アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 698

 

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2195丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」⑤

証人=清水利一(五十六歳・会社員)

                                          *

石田弁護人=「石川一雄君が捜査の対象として登場した時のことを聞いてるんですが、それは捜査上の何らかの出来事と関連をを持っているのではないかと思うんですがどうですか」

証人=「捜査が進められていきますと、ただいま先生からご指摘のように物的証拠とか、いろいろありますから、だんだん絞られていくことは否めないと思います。あの事件もそうだったと思います」

石田弁護人=「いつ頃石川一雄君が捜査の対象に上ったかということをお伺いしてるんです」

証人=「対象に上ったのは、先ほども私が申上げた通りしばらく時日があったと思ってるんです」

石田弁護人=「それじゃあなたは今、分からないということですか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「しばらくと仰られてもね」

証人=「少なくとも逮捕状を請求する幾日か前だと思っております」

石田弁護人=「あなたの記憶によれば逮捕状を請求する幾日か前、石川君が捜査対象者のリストの中に上ってきたということですが、その時点では容疑者といいますか、捜査対象者は何名ぐらい残っておったのですか」

証人=「何名とお尋ねされてもはっきりとは分かりません」

石田弁護人=「石川君以外にも捜査対象者はおったわけですか」

証人=「そうですね、石川君以外にもおったので、私ども随分しらみつぶしにやりました」

石田弁護人=「それはおよそ何名ぐらいだったか分かりませんか」

証人=「ごく少なかったんじゃなかろうかと思います」

石田弁護人=「ところで五月二十三日に石川君を逮捕した、それに至る直接のきっかけですね。それはどういうものだったか覚えておりますか」

証人=「端的に申上げますと、私が知っているのでは筆跡の件が一つ。これは群馬県警か埼玉県警か、ちょっと忘れましたけれども、筆跡が入手されて、その筆跡が被告人の筆跡と一致するという鑑定があったこと。それから血液型が、何か、ちょっとあれですが、そういうことと、それからまだ何か物についてあったように・・・・・・。血液型、筆跡という点はうろ覚えに覚えております」

石田弁護人=「ところで筆跡の鑑定だなんて言うのは、まだ出来ていなかったんじゃないですか」

証人=「鑑定書というのは遅れますけれども、一応こういうものであるという、・・・・・・正式の鑑定書はいつも遅れるんでございますけれども、その前に前もって通報があるわけであります」

石田弁護人=「あなたの方で石川君の筆跡鑑定をする然るべき機関に依頼されたのはいつ頃と覚えていますか」

証人=「筆跡鑑定というのは、これは捜査本部にも鑑識課が全部行っておりますから、この方々がやられるのでそういう手続一切は捜査の方で・・・・・・」

石田弁護人=「あなたの方は捜査でしょう。鑑定の人に捜査の方から依頼するわけでしょう」

証人=「そうです」

石田弁護人=「それはいつ頃だったですか、筆跡は」

証人=「それも逮捕状の請求される、そうえらい間がなかったように覚えておりますけれども」

石田弁護人=「大体、逮捕状をあなた方が請求された前日に、石川君に上申書を書かせているんじゃありませんか」

証人=「その記憶ちょっと幾日だったか覚えがございませんけれども」

石田弁護人=「逮捕状を請求されてるのが五月二十二日、石川一雄君に上申書を書かせたのが五月二十一日のようなんですがね。そこで筆跡鑑定の結果うんぬんというのはどうしても理解出来ないんですけれども、まあそれはそれで、次に血液型ですがこれは逮捕状請求の時点でわかっておったわけですね、あなたのお話ですと」

証人=「そういう風に記憶しているんですが」

石田弁護人=「いつ頃石川君の血液型がわかったのですか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「わかりませんか」

証人=「ええ、忘れたです」

石田弁護人=「じゃ、血液型が石川君逮捕の材料であったかどうかという点はわからないという風にお伺いしていいわけですね」

証人=「まあ、記憶なんで古いことですから確かその逮捕状の段階で、捜査会議があってそのとき確か血液型がうんぬんというようなこともあったように覚えているんですけれども」

石田弁護人=「それに関連して、ついでにお伺いしますが、石川君が逮捕されて間もなく、あなたは狭山署で石川君の取調べをされていますね」

証人=「やりました」

石田弁護人=「その際、石川君に煙草を吸わしたことがありましたか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「唾液による血液検査をするために煙草を吸わせたことがありませんか」

証人=「私も煙草は一日に、今でも十五本ぐらい吸いますし、その時分も大体十本か十五本ぐらい吸ったんで・・・・・・」

石田弁護人=「あなたが吸ったんじゃなくて、石川君に煙草を吸わせて、その吸い殻を唾液検査して血液型を判定するために石川君にあなたは煙草を吸わせたことはないんですか」

証人=「・・・・・・」

石田弁護人=「わかりませんか」

証人=「思い当たらないです」

                                          *

裁判長=「質問はわかっているんでしょうね。五月の二十三日に石川を逮捕した、そののちにあなたは調べたことはあるその調べたのが、五月の二十何日であるかということは分かっているのですか。直後であるか或いは、あとであるかということは」

証人=「調書を取ってますから、その頃の調書に」

裁判長=「調書のことは別として、あなたの記憶を聞いてるわけです。さっき、五月二十三日に逮捕になってから、本人を調べたことがあると、だから弁護人が聞かれてるんですが、それは第一に五月二十三日の直ぐあとのような気がするのか、もう少し間があるような気がするのか、それを聞いてから、今、弁護人が聞かれた、その際に被告人に煙草を吸わして唾液によって、血液型を検査するという手段を講じたことがあるか、これも、弁護人はそこまで言われていないが、初めから唾液の検査をする目的で煙草を吸わせたという場合と、そうじゃない、煙草は被疑者に吸わせたと、吸わせて吸い殻があったから、それを持って来て調べたと、いろんな場合があると思うんです。これは弁護人が言われてないけれども、結局はそういうところの詮索になるんじゃないかと思うんですが、そういうことを覚えているかどうか」

証人=「・・・・・・・・・」

                                          * 

石田弁護人=「覚えていますか」

証人=「まあこれは推測になりまして・・・・・・」

                                          *

裁判長=「推測になっちゃいけないんです」

証人=「たとえば私が調べてて、私が煙草をくれたとして、立会の人がそういう風なことをした場合は、私にわからない場合もあります」

                                          *

石田弁護人=「それは自分がやったのか、一緒の調べ官がやったのか、その辺はわからなければわからないでいいんですがね、あなたなりにあなたと同席していた取調官が煙草を吸わせたかどうか、全然覚えがないのですか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「いくら記憶が薄らいでも、普通の事件のあれとは違うから記憶はかなりいいんじゃないかと思うんですが」

証人=「煙草をはっきり吸わせたという覚えが今ではありませんが、私どもの例としては相対すれば煙草を吸わんかと大概言っておりますが」

石田弁護人=「もう一度繰り返しをしますが、唾液検査をするために煙草を吸わせたことはないんですか」

証人=「私、故意にやらせたことはないと思います」

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裁判長=「被疑者を調べてる時に被疑者にも煙草を吸わせてやると、あなたが吸うだけじゃなく、煙草を吸わせてやることは絶対ないということは言えないんでしょう」

証人=「言えません」

裁判長=「吸わすこともありますね、で、この石川に、あなたが取調べている時に煙草を吸わせたことはないとは言えないね」

証人=「ないとは言えません」

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(続く)