アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 699

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2199丁〜】

                 「第四十四回公判調書(供述)」⑥

証人=清水利一(五十六歳・会社員)

                                          *

石田弁護人=「私が聞いているのは、一般的な煙草のあれではなくて唾液検査のために吸わせたことがあるかないかということなんです。わからないんですか、それはあなた記憶がないんですか」

証人=「その点記憶がないんでございます。思い出せないということです」

石田弁護人=「ですからね、ずいぶんひどいもんだと思いますが、じゃあ、ついでにもう一つ石川君の取調べの際にポリグラフというものを使用したことがありますか」

証人=「あったように覚えております」

石田弁護人=「あなたが見ている席でポリグラフを使用したのですか」

証人=「ポリグラフは鑑識の係しか立会いませんから側におりません」

石田弁護人=「ポリグラフを一回しか使わなかったか、二回使ったか、その辺の記憶はどうですか」

証人=「私は一回ははっきり覚えております」

石田弁護人=「五月のうちにまず使ってますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「あなたは、調書の記載から見ますと五月二十四日から六月十二日に至るまで、殆どの日、石川君を狭山署で取調べておるようですが、狭山署では殆どあなたが取調べに毎日当っていたというこは覚えておりますか」

証人=「調書はみんな私が取りましたけれども、全部取調べたということでなくて、他に当った人もあったと思うんですが、調書は私が書きました」

石田弁護人=「あなたは狭山署で石川一雄君にどんなことを主に尋ねましたか。どんな点を取調べようとしていたわけですか。主な点だけでいいです」

証人=「一番初め、調べの時ですけれども、要するに恐喝未遂の状況で・・・・・・」

石田弁護人=「被疑事実の関係はいいからあなたは主に、何を尋ねたか、実際に言ってもらえばいいです」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「あまり難しく考えないで、実際何を聞いたか、それを聞いているんです」

証人=「恐喝未遂に関連するということは・・・・・・」

石田弁護人=「まず一雄君の五月一日から二日にかけての行動をかなり聞いたことがありますね」

証人=「足取りですね、要するに」

石田弁護人=「ええ」

証人=「あります」

石田弁護人=「それから中田栄作方に投げ込まれていた手紙、脅迫状についてもかなり尋ねた記憶がありますね」

証人=「あります」

石田弁護人=「それから地下足袋の関係についてもかなり尋ねておりますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それから東島明さんという、のちに六月上旬に逮捕された人と石川君との関係をかなり聞いていますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それから、オートバイの月賦代金のこととか、女性の関係とか、そういうことも尋ねていますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その中で東島君との関連のことについてお尋ねしますが、あなたは東島明氏を狭山事件捜査として取調べたことはありませんか」

証人=「・・・・・・」

石田弁護人=「石川君が石田豚屋にいた頃、友達であったという東島明という人」

証人=「調べたかも知れないですけれども、はっきり・・・・・・」

石田弁護人=「記憶がない」

証人=「はい」

石田弁護人=「(当審記録十六冊二、七四九丁昭和三十八年六月十日付証人に対する被告人の供述調書を示す)その四項と五項に東島明、或いは東島ということで名前が登場するんですが、それは記憶がありますか」

証人=「古いことで」

石田弁護人=「覚えておられるんじゃないですか、東島明という人ぐらい」

証人=「先生からご指摘されると無理もないんですが、私も八年も経っていて、その後事件をいろいろやっているものですから、そういちいち覚えておられないんです。捜査本部も捜査一課だけにその後二十何回設けてますから」

石田弁護人=「六月十日にあなたが一雄君から取った供述調書の五項以下にいろいろ書いてあるわけなんでその八項というのを見ますと、『この時本職は昭和三十八年五月十八日司法警察員清水輝雄に所沢市大字下富○○番地農業野村スイ四十三才が任意提出した、石川一夫、東島明の自書に係る紙一枚を被疑者に示した』という記載がありまして、それで石川君の供述がその前後にあるわけですがね、そういうことも覚えていませんか」

証人=「思い出しません」

石田弁護人=「そこまで忘れてしまうと大変聞きにくいんですけれどもね、石田豚屋というのは覚えていますか」

証人=「知っております」

石田弁護人=「石川君の取調べの中で、何か筆跡のことについて、あなたは尋ねた記憶があるのですか」

証人=「あります」

石田弁護人=「その中で何か石川一雄、東島明の自書に係る紙片一枚を、というのは記憶にないんですか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「(同記録二、七五八丁表、第八項を示す)どうですか」

証人=「思い出しました」

石田弁護人=「すると、東島明という人も思い出しましたね」 

証人=「東島という人を今、思い出しました、清水輝雄さんという方は、当時部長さんだったと思いますが、その人が捜査過程において入手しておったそれを見せたことは間違いありません」

石田弁護人=「それを入手した経過についても、その調書の前の方に五項辺りから以下にずっといろいろ為すことが書いてあるんですが、今あなたがご覧になった部分との関連で、北田おさむという人の名前を思い出しませんか。或いは植木屋の奥富さんという人」

証人=「記憶にございませんです」

石田弁護人=「今ご覧になった同じ調書の四項に北田おさむという人が登場するんですがね」

証人=「狭山ですね」

石田弁護人=「その五項に豊岡の百姓屋というのが登場しますね、石川君と東島君がそこへ行ったという世話人ですね。この世話人が、当時のほかの捜査員の証言によりますと奥富という植木屋さんのようですがね、北田おさむさんの物置に住んでいると、あなたの調書に植木職の説明がありますがね、思い出しませんか」

証人=「東島さんというのは、柏原という字を見たんで狭山の東島さんという人を・・・・・・」

石田弁護人=「奥富という植木屋さんはどうなんですか。そのことを念頭に置いてあなたは取調べをしているはずですがね」

証人=「奥富植木屋さんというのはちょっと、書面では分かりますけれども、記憶はちょっと・・・」

石田弁護人=「北田おさむさんという人は堀兼なんですよね、あなたが記載された調書によりますとね。思い出しませんか、北田おさむも分かりませんか」

証人=「はい」

石田弁護人=「東島さんという人との関連で、石川君を調べたことがありますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その東島さんとの関連で石川君を調べる、或いは石川君との関連で東島君を調べる、そういうのは、全て捜査会議の決定に従って捜査がなされたわけですか」

証人=「ええ、捜査会議というのは、毎日開いていますから、捜査会議で明日はどういう風にしろということは全部そこで決まるわけでございます」

石田弁護人=「あなたもそれに従って自分の取調べを行なっていたと」

証人=「そうです。自分のやったことは全部報告し、指示を受けるというシステムになっておりますから」

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(続く)