(写真は狭山事件裁判資料より)
【公判調書2383丁〜】
「第四十七回公判調書(供述)」
証人=清水利一
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石田弁護人=「ところであなたは参考人をもかなり取調べをしましたね」
証人=「参考人も、長い期間ですからやったでしょうね」
石田弁護人=「主として、記憶がある参考人というのは何かあると思うんですが、特に印象が強かったとか、あるいは記憶に残っている事項を尋ねている、そういう参考人取調べの印象はありませんか」
証人=「石田豚屋さんも調べたような記憶があるのですが、あの弟さんを調べた気がします」
石田弁護人=「弟さんというと石田義男さんですか」
証人=「ちょっと忘れました。いく人か調べたような気がします」
石田弁護人=「それ以外はどうでしょうか」
証人=「私が狭山事件で捜査にタッチして、この前もちょっと申し上げましたが、初から(原文ママ)私の担当分野というものは、大勢の捜査員が捜査をしてクローズアップされてきた容疑者を白に解明していくのが私の、いわば特捜本部の内の特捜班といったそれは私どもの班員の大きな役目です。大勢ブラックリストに上がったのを片っぱしから潰していくというのが、語弊がありますが、片っぱしからアリバイを解明して犯人ではないと消していくのが初めからの私どもの役割でございます」
石田弁護人=「その最高責任者はあなたという風に理解していいですか」
証人=「最高責任者は私と将田警視になったです」
石田弁護人=「消していく作業という意味だと、将田さんは他をかなり見ているでしょうから、あなただという趣旨になりますね」
証人=「はい」
石田弁護人=「あなたの、その消していく作業の直接の部下というか、主な部下というのはどんな人だったでしょうか」
証人=「私のところにおりましたのは、梅沢茂さんとか、それから石川警部補・・・」
石田弁護人=「それは県警本部に本務(注:1)の方ですか」
証人=「そうです。それから一線で各署から集まった刑事さんがほとんど多かったように覚えています。大宮署、川口、本庄、それから所沢というような各署から集まった刑事さん、デカ長さんクラスが大勢いたような気がします」
石田弁護人=「ブラックリストに上がった人たちを次々に消していく作業というのはいつ頃からいつ頃まであなたは担当されていまか」
証人=「捜査が始まってもうすぐいろいろ浮いて来ましたから、捜査が始まってその翌日あたりからそういう仕事を始めました。それから石川被告に逮捕状が出て逮捕するまでなお夜の捜査会議ではそれを担当してましたから」
石田弁護人=「すると、いわば捜査の初めから終わりまでとお伺いしていいですか」
証人=「そうです」
石田弁護人=「ずいぶん長い期間に渡るわけですね。あなたが先ほど言った石田豚屋というのも、そのブラックリストに上がった一人ということになるわけですか」
証人=「まあ、そういうことだったでしょう」
石田弁護人=「そこの石田豚屋の関係者というのもブラックリストにほとんど上げられたわけでしょう」
証人=「とにかく捜査ですから、いろいろ要するに、若い娘さんがああいう状況で被害にあったことになりますと、もちろん痴漢とか強姦の前歴のある者、あるいは物を盗っているから強盗、窃盗の前歴者、いろいろな者が浮いてくるわけです。それをいつまでも放っておくわけにいきませんし、つぼめなければなりませんから、誰かがつぼめてゆく仕事を、どの事件でもそうですが、つぼめないと絞りが効きませんから、そういう仕事、縁の下の力持ちの仕事はいつの捜査でも付き物です」
石田弁護人=「その捜査が最後まであったということになりますと、結局石川一雄くんを逮捕した時とか、そういう時には特別捜査本部長などはいろいろ新聞記者に発表しているけれども、結局どうも石川一雄くんが犯人じゃないかという見込みで逮捕されたということになりますね」
証人=「・・・・・・・・・・・・」
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山梨検事=「ちょっと、なりますねと尋ねられたんじゃ困るんです。答はないんですか」
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石田弁護人=「いや答がないんです。次に、いろんなブツの捜索などにあなたは携わったわけですか」
証人=「私は物の捜索はあまりないんです。ただ一点だけ、私はあの事件で物の捜索を上司から下命されたのを覚えています」
(続く)
(注:1= 二つ以上の任務がある人の、その中で本筋の役目)