アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 697

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2192丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」④

証人=清水利一(五十六歳・会社員)

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石田弁護人=「あなたは捜査の幹部として、いろいろな指揮をなさったり証拠資料の検討をなさっておったようですが、結論からお伺いしますと、最初捜査本部でいわば捜査の対象とした人はどれくらいの数に上っていたでしょうか」

証人=「ああいう大きな事件になりますと、いろいろ投書がありましたし密告もありましたし、聞込みをやりまして捜査していく段階では、犯人が誰だというのでなくして広く、要するに土地の、そういうことを申上げていいか悪いか分かりませんが、ちんぴらであるとか、或いは前科のある人であるとか、或いは最近家出をしたとか、あらゆる、そういう、ましてあの場合、女が被害者であったから犯人が女であることは考えられない、一応男ということで広く捜査していったように覚えております。相当の人数に対して捜査をやったと思います」

石田弁護人=「その相当な人数というのはおよそで結構ですが、正確ならなお結構ですが、大体どれくらいですか」

証人=「記録にあるんですけれども、私も・・・・・・」

石田弁護人=「今わかりませんか」

証人=「はっきり何名ということはちょっと申上げかねるんですが、とにかく私の手元でもずいぶんそういったようなのを、この人はアリバイがあるから関係ないとか、この人は出張先がはっきりしているからいいとか、そのときこれは旅行しておったとかいうようにずいぶん洗っていったように覚えていますから、相当な人員だと思います」

石田弁護人=「その相当な人員の数を記録した書類というのはどういう書類ですか」

証人=「それは、やはり報告に出てきたあれですから」

石田弁護人=「捜査報告ですか」

証人=「そうですね。中には口頭報告もございますから」

石田弁護人=「大体は文書報告なんでしょう、警察官は」

証人=「文書報告が多いですね」

石田弁護人=「百人は越しておったでしょうか、或いは百人という数じゃなくもっと大勢でしょうか」

証人=「申し訳ないですけれども、人員のことだけはちょっと記憶がないです」

石田弁護人=「結局五月二十三日、石川一雄君が逮捕されたわけですが、逮捕状が五月の二十二日に出されておるわけですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「だから五月二十二日に逮捕状が警察から請求されているわけですが、その大勢の捜査対象の中から石川一雄被告だけに絞った絞り方というのをちょっとお伺いしたいのですが、石川被告は、いつ頃から捜査対象の中に含まれるようになったんでしょうか」

証人=「私が捜査本部へ行って、その当時じゃないかと思います。しばらく経ってからじゃないかと思います」

石田弁護人=「捜査上の、何かの出来事と結びつけられないでしょうか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

石田弁護人=「たとえば奥富玄二さんが自殺されたとか、田中登さんが自殺されたとか、或いはスコップが発見されたとか、そういう捜査上の何らかの出来事との関連でいつ頃かという風に述べて頂ければ・・・」

証人=「まあ、先ほど申上げた通り、しばらく経ってから石川さんの名前は出たと思っているんですが」

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山上弁護人=「今の証言の態度について発言を許して頂きたいのですが、特にこの法廷ではメモを許さないというご発言がありまして、弁護団は了解しておりましたが、その意味からも傍聴人に十分聞こえるように証言するよう、裁判所の方も証人の証言の態度について指揮して頂きたいと思います」

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裁判長=「最前から言っております」

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山上弁護人=「必ずしも傍聴人の方に聞こえていない、私の方にも不確かな聞こえ方しかしないんです。ましてや後ろにおる傍聴人には、到底何を言っているか分からない。メモはも止されている(原文ママ)以上は、傍聴人の方々が外に出て、多くの仲間が来てるわけですが、その人たちに法廷でどういう証言があったか伝えることは、もちろん裁判所の関与しないところで、傍聴人の自由でありますが、メモを禁止する以上はそういう点についても、一つ緩やかに、或いは強力にと申しますか、傍聴人の気持を察して頂きたいと思うんです。特に、この問題は、裁判所もお聞き及びのことと思いますけれども、本件は石川君が部落民であるということで部落の問題だということで、部落の大衆が沢山来ているわけです。しかも傍聴人は、普通の裁判と同じでしょうが被告人と一体になってこの裁判に参加したいという気持でやって来ているんです。従って、その点を裁判所もよくご了解頂きたいと思うんです。特に石川君は第一審を通じて自白をして来たという問題を、我々がどのようにして裁判所の心証に訴えかけるかということも真剣にこの法廷で取り組んでいるんです。これは、弁護団だけの活動でなく部落民すべての人を通じてこの事件を解明しようとしてるんです。決してこれは異議申立とか抗議とかいう性格でないことは私も承知しております。しかし傍聴人が毎回まじめに来て、外でかけている掛け声、裁判所の方でいかに理解されているか分かりませんが沢山来ているんです。そして、みんな今日の法廷でどういう証言が出たか現場に持ち帰って、こういう事情もあるのではないかと相談もしてるわけです。従って今申上げたようなことは必ずしも裁判所の耳に入れる必要はないという主張もありますが、メモの禁止をはっきりされる以上は、私の方としても傍聴人に聞こえるように証人に言って頂きたい」

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裁判長=「それは、最初から証人に言ってあるはずですが、長い間の証言の進行の間にはだんだん声が低くなるということはどの事件でもあるんです。特に証人の声が低くなったらその都度注意することはやぶさかではないです」

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(続く)