(速記録末尾添付図面)
【公判調書2412丁〜】
「第四十七回公判調書(供述)」
証人=斉藤留五郎
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中田弁護人=「その石川君が留置されていた部屋の出入り口がどっちを向いていたか」
証人=「ええ、それがちょっと思い出せないんですよ。それとこっち側にいくつ部屋があったか、ちょっと思い出せないんですよ」
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裁判長=「方角書けますか」
証人=「はい」
(証人は本速記録末尾添付の図面を仕上げ署名捺印した)
裁判長=「警察の本署というか、そういうのはどっちの方角にあたるか書いて下さい。つまり、それは警察の分室でしょう。警察署はそばにあるんでしょう、本署は」
証人=「いや、ちょっと離れておるんです」
裁判長=「離れておる、それならいいです」
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福地弁護人=「じゃ、この図面をちょっと説明して下さい。石川君を調べた調書(原文ママ。調室の誤りか)というのはこの立机、座机と書いてあるこの部屋ですね」
証人=「はい」
福地弁護人=「石川君が入っておった留置場はどこですか、この留置場と書いてあるところですか」
証人=「そうです」
福地弁護人=「この留置場と書いてあるところに部屋はいくつあったか覚えてますか」
証人=「今、確たるところ忘れました」
福地弁護人=「石川君はたとえば、その図面の右端の部屋にいたとか、左端の部屋にいたとか真ん中あたりの部屋にいたとか、そういう記憶はありませんか」
証人=「あそこの留置場はいくつあったんですか、今思い出しました。こっちに出口がついておると思いました。こっちから入っていって、こっちを向いて戸があると思いました」
福地弁護人=「渡り廊下と書いてある方を向いて」
証人=「ここが留置場ですね、こっちを向いて」
福地弁護人=「渡り廊下の方に向いて留置場の出口があったと」
証人=「という風に覚えております」
福地弁護人=「それから、弁護士が接見に来たときに石川君と会っておった部屋、どの部屋だったか覚えていますか」
証人=「それですから、今、裁判長に後から申し上げました通り、この部屋がいくつあったんだか度忘れしたので、弁護士さんの接見室があったんだから、もっと数が多かったんだと今感じております」
福地弁護人=「小使室と、さっき言った石川君を取調べた取調室との間に、あなたの図面では二つ部屋がありますね」
証人=「はい」
福地弁護人=「その二つのいずれかで接見していたんじゃないですか」
証人=「接見は別なんですから、そうすると、いま一つ部屋があったんだと思います」
福地弁護人=「そこで話をもとに戻しますけれども、あなたは石川君を取調べるにあたっては、まず留置場から、その取調室まで連れて来るわけでしょう」
証人=「はい」
福地弁護人=「その図面の留置場のところから取調室まで石川君を連れて来るわけですね」
証人=「はい」
福地弁護人=「留置場の中に入るんですか、連れて来るときは」
証人=「看守がいますから、看守が出して留置場の中には入ります」
福地弁護人=「入るんですか、一応」
証人=「はい、入ってます」
福地弁護人=「そして石川君を取調室に連れて行って取調官に引き渡すわけですね」
証人=「はい」
福地弁護人=「あなたはそれからどうするんですか」
証人=「外へ出ています」
福地弁護人=「外というと、具体的にはどこですか。あなたはどこかへ行っちゃうんですか」
証人=「こちらに部屋があると思うんです」
福地弁護人=「こっちというのは」
証人=「この廊下のこの辺に部屋があったと思うんです」
福地弁護人=「廊下という字が書いてあるその左上の方ですね、図面に向かって左上に」
証人=「はい、ここに部屋があったと思います」
福地弁護人=「それは何の部屋ですか」
証人=「これは大体何の部屋といって別に、まあ、私達が休むところなんですが」
福地弁護人=「そうすると、石川君を連れて行った後は、その休む部屋にあなたはずっといるわけですか」
証人=「別に、まるきり休んでいるというわけではないんですが、細かいことは忘れましたが」
福地弁護人=「その取調室の中に入っていることもあるわけでしょう、石川君を調べている部屋の中に」
証人=「私が入るのは、お茶を持って行ったり、石川君を連れて行ったり連れ戻すとき、食事を運ぶとき等ですね」
福地弁護人=「前回の証言だと、たとえば紙が必要になったり、そういったときにあなたはそれを取りに行くの(原文ママ)、そういう役目も果たしていたと、そういう風に言ってましたね」
証人=「はい」
福地弁護人=「川越時代にはそういうことをやっていたんですか」
証人=「川越時代も呼ばれればやりました」
福地弁護人=「呼びに来るわけですね」
証人=「いや、ここで言えば大体聞こえるんです」
福地弁護人=「聞こえるぐらいの距離なんですか」
証人=「はい」
(続く)