アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 970

(写真は白手袋が眩しい狭山の黒い猫)

【公判調書3036丁〜】

              「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                            *

石田弁護人=「(当審記録第十六冊二.七二六丁乃至二.七二九丁、諏訪部正司作成の昭和三十八年六月一日付被告人の供述調書を示す)この供述調書は、あなたが録取されたようですが、これはどうなんでしょうか。東島明君を逮捕する資料というような感じがするんですが、そうでないですか」

証人=「その点は記憶がありません」

石田弁護人=「それを見て、ちょっと記憶を呼び戻してもらいたいんですがね。どういう目的でお取りになった調書か」

証人=「これは、そうでしょうね、東島だとか、石田をとるというか、参考人調書で取ってありますからね」

石田弁護人=「被疑者調書ではないですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「ついでに伺うんですが、その中に石田義男という人の名前も出てくるんですがね、石田義男という人も逮捕してるんでしょうか」

証人=「この調べは、事実私がやっておりますが、その後の逮捕、取調べについては、相当数の捜査員がおりましたので、その点は、それぞれ私、直に調べたりしたことはありません。従いまして私は、これを取った以後につきましては狭山署におりまして、石田関係の窃盗ですか、と思われるその件につきましては直接調べをやっておりません」

石田弁護人=「お伺いしたいのは、石田義男という人を、やはりその頃逮捕したかどうか。あなた自身であっても、あるいは別の警察官であってもね、捜査本部の指示で石田義男君を逮捕してるかどうか、その点について記憶があれば述べてもらいたい」

証人=「記憶は、まあ、石田というのは多分二人くらいいるんじゃないかと思うんですが、その点現在のところ記憶ございません」

石田弁護人=「石田一義という人と石田義男という人、二人逮捕したんでしょうか。それとも一人だけだったんでしょうか」

証人=「石田という人は、一人は逮捕したかと思いますが、いずれにしてもその事件については、私ども詳細は存じません」

石田弁護人=「記憶がないというんですか」

証人=「その通りです」

石田弁護人=「狭山署ですからね管轄は。捜査本部がやられたことでもあなたが知らない筈はないわけですからお伺いしているわけですがね」

証人=「特捜本部の性格は、刑事課長が掌握してないこともあります」

石田弁護人=「でも、人を逮捕するとか釈放するとかいうことはご存じな筈ですね、本来ならば。だから忘れたと言うと仕様がないのかも知れないけれども、知らないわけはないと思うんですよ」

証人=「もうその当時の記憶が薄らいでおります」

石田弁護人=「ところで、東島明、あるいは石田一義さん、あるいは石田義男さんも含めているのかも知れないのだけど、弁護人がその人たちにもお付きになりましたね」

証人=「狭山署には留置はしておりません」

石田弁護人=「留置場所を聞いているのではなくて、その人たちにも弁護士が付いたことをご存じだったですね」

証人=「ございません、知らないです」

石田弁護人=「だって、新聞にまでいろいろ報道されておったですよ、当時。それをあなたは知らないわけないんですがね」

証人=「知りません」

石田弁護人=「東島、石田らに弁護人が付いていたかどうか知らないと、こういうわけですか」

証人=「はい」

石田弁護人=「当時も知らなかったと思いますか」

証人=「当時も恐らく知ってはおりません」

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裁判長=「弁護人、どういう弁護人が付いていたか、名前を仰って記憶を喚起させたらどうですか」

                                            *

石田弁護人=「それでは、新聞報道にあらわれた限度の弁護人を言いますと、松永東先生という弁護士さん、確か浦和におられたと思うんですが、その弁護士さんが付いたという新聞報道があったんですが、それは思い出せませんか」

証人=「その当時の事件状況からしまして、その種の新聞を丹念に見ているようなことはやっておりません」

石田弁護人=「普通の新聞記事とか何とかいうんじゃなくて、本来狭山事件の捜査に深く関連する逮捕であり、取調べであるわけなんですが、しかもあなたの狭山署の管轄の中に住んでおる人が逮捕されてるわけなんだが、知らない筈はないんですがね」

証人=「何人、逮捕したかということは、逮捕したことは承知しております。しかしながらその後のことにつきましては存じませんです」

石田弁護人=「だからね、ご存じないということは、私、それは非常に不自然極まりないと思うものですから、当時は知っているのかということで、現在忘れているのかと聞けば、当時からあなたは、知らなかったということですか」

証人=「もう一度・・・・・・」

石田弁護人=「当時、本来あなたは当然知っている筈のことだと私は考えるのですが、東島明、石田一義などの弁護人に誰が付いたかということ、それをあなたは知らないと仰るんですがね、それは今記憶を忘れて知らないのでしょうか。当時も、そんな事はおれの関係したことではないと仰るのですか」

証人=「やはり、先ほど言った通りです。と言うのは捜査本部に当時、相当数の私と同じ警部がおりました。従いまして、それぞれが担当しますと、その上の上司、特捜本部長、あるいは副本部長、長谷部警視等がいるわけです」

石田弁護人=「いることは分かりますがね」

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裁判長=「ちょっと言わしてごらんなさい、上司がたくさんおると、それで」

証人=「同僚もおります、同列の者もいます。従ってその人たちが取調べを担当しておるということにつきましては、これが捜査会議において話の出る程度で、詳細につきましては分からないわけです」

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石田弁護人=「詳細について、私は聞いているんじゃなくて、捜査会議などでも当然一つの話題になると思うんですが、東島、石田君にはどういう弁護士が、どこの弁護士が付いたというか、そういう簡単なことを聞いているんですがね」

証人=「署内組織によりまして、よその署へ留置をしている場合には、そこの署の刑事課長なり係長が接見、弁護人の選任等は責任を持ってる組織でございます」

石田弁護人=「あなたも捜査本部の一員だったわけでしょう」

証人=「その通りです」

石田弁護人=「捜査本部の、先ほど言われたように捜査会議等があったわけでしょう、あなたも捜査会議には出られてるわけでしょう」

証人=「出ております」

石田弁護人=「東島明、石田一義等の弁護人に誰が付いたか、あるいは弁護人が付いたかどうかということは、当然ご存じの筈だと思うのですがね」

証人=「記憶がありません」

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裁判長=「それは、付いたかどうか、それから自分の当時の職責から言って、そういう弁護人が付けば当然分かったであろうと思うけれども、今となっては付いたか付かないか、ということの記憶もないと、こういう趣旨なのか、そこを聞いてるんです、弁護人は」

証人=「その通りです」

裁判長=「二段に弁護人は聞いてる、当時は自分の職責から言って分かっていただろうと思われるが、しかしそのことの記憶もない、という風に言うのか、それとも、もうそんな事は、自分は他署でやったことだから知るわけがないんだという趣旨なのかと聞いているんです」

証人=「そうしますと、その当時か現在かということなんですか」

裁判長=「今から考えてみて、自分の職責から言うと当時としてはそのくらいのことを知っていると思うが、今としてはその記憶もないという答えなのか、当時としてもそんなことは知らないことはあり得ると、他署で責任持ってることだからという趣旨なのかという、二つの問いをしているんです、弁護人は」

証人=「裁判長が前に仰られたことのように私記憶します」

裁判長=「もういっぺん言ってごらんなさい」

証人=「職制から当然分かるべきだと思っておりますけれども、現在、日が経過しておりますのではっきり記憶がないということです」

裁判長=「そういう答えに一応聞いておいて下さい」

(続く)

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冒頭の写真に写る猫を、もし夜中に目撃した場合どう見えるか、という疑問が湧き、早速写真を加工してみた。

なんかいいかも。