アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 757

写真は、一九六三年五月二十三日早朝逮捕された石川一雄氏の姿。("無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

【公判調書2377丁〜】

                     「第四十七回公判調書(供述)」

証人=清水利一

                                            *

石田弁護人=「あなたは昭和三十五年から大宮署の捜査課長をしておられたんですね」

証人=「左様でございます」

石田弁護人=「当時も現在と同様に眼鏡をおかけになっておりましたか」

証人=「眼鏡はかけておりました」

石田弁護人=「狭山署で、現在この法廷で被告席にいる石川一雄くんを取調べた際も眼鏡をかけていましたか」

証人=「かけておりました」

石田弁護人=「取調べの際、あなた単独で取調べたのではなく、他の捜査官と一緒に石川被告を取調べたわけですね」

証人=「左様です」

石田弁護人=「どんな方とご一緒でしたか」

証人=「私が調べた時は、替わった場合もございますが、遠藤警部補とか諏訪部警部も同席した場合もありますし、その他、名前をいちいち覚えてはおりませんが、大概一人二人ぐらい私と一緒に調べておると思います」

石田弁護人=「長谷部さんもその一人ですか」

証人=「左様でございます」

石田弁護人=「あなたはその同僚の警察官などから、当時、大宮の主任さんという呼ばれ方もしていましたね」

証人=「大宮の主任さんということは、どうだったか、覚えておりませんが、大宮からも大勢来ておりましたからあるいはほかの方かも知れませんが」

石田弁護人=「そういう風に呼ばれた記憶あるんじゃないですか」

証人=「大宮の主任さんという記憶は、どうですか、ちょっと・・・」

石田弁護人=「狭山署で、ほとんど毎日のように石川くんを取調べておられたようですが、勾留満期の近くになって、一日取調べをやめられた日がございますね」

証人=「あったかも知れません」

石田弁護人=「あったかも知れないというのは、あったような気がするということですか」

証人=「私でない諏訪部警部が代わって調べた日もございます。長谷部警視が直接お調べになったこともあります」

石田弁護人=「私がお伺いしているのは、勾留満期の近くになって、その、あなたとか諏訪部さんとか、あるいは長谷部さんとか、そういう人が調べをしなかった日があったのではないですか、と聞いているんです」

証人=「はっきり覚えておりません」

石田弁護人=「狭山署で石川被告を調べる際、石川被告に対して手錠を外さなかったですね」

証人=「手錠をかけて調べたことが多いと思っております。あるいは外したことがあったかもわかりません」

石田弁護人=「あなたの記憶としてはどうですか。外したという記憶はないでしょうか」

証人=「外したこともあります」

石田弁護人=「外したこともないわけではないが、ほとんど手錠はかけていたという風に聞いていいですか」

証人=「全部かけてたということもないでしょうし」

石田弁護人=「だから、ほとんどという風に」

証人=「ほとんどでもないです。お茶も飲みますから、全部かけっ放しということもないと思います」

石田弁護人=「煙草を吸わしておった際は外したかも知れないが、それ以外はかけていたわけでしょう」

証人=「・・・・・・・・・」

                                             *

山梨検事=「今のは答があったのですか」

証人=「手錠をかけておったこともあるし、かけてないこともあるし、全部どうだと言われても困るんですが」

                                             *

裁判長=「ちょっと、調べる回数を全部と言ってるのか、手錠を手から全部外しちゃうという意味で言っているのか、その点」

証人=「全部外して調べたこともございます」

裁判長=「そういう意味で全部と言ったんだね」

証人=「そうです」

                                             *

石田弁護人=「手錠を、あなたが今言われた全部外すというのは具体的にはどういう機会だったんですか」

証人=「両方を外す場合ですね」

石田弁護人=「どういう機会ですか」

証人=「私は調べをする時は、自分もお茶が好きですから、被疑者にもほとんど飲ませます。大概飲ませますからそういう時は外します」

石田弁護人=「お茶を飲ます時ね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それから煙草を吸わした時もあったのですか」

証人=「あると思います」

石田弁護人=「その時はどうだったですか」

証人=「もちろん外します」

石田弁護人=「そういう時に外したと聞いていいわけですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「あなたは被告に対して、たとえばあなたが五月四日付でお取りになった調書、これは五月一日あるいは二日の行動を聞いてそれを録取してる。五月二十九日にあなたが取った調書は脅迫状について、それを全然知らない、脅迫状は書いたことがないという石川被告の供述記載がある。六月二十六日(  五月か?)の調書は死体発見当日見物に行ったことなどが書き留められていて、五月二十七日には地下足袋に関する供述記載がある。五月二十八日には五十子米屋などの記載がある。六月二日付の一通は、被害者中田善枝を知らないということと、それから脅迫状を知らないという内容などが書いてある。六月七日にあなたが取られた調書の一通には新聞紙、それから地下足袋、そういうようなことについて述べてある。六月九日の二通の調書のうち一通は手紙、脅迫状の関係、あるいは女性の関係、東島明との関係、それから五月二日晩の行動、もう一通は、その石川くんの女性関係について尋ねた跡がその記載から窺える。それから、六月十日のあなたが取った調書には、北田おさむさんとか奥富という植木屋さんのこと。所沢の農家で東島くんと共に自分の名前を書いたというようなことなどを尋ねておる六月十二日の署名押印のない調書、という風なのが現在法廷に出されているあなたが取った調書の主なものなんですがね、そういう調書を見てくると、ほとんど善枝さん事件の取調べをあなたが担当されていたようですが、つまり窃盗とか詐欺とかいう関係より善枝さん事件についてあなたはほとんど石川くんを調べていたようなんだが、その辺は他の捜査官と、お前はどういう事項を捜査するという分担が上司の命などによってあったんじゃないかと思われるのですが、どうですか」

証人=「これは逮捕状の事実にあったように、恐喝未遂の事犯ということで、これは、関連するのは結局あの事件全部関連してくるんですから、そういう点についても多分私がそういう先生のお話のような調べをしたと思いますが、もちろん調べについては、私一人の個人の考えでやるわけでもなし、毎日の捜査、あるいは被告の身辺捜査いろいろの状況を勘案して調べると思います」

石田弁護人=「あなたが善枝さん事件の取調べをするという風に分担するのではなかったですか」

証人=「いや、分担ということではないんですが、それは私だけじゃなく、もちろん調べに行く人、一緒にみんな、私が当時階級が警部だったという関係で警部補の人は、その職務柄は下ということですが、やはり調べを私一人だけでするわけではなく、立会の人も来ますから、ただ調書取るのは私が取るということになるわけです」

石田弁護人=「諏訪部さんとか、そういう人の録取したものなどは逮捕状に被疑事実そのものについての供述の録取ですが、あなたのは逆に善枝さん事件のがほとんどのようですが、何かそういう担当があったかどうか思い出せませんか。主たる取調べ対象、自分はこういう事項を取調べるという意味での分担ですね」

証人=「もちろん、取調べの捜査という一つの取調べということにつきましては、直接全部の事件を私が指揮するわけでなく、もちろん上司の命令がありますし、どうこうということじゃないですが捜査会議において、毎日捜査の終わったあと捜査会議がございますが、そこで今日の取調べ状況がこういうことだったということは報告致します」

(続く)