【公判調書2998丁〜】
「第五十六回公判調書(供述)」
証人=遠藤 三(かつ)・七十歳
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佐々木哲蔵弁護人=「あなたは立会人ですから問答をずっと聞いておられる」
証人=「はい」
佐々木哲蔵弁護人=「だから見方によってはあなたが一番よく覚えている」
証人=「そうですね」
佐々木哲蔵弁護人=「そうすると被告の言う通り要領を書かれるというんですがね、この調書には "よく考えておきます" という文句があるんですけどね、まあその一つの例として六月二十八日の調書の八項ですと『私は善枝ちゃんの体のうち、なわでしばったところは足だけで、そのほかの手とか首とかをしばったことは覚えていませんが、よく考えておきます』という言葉があるんですけれどもね、このよく考えておきますというのは石川君がそういう言葉を使ったんですか」
証人=「石川君が使ったんじゃないですか」
佐々木哲蔵弁護人=「よく考えておきますと、これは石川君がそういう言葉を使ったのをその通り書いたわけですか」
証人=「その通りでなくちゃなんねぇわけですね、だから青木さんそのものがその通り書いたと思います」
佐々木哲蔵弁護人=「ところがね、たとえばこの条項だけ見ましても、体のうちで縄で縛った所は足だけで、そのほかの手とか首とかを縛ったことは覚えておらないで考えておくと、これはちょっとおかしいことないですか、そうすると殺しておいて縄で縛った所は足だけで手とか首とかを縛ったことはこれは一番肝心なことじゃありませんか」
証人=「そうですな」
佐々木哲蔵弁護人=「それを考えておく、しかもこういう調書自体でですよ、こういう調書自体であなた、おかしいと思いませんか」
証人=「私はおかしいと思いません。思うわけがないです。とにかく石川君の供述をそこへ載せたものですから私はおかしいとは思いません」
佐々木哲蔵弁護人=「あなたはですね、おかしいんじゃないかとか、違うんじゃないかというようなことを被告に問いただしたことはないと仰いましたね」
証人=「ありません」
佐々木哲蔵弁護人=「そういうことはありますか。警察官が被告がこういう風に言った場合にそれは君、おかしいんじゃないか、違うんじゃないかということを言ったことはないですか」
証人=「状況が分からなければそういうことは言えないですよ」
佐々木哲蔵弁護人=「そういうことはあなた、言ったことはないの」
証人=「ありません」
佐々木哲蔵弁護人=「ただね、常識なんですけれども、実際に殺したとすれば、一番大事な、縄で縛った所は足その他の手とか首とかを縛ったことはこれは考えるも何もないんじゃないかと、私は思うんですが、いかがですか」
証人=「そうですね、それは仰られる通りです」
佐々木哲蔵弁護人=「だからこの内容はちょっとおかしいな」
証人=「内容がおかしいということは私は言えないと思います」
佐々木哲蔵弁護人=「もっと追及するのが当り前じゃありませんか」
証人=「こうじゃないかという追及ができればこれは別ですけども、全然わからなくて追及したからて(原文ママ)、石川君が言ったことをそこへ書くより他にないじゃありませんか」
佐々木哲蔵弁護人=「だけどあなた方は石川君は本当に犯人だと思っていたというんでしょう」
証人=「そういうことは断定出来ませんな。最初から石川君が犯人だなんていうようなことはこれは毛頭考えられるものじゃないです。捜査の過程においてだんだん考えられるわけです」
佐々木哲蔵弁護人=「考えられないにしても、その疑いをもって調べておるわけでしょう」
証人=「もちろん被疑者ですからね」
佐々木哲蔵弁護人=「だから、縄で縛っている足ということは思い出している、その場合に本当にやったんだとすれば一番肝心な手とか首とかを縛ったということを、本当にやった人はそれを思い出すのが当り前じゃありませんか、あなた方が追及するのが当り前じゃありませんか」
証人=「そういう風にやっていくのが本当かも知れません」
佐々木哲蔵弁護人=「もう一つは、" あとで間違ったことがあったならば訂正します " という下りが所々あるんですよ。たとえば六月二十五日の調書でございますが、その十六項、『私は今まで話したことに大体間違いないと思いますが間違っていたことがあったらあとで直します』 せっかく言ってるのにこれはあなたのご記憶では、警察の方から今まで言ったことで間違いがあったらあとで直すか、という風にお問いになって答えたものか、それとも石川の方から自分で進んで言ったものか、どっちですか」
証人=「それは一応間違いないかということは念を押します。それに対して答えられたんじゃないかと思いますが」
佐々木哲蔵弁護人=「こういうのは私はあまり経験ないんですがね、つまり石川が今まで言ってることが何かちょっと頼りないところがあると、それで、もし違ったことがあればあとで訂正するというようなことを特に調書に書いたと、そういう感じであなた方は石川の話を聞いておったんじゃありませんか。その現れじゃないですか」
証人=「そうじゃないです」
佐々木哲蔵弁護人=「こういうのが所々あるんです」
証人=「そうですか、一応とにかくそれで間違いないかと、こう念は当然押されます。それに対して間違っておったら訂正しますよというのは当然のことだと思います」
(続く)
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追記:入間川河川敷を管轄とする猫について。
左・・・右・・・左・・・、
そしてまた右と、振り子のように振られる尻尾を見ているうちに、やがて私は催眠状態に陥っていった。気がつけば、コンビニで以下のものを買わされ、左・・・右・・・とつぶやきながら私はそれを与えていた。
こちらが受けた洗脳が解けぬよう、最後まで光線を送ってよこす姿はどこかの宗教団体を彷彿とさせ、事実、私は再びこの教祖に接触することを心に誓っていた。もちろん、次回は高級チュールをお布施させていただくつもりである。