アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 758

【公判調書2381丁〜】

                    「第四十七回公判調書(供述)」

証人=清水利一

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石田弁護人=「あなたが狭山署で取調べをしておられた頃は毎日捜査会議が開かれていたわけですね」

証人=「ええ、捜査会議はほとんど毎日、夜引き揚げてから捜査本部でやります」

石田弁護人=「捜査会議は狭山署で行なわれたわけですか」

証人=「捜査会議は堀兼の支所でございます。あそこが捜査本部になっておりました。駐在所の前の堀兼の旧村役場でございます。あそこの片方が新聞報道陣の基地であり、片方が捜査本部ということです」

石田弁護人=「その捜査会議というのは、捜査官と捜査本部のいわば幹部が出席して開かれていたわけですか」

証人=「ええ、まあ、大体捜査会議というのは警部補以上の者が集まります。あるいは巡査部長が入りますが、大体」

石田弁護人=「報告は巡査部長なら巡査部長が受持っている、特殊な事柄に関係する場合出させるということですか」

証人=「そういうことです」

石田弁護人=「あなたはその捜査会議にいつ頃まで出られていましたか、最後まで出ていましたか」

証人=「捜査会議に出たのは川越へ身柄が、再逮捕されて行ってからは向こうの取調べ状況についての捜査会議にはあまり出なかったです」

石田弁護人=「あまり出なかった・・・・・・」

証人=「あとはこっちの大勢の捜査員がおったものですから、捜査本部において大勢の取調班以外の、川越署で取調べする班は取調班と言っておりましたが、それ以外の班については毎日取調会議をやりましたけれども、川越署の取調班と一緒の捜査会議は一、二回出たことがありますが、川越署へ行ったこともありますが、それくらいです」

石田弁護人=「あなたが取調班の捜査会議に出られた最後の時期というのはいつ頃になりますか」

証人=「捜査会議と言いますと川越へ被告の身柄が移ってからですか、その前ですか」 

石田弁護人=「川越へ身柄が移るまでは取調班の捜査会議というものにもあなたは出られておったんですね」

証人=「むろん、その時は毎日、狭山署はただ取調べの場所に使っただけでございますから、あと、捜査会議は全部堀兼の支所に来て、引き揚げてからの捜査会議ですから」

石田弁護人=「勾留満期の日ごろも当然捜査会議は頻繁に持たれていたんじゃないかと思うんですが、当時記憶はございますね、勾留満期の日などの」

証人=「勾留満期の時ですね、ございます。ということは、再逮捕後の身柄をどうするかという問題が出ますから、で、狭山署の取調室というのは環境がよくない。ということは、あそこの警察はほとんど平屋、二階もありますが、二階は準備室になっておりますので、取調べ捜査には使いませんので下を使っておったのですが、窓側は新聞報道陣がガラス越しに控えている、いわば新聞報道陣の前で取調べをしておった、ガラス越しに新聞記者が聞いておったというようなことで、ほとんど、新聞記者が、いくら縄張りをしても縄張りの中に全部入ってしまう、全部逐一新聞記者に状況が察知される、あるいは顔も見られてしまうということで、まずいと、どこか他に適当な場所はないかということで川越の警察の分室ですね、もと国家警察が使っていた建物が空いておりました。それが一部使ってましたので留置場もそのまま使えるし、取調室もいくつかあるということで、そういう捜査会議が開かれた時には出ておりました」

石田弁護人=「その恐喝未遂などの事件、善枝さん事件の起訴が出来るかどうかということで特に印象に残った議論はなかったですか」

証人=「まあ、はっきり申し上げますが、あの事件そのものずばりで当初逮捕状を取るか取らないかという問題もありましたし、いろいろ上司、それから捜査員で諮って、結局恐喝未遂、あるいは窃盗とか詐欺とかいう風に付けて逮捕状を取って調べるということで、身代金の要求ということで調べるということで一応確定したわけです」

石田弁護人=「それで捜査を続けて六月十三日勾留満期になるわけでしょう、その時に恐喝未遂については結局起訴されなかったわけだけど、起訴すべきだとか出来ないとか、そういういろんな意見があったんではないかと思われるものですから、その点はどうかと聞いているわけです」

証人=「もちろんそれは、あとの逮捕状のような本犯で逮捕状を取って調べをするということに決まりました」

石田弁護人=「結論は起訴出来ないことになってあなた方失望したんじゃないの、恐喝未遂が起訴されなかったということでね」

証人=「いや、別にそういうこともないと思いますが。捜査の段階ですから」

石田弁護人=「川越署分室に石川くんが行かれてからあなたは結局取調べにノータッチですね」

証人=「ええ、調べをしておりません」

石田弁護人=「何か、上司からやめろと言われたのですか」

証人=「いや、これはそういうことではなくて、いろいろ諮って青木警部が心機一転、主任になって取調べの方をやるほうがいいだろうということになったんです」

石田弁護人=「それは一つの結論で、それに至る一つの理由があったんじゃないですか」

証人=「別に理由は聞いておりません」

石田弁護人=「熊谷の二重犯人逮捕事件というのがあって、あなたはその取調べをやった関係で外されたんじゃないですか」

証人=「そういうことは直接聞きません。それは確かに熊谷の二重逮捕事件がありますが、そのために私が取調べを外されたということはないと思います。捜査一課でほかの仕事も、私はその後におけるこの事件とは関係がないが、この事件の調べ最中に起こった自動車運転手強盗殺人事件という飯能の事件も私が主任でやっております。そのほかにもありますが、そういうことはないと思いますがね」

石田弁護人=「長谷部さんは、どうもあなたがそういう関係があるので調べから遠慮してもらったという趣旨のことをこの法廷で述べてるんですがね、そういうことあったんじゃないですか」

証人=「そういう理由付けを私は上司から言われたこともないし、もちろん毎日お詰めになっていた次席検事さんからも、そういうあれを言われたこともないと覚えているんですが」

石田弁護人=「自分としては熊谷でのミスとは関係ないと思っていたと、こういう風に考えるわけですね」

証人=「そうです」

(続く)

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この写真は、石川被告が一旦保釈されながらすぐ再逮捕され、これに対し抗議する弁護士の姿を写したものである。右側は弁護士、左側は報道関係者と認識できるが、中央の、窓から傍観する人々は一体何者であろうか。

もしかすると、清水利一証人の狭山署での取調べ状況の証言は、この様な有様であったのかも知れない。