アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 866

写真は被害者の物と思われる腕時計が発見された現場。石川被告の自白によると道路中央(丸印内に"ヘ"の文字)に捨てたとされるが、実際にはその捨てた日から五十日後に写真右端("ト"印)の茶株から腕時計が発見された。

この腕時計に関しては、あらゆる面で疑惑に満ちており、たとえば事件発生後に公開された被害品の品触れに載った時計の側番号が、被害者の腕時計の側番号と不一致であったり、または被告人が、あえて路上の真ん中へ腕時計を捨てたという不可解さ、そして何よりキナ臭いのは、その道のプロである捜査員らが徹底捜索したのちに、杖をついた老人がこの証拠品を見つけたという事実である・・・・・・。

【公判調書2710丁〜】

                      「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

                                            *

福地弁護人=「最初の図面が付いている調書、六月二十四日付の調書をあなたが取った時に、石川が時計を捨てた場所について自白をしたぞと、これは大変重大なことですよね」

証人=「はい」

福地弁護人=「非常に重要な物証の存在について被告人が初めて具体的に話をしたわけですがね」

証人=「はい」

福地弁護人=「当日すぐにこの田中の三叉路へ、この図面の場所へですね、行かなかったのはどういう理由ですか」

証人=「それは、私が行くように命ぜられる仕事でもありませんし、捜査本部のほうの方針だろうと思います」

福地弁護人=「先ほどあなたは、一日二日置いてから捜索に行ったと言いましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「あなたは行ってないんですね、ほかの誰かが行ったのでしょうか」

証人=「はい」

福地弁護人=「一日二日、間が空いたというのはどういうわけでしょうか」

証人=「それはよく分かりませんが、あとで今になって記憶がはっきりしませんけれども、気になることですから聞いたと思うんです」

福地弁護人=「誰に」

証人=「今になって誰にどういう風にという風に具体的に聞かれてもちょっと困るんですがね」

福地弁護人=「要するに一日二日捜索に行ってないんですね」

証人=「と思います」

福地弁護人=「その捜索に行かなかった理由を、あなた先ほどちょっと言いかけたでしょう。それを聞いているんです」

証人=「これは過ぎ去ったことですから今から話せばこれは私の想像になるかも知れませんよ、多分、あまりにも時が経ってて、その捨てた場所が納得のいかないことで遅れたんじゃないかと私は思います。それでたとえ、どうあろうともこれは捜索すべきだという意見で捜索されたんだと記憶するようにも思います。ぼやっとしておりますが、そんな風にも考えます」

福地弁護人=「しかしあなたは、単に被告人が言ってる供述を機械的に書面に写すだけの役目じゃないでしょう。被告人から真実を聞き出そうということで、あなたとしては職務上やっておられるわけでしょう」

証人=「はい」

福地弁護人=「あなたの、そういう取調べの中で重要な物証の存在について被告人が自白したわけですよ、これについて当然あなたにいろんな質問があったりもっと詳しく時計のあり場所について聞けとか、いろんな指示があったんじゃないでしょうか」

証人=「それは指示がなくても、私は聞いたと思いますね」

福地弁護人=「私が聞いているのは、あなたが石川被告人にどういう風に聞いたかということじゃなくて、あなたは、こういう自白を取ったということは捜査本部に当然報告したんでしょうね」

証人=「調書は、その日のうちに送ったと思います」

福地弁護人=「捜査本部では、あなたから届いた調書について、もっと詳しい話を聞かせろとか、いろんな指示があったのでしょうか、送りっ放しですか」

証人=「送りっ放しのこともありますし、その日のうちに・・・・・・」

福地弁護人=「そういう一般的なことを聞いてるんじゃなく、この時のことを聞いてるんです。時計についての自白があった日のことを聞いてるんです」

証人=「この時は・・・・・・」

福地弁護人=「じゃこういう風に聞きましょう、時計を捨てた場所について自白があったでしょう」

証人=「はい」

福地弁護人=「そのことを誰かに報告しましたか」

証人=「まあ、とぼけてるように思われると本当に残念ですけれども、いちいちその時報告したかどうかということは記憶がございません」

福地弁護人=「少なくとも捨てた場所が明らかになった以上は、あなたとしてもすぐこれを捜しに行くような手配を取る必要があるでしょうね、捜査の一員として」

証人=「いや、日が経っておりましたので、すぐに行かせる気分にならなかったと思いますね」

福地弁護人=「あなた自身がね」

証人=「ええ、今よく分かりませんですけれども、これは六月二十いく日かになるわけですから、二十四日ですか・・・・・・」

福地弁護人=「それじゃ、日にちも経っておるし、もう無いだろうということで行くのを見合わせたと、こういうわけですね」

証人=「そうはっきりも言えません。とにかく一応供述がある以上捜索すべきが妥当だということでやったわけですから、どういう供述でも本当かどうかのウラを取るのが当然だと思います」

(続く)