【公判調書3009丁〜】
「第五十六回公判調書(供述)」
証人=遠藤 三(かつ)・七十歳
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松本弁護人=「(次に同、三十八年六月二十四日付警察官調書添付図面の内二〇七五丁を示す)それ時計を捨てた場所について本人が書いたものですね」
証人=「はい」
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裁判長=「最前その点について尋問がありましたね、証人はそれを六月二十九日と読むと言ったんですが、すぐ前のページにある図面と合わせて見せて下さい、比較した上で答えさしてほしいんです」
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松本弁護人=「(図、二〇七四丁の図面も示す)これは何の図面ですか」
証人=「石川君がいわゆる、とった時計の型を書いたんでしょう」
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裁判長=「それは図面に日付が両方とも書いてある、その一番目の日付を読まして下さい」
証人=「これがねぇ、なかなか書き方が上手に書いてあるから、四とも読まれるような字になっているんですよ、これは」
裁判長=「前の字は何て読むんですか」
証人=「四です」
裁判長=「後の字は九と言ったんですか」
証人=「九のような格好になっているんで二十九と申し上げました、比べて見ますと二十四と二十九とは大体まあ・・・・・・」
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松本弁護人=「(前同、一九九九丁の図面を示す)先ほど見ていただいた図面ですけれども、この下のところに『やまがこを』と書いてますね。これは山学校のことですか」
証人=「山学校でしょう、と思います」
松本弁護人=「(同、二〇〇三丁の図面を示す)これの下の部分には『やまかこを』という風に書いてますね」
証人=「そうですね」
松本弁護人=「それからその左斜上に『がこを』と書いてますね。これは学校のことですね」
証人=「そうじゃないかと思うんですが」
松本弁護人=「『つ』が抜けてますね」
証人=「抜けてますね」
松本弁護人=「(同二〇一二丁の図面を示す)この左下の方に『なかださんにじてんしゃとてがみをもてけくときにあッたじどをしゃ』と書いてます。『け』とも『ゆ』とも見えますが」
証人=「ありますね」
松本弁護人=「(同、二〇六〇丁の図面を示す)左上の所ですけれども、『30ふんくらいまてエたところ』、待ってという意味だと思うんですが、と書いてますね」
証人=「はい、そうです」
松本弁護人=「その下真ん中あたりに『まてたところ』と書いてますね」
証人=「はい」
松本弁護人=「それで伺うんですけれども、何か本人は、普通は"がっこう"、" まっていた"という風に普通は教育を受けておれば発音を入れて書くんですが、そういうものを本人は書かん癖があるんですか。書けないというかそういう癖を、別に注意はしなかったんですか、ごく自然に書かしたんですか」
証人=「こっちからこう書けとか、ああ書けとかいう話はしませんから、自然に、そういう癖があるかないか分かりませんが、書いたんです」
(続く)