【公判調書2706丁〜】
「第五十二回公判調書(供述)」
証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)
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福地弁護人=「(記録第七冊二〇七五丁、六月二十四日付供述調書添付図面を示す)その図面を見て下さい。この図面は何を説明する図面でしょうか」
証人=「これは時計を捨てた場所を説明した図面だと思います」
福地弁護人=「ではこの図面を見ながら、石川被告が時計を捨てた場所について、どういう説明をしたか、思い出して下さい」
証人=「これは、そういうことがあるのかと、私自身が不思議に思った供述なのでよく覚えているんですが、三叉路の道路の真ん中ごろに時計を捨てましたと、こういうお話でした」
福地弁護人=「それで、どうして不思議に思ったんですか」
証人=「時計を道路の真ん中へ捨てるということが、そういう同じ捨てるにしても、溝に捨てるとか人の見えないところへ捨てるというなら成る程と思うんですけど、道路の真ん中へ置いてきたと、確か置いてきたような供述だったと思います」
福地弁護人=「それは最初の供述でしょうね」
証人=「はい」
福地弁護人=「時計に関して最初の供述」
証人=「はい」
福地弁護人=「あなたは、それに対してそれはおかしいんじゃないかという話を当然したでしょうね」
証人=「確かしたと思います」
福地弁護人=「それに対してどういう説明があったのでしょうか」
証人=「それをひるがえさなかったと思います」
福地弁護人=「それは、最初の時計に関する取調べの時ひるがえさなかったのではなく、最後までひるがえさなかったのでしょうか、あなたの取調べでは途中でひるがえして、どこかほかのところへ放り投げたとか、そういった訂正をした記憶はありますか」
証人=「訂正された記憶はありませんが」
福地弁護人=「すると石川被告は、道路の真ん中に時計を置いたという、こういう説明を終始しておったのでしょうかね」
証人=「多分そうだったと思いますが、その後、もし訂正されていればその通りの調書があると思いますが」
福地弁護人=「すると、確かに私ども考えてもおかしい話だと思いますね、三叉路の道路の真ん中に時計を置くというのは。あなたも先ほどそれに対して確かめたという風に仰いましたね。石川被告はそれに対して具体的にはどういう返答をしておったでしょうか、・・・・・・供述をひるがえさなかったとさっき表現されたが」
証人=「具体的と言いますと」
福地弁護人=「つまり確かに道路の真ん中に置いたに間違いないと、そういう供述をしたんでしょうか」
証人=「そうです」
福地弁護人=「それを説明する図面でしょうか、その図面は」
証人=「確かにそうだと思いますが」
(続く)
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福地弁護人が証人に示した供述調書添付図面と同一のものは私の手持ちの資料には見つからず、したがって次に掲げる図面は弁護人の示したものとは別である。図面左上に2075との丁数が確認でき、これは弁護人の示した図面の丁数と一致するが、日付が六月二十四日ではなく六月二十九日と記載されているので、やはりこれは弁護人の示した図面とは異なると思われる。
(丁数2075)
(日付は六月二十九日)