アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 649

(狭山事件裁判資料より転載)

【公判調書2025丁〜】

                「第四十一回公判調書(供述)」⑧

証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)

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山上弁護人=「先ほど関さんを川越へ移したのは、六月二十一日前後だと、こういう風にご証言されましたですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「それは捜査が進展しないと言いますか、お言葉を借りれば自供を得られないというような障害があって、説き伏すために関さんを行かしたんだと、そういう趣旨でございましたね」

証人=「そうですね」

山上弁護人=「そうすると、六月の二十日、二十一日頃は捜査は進展していなかった、自供は得られていなかったと解してもよろしいんですか、そういうことになりますね」

証人=「二十日ですか、二十一日ですか、よくわかりませんが、関部長を川越へ派遣するまでは捜査は進展しておらなかったと、こう思います」

山上弁護人=「先ほどの証言では、最初にあなたが出た言葉は六月二十一日という言葉が出ておるんですが、六月二十一日以降捜査が進展しないので関さんに行ってもらったと、こういうご証言になっておりますが、どうですか」

証人=「二十一日という断定をしません。二十日前後だと思います。十九日か二十日、その辺はですね、二十日、十九というんでなくて、二十日前後に関部長をやったと、関部長をやる前は捜査は進展しておらなかったと、こういう記憶があります」

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裁判長=「先ほどは二十一日とはっきり言ってますかね、六月二十日前後と言ってますが、二十一日ということは言っていないんじゃないですか」

山上弁護人=「最初に二十一日という言葉が出ています」

裁判長=「これはあとで調書を調べてもらっていいけれども、趣旨は六月二十日前後という趣旨で、はっきり特定した意味ではなかったようです」

証人=「ええ、そういう意味です」

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山上弁護人=「そうすると、六月二十日前後というのは当然に二十一日を含むということですね、前後というのは」

証人=「記録を見ないと分からないですが、二十日なのか、十九日なのか、その辺は私はっきりしませんが、とにかく捜査が進展しておらないので、関部長をやったと、それが二十日前後、十九日かも知れません。二十日かも知れません」

山上弁護人=「そうすると二十日前後という証人の言葉で伺いますが、特に捜査が進展したという印象は残っておりませんか、六月二十日前後に」

証人=「いや、一旦、何か、ちょっとですね、自供したというような、ちょっと聞いたような記憶がします。はっきりしません」

山上弁護人=「それであなたの供述が矛盾するので聞きますがね、では六月二十日前後、関さんとあなたが川越分室で石川君とお会いになったときに」

証人=「いや川越では会いません」

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佐藤検事=「裁判長、前の証言は関を派遣した時期と、この証人と関とが被告人に会った時期とは別な日を言っているわけです」

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山上弁護人=「そうすると、六月二十日前後の中には二十一日を含むかどうか分からないというわけですね」

証人=「そうですね」

山上弁護人=「その頃自供を始めたという具合に聞いたという風にご証言なさいましたね、何か自供みたいなものを始めたと。それはどういうことですか」

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裁判長=「いや、自供というか、捜査が進展したようにも聞いたという風な曖昧な言葉ですね」

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山上弁護人=「捜査が進展したと仰る内容はどういうことですか」

証人=「関部長を派遣する前ですか」

山上弁護人=「いや、関部長を派遣したのが六月二十日前後であり、その二十日前後には捜査が進展したということを聞いたように思うというご証言なので、捜査が進展したと判断された根拠は何で、どういう内容をもって捜査が進展したと仰っているのか、その内容を聞いておるわけです」

証人=「関部長を派遣する前に捜査が進展したということを私が耳にしたという意味ですか」

山上弁護人=「はい」

証人=「内容についてはあんまりはっきり記憶ありませんが、とにかく、ちょっと自供というか、全面自供ではありませんが、ちょっと一部、狭山署におるときと違って、若干、口を聞いてですね、事件に触れてきたと。若干、自供に近いようなことがあったということは私はそのような意味の言葉を聞いてます。しかしその後、なお、その辺がまた覆して、駄目になって、どうも話が一転、二転三転して、どうもよく進まないというような意味になって、それから派遣してます」

山上弁護人=「そうすると、六月二十一日前後という時期を指していらっしゃるのですか、捜査の進展というのは」

証人=「そうですね、六月二十日前ですね、二十日前後、一日くらいでしょう、せいぜいですね、聞いてすぐやったんですから」

山上弁護人=「そうすると、捜査が思わしく進まないので関巡査部長を六月二十日前後に川越に派遣したというのは矛盾しませんか」

証人=「どうしてですか」

山上弁護人=「私の質問わかりませんか」

証人=「わからないです」

山上弁護人=「あなたはね、六月二十日前後に、今、あなたのお言葉にあるように自供という言葉をお使いなさったが、そういう報告を六月二十日前後に受けたと仰いましたね」

証人=「ええ」

山上弁護人=「しかも、六月二十日前後に関さんを分室に派遣したのは捜査の進展が思わしくなかったんだと仰っておるので、果たしてどちらのほうが本当か」

証人=「そうじゃないんです。自供のような説明をしたが、また話が一転二転、三転して、どうもはっきりしないと、どうも何かはっきり掴みにくい、よくわからないというような話があって、じゃ、関部長は前にも狭山署で会っておるし、うちの署員とすれば、関部長以外に被疑者との面識がある者はいないと、そういう意味です」

山上弁護人=「私が尋ねたのは、一部の人との自供の開始の時期が違うということとも関連して聞いたんですが、それはそれで結構です。それから、中刑事部長ですね、この方から部落問題を含んでおるので特殊部落と言いますかね、捜査は注意をしなければいけないというような訓示、あるいは注意を受けたことがありますか」

証人=「特に、そういう訓示とか注意を受けません」

山上弁護人=「特に受けてない」

証人=「はい」

山上弁護人=「そうすると、特にでなく、一般的に受けたと聞いてよろしいですか」

証人=「いいや、一般的にも聞いてません」(続く)

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○山上弁護人はここで部落問題に触れ始め、元狭山警察署長・竹内武雄証人に対しその問題と捜査の関連について尋問を進める・・・。