援に来たわけでしょう」

証人=「はい」

福地弁護人=「いつ頃まで応援しておったんですか」

証人=「被疑者が川越へ行くまでです」

福地弁護人=「形式としては狭山署助勤ということじゃないんですか」

証人=「はい」

福地弁護人=「川越警察にいつ頃までおりましたか」

証人=「石川君が行く数日前だと思います」

福地弁護人=「どこに」

証人=「刑務所に行く数日前」

福地弁護人=「刑務所というのは、起訴されて拘置所に行く数日前ですか」

証人=「はい。大宮に強殺事件が起きまして、その時に引揚げたんです」

福地弁護人=「あなたの記憶でそれは七月に入ってからの事件ですか、七月に入る前の事件ですか」

証人=「さあ、確たる覚えはございませんが、七月に入ってるかと思いますが」

福地弁護人=「その事件が起こるまであなたはずっと泊り込みで川越分室におられたんですね」

証人=「はい」

福地弁護人=「石川君が自白を始めてからずっと取調べが続いておったんですけれども、ある日大変な大雨が降って雷が鳴ったという、そういう日があったということを記憶ありませんか」

証人=「それはいつ頃の話ですか」

福地弁護人=「だから川越分室に来て石川君が自白を始めた後ですね。非常な、にわか雨が激しい調子で降ったという記憶はありませんか」

証人=「思い出せません」

福地弁護人=「大変な雨で、雨漏りがするところさえ出てきたというようなことは、そういう記憶はありませんか」

証人=「私は病気をしたので、ちょっと思い出せないんです」

福地弁護人=「時計が発見されたということをあなたが聞いたのは川越分室にいる時ですか、川越分室の誰かから聞いたのですか」

証人=「その日にちと誰かということ、それは私には分かりません、現実に」

                                             *

中田弁護人=「今の点ですが、最後に福地弁護人が伺った質問の趣旨は、時計が発見されたということを聞いたのは、あなたが大宮にまだ帰らない前、川越分室のほうで仕事をしている時か、という意味なんですが」

証人=「誠に申訳ないないんですが、私が半身不随でしばらく寝る前ならば、ある程度分かっていたんでしょうけれども、その前後は本当に申訳ないがはっきりいたしません」

中田弁護人=「ただ、あなたは強殺事件が大宮で起きたのでその捜査のために大宮に帰ったんでしょう。そちらのほうの仕事が当然に忙しいだろうから、時計が発見されたということを聞いておられるのも大宮に行かれる前じゃないかと思われるからちょっとしつこく聞いているんだけれども」

証人=「それが急にここに来て今聞かれて、確かに聞いているのは聞いているんですが、その前後は私、今申上げられないんです」

中田弁護人=「川越の分室に行ってからは川越の分室で泊り込みだったんですね」

証人=「はい」

中田弁護人=「狭山署の時は泊り込みですか」

証人=「堀兼の駐在所の近所の、あれは何ですか、会議所と言うんですか、何と言いましたか、部落の・・・」

中田弁護人=「公民館」 

証人=「そのようなところに泊まっておりました」

中田弁護人=「川越署に行ってからはそこでずっと泊り込んでいたわけですし、石川君の留置場からの出し入れにはあなたも関与されていたわけでしょう」

証人=「はい、私も関与すると同時に一緒に泊まっていた者もやっております」

中田弁護人=「あなたは石川君と一番よくいろいろなことで雑談のようなことをするというようなことがあったんじゃないんですか」

証人=「それは留置場から調べ室に行く間程度です、すれば」

中田弁護人=「そういう雑談の中で、たとえば、夕べ調べが非常に遅くなって留置場の隣の時計の音が聞こえたというような話を石川君としたことはありませんか」

証人=「ありません」

中田弁護人=「留置場の隣に、何かこう、お経を上げるとか、お祈りをするような家があったんじゃありませんか」

証人=「川越のですか」

中田弁護人=「はい」

証人=「それは知りません」

(続く)