アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 642

 

(狭山事件検証調書より転載。本文とは関連しない写真である)

【公判調書2002丁〜】

                 「第四十一回公判調書(供述)」①

証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)

                                          *

裁判長=「まず略歴を伺いましょう」

証人=「昭和十二年七月十六日埼玉県の警察に入りました」

裁判長=「どういう身分ですか」

証人=「巡査です。その後十二年の十月熊谷署勤務です。それから十六年の十一月巡査部長昇任、埼玉県警察本部の経済保安課」

裁判長=「そこの何ですか」

証人=「職業係と申しますか」

裁判長=「身分はその間変わっておりませんね」

証人=「その間変わっておりません。昭和十九年七月に警部補、大宮署」

裁判長=「そこの仕事は」

証人=「経済主任。その後、昭和二十一年十月、また元の本部の経済保安課。当時は変わりまして防犯と言っておりました」

裁判長=「防犯課の何ですか」

証人=「いろいろ部署変わりまして、四、五回変わりまして、その当時の各係に」

裁判長=「経済関係ですね」

証人=「はい、経済関係です。その後、二十三年の十月から中野の警察大学に入りまして、六ヶ月研修しまして二十四年の四月秩父警察の次長、警部に昇任しまして次長になりました。二十五年の十二月、県本部の教育課次席。二年ほどしまして二十八年の十月、同じく県本部の捜査二課の次席」

裁判長=「身分は変わりませんか、警部は」

証人=「ええ、警部です。警視に昇任しまして三十年の十月に川口の次長。それから三十二年の二月に越生警察の署長に。三十四年の六月、寄居の署長。三十五年の十月、狭山の署長。それから三十八年の八月ですか、県本部の交通部付。三十九年の四月、交通企画官室長。それから四十年の三月ですか鴻巣警察の署長。四十一年の九月秩父警察の署長。四十四年、昨年ですね。六月退官」

裁判長=「それで現在の評議員にすぐ就任されたんですか」

証人=「ええ、そうです」

                                           *

宇津弁護人=「この善枝さん殺しの事件で、最初別件でしたけれども、石川君が逮捕されて狭山署に留置されておりましたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「この逮捕されて川越署に移されるまでの間、証人は石川君と直接あなた一人でか、あるいはよその人と一緒でかはいいんですが、何回かお会いになったことありますか」

証人=「一度会っておりますね。六月の十二、三日頃だと思ってますが、私と関、当時の巡査部長ですね」

宇津弁護人=「関巡査部長ですか」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「その日にちを今述べられた根拠としては何かあるんですか」

証人=「いや、大体大雑把な記憶は今でもありますから。大体十日前後という記憶がしてます」

宇津弁護人=「どういう折に会われたのですか」

証人=「それはちょっと忘れましたが、逮捕しまして、それからまぁ延長しまして、まあ捜査が進展しない、しかし私は特捜本部の副本部長という資格で中刑事部長が本部長。私が副本部長で全般の仕事をやってました。直接被疑者を取調べる機会はなかなか無い、私も責任というか、事件をまあ、処理しなければならないということでおったんですが、なかなか進展しない、それでたまたま、最初はもちろん私知りませんでしたが、自分の直接部下である関部長が丁度たまたま近所に住まいを持っておったと、それでまあ、面識もあるというか知っておる。それなら私も自分の部下と一緒に会って、そう、取調べという風でなくても、会えばある程度関部長には真実を話すであろうという、こういう気持ちで確か十日前後、僅かの時間ではありますが面接したことがあります」

宇津弁護人=「私のお尋ねしたのは石川君が狭山署におる間ですね、その全期間を通じて署長さんが石川君と会ったのは何回とお尋ねしたのですが」

証人=「一回だけです。それだけです」

宇津弁護人=「関源三巡査部長は石川君の取調べの担当者だったのですか」

証人=「取調担当者ではありません」

宇津弁護人=「署長であるあなたの指示で関源三巡査部長と石川君を会わしたということもありますか」

証人=「そういう記憶はないですね。私と一緒に会っていることは記憶あるんです」

宇津弁護人=「そこはいいんですが。質問は別なんですが、関源三さんに石川君と会ってみるようにという指示をあなたが出されたことがありますか」

証人=「記憶がないですね」

宇津弁護人=「それではあなたと関さんが一緒に会ったことは先ほど聞きました。それから、あなたが指示を出したことがあるかないかも聞きましたが、それとは別に関さんが何回か石川君と会う機会があったようであるかどうかはご存じでしたか」

証人=「それはどういう意味ですか」

宇津弁護人=「狭山署におる時代ですね」

証人=「それは私知りません」

宇津弁護人=「あなたが関さんと石川君に会ってみようという風に考えた経緯ですがね、それについてもう少しお尋ねしますが、あなたとしては関さんが石川君と会うことによって、先ほど捜査が難航していたということを仰ってましたが、その問題が何か解決されるのではないかとお考えになっていたんですか」

証人=「その事件が必ず進展するとね、何等か本人が関部長には、ほかの捜査官、大体本部の捜査官が中心で調べて、署員の大体は一見兵站基地というか雑用をやっておった、取調べというのはほとんど直接にはあたっておらない、自分でまぁ、当時何等か考えてみて、自分も関部長ならば、前の経緯もあるし、住居も近いし、知っておるということで、関部長ならば真実を話すであろうという気持ちで、ちょっと、そう長い時間じゃないんですが、会ったわけです」

宇津弁護人=「あなたが、関巡査部長が石川君の家と近いということを知ったのはいつですか」

証人=「事件が始まって期間ははっきり憶えてません。一週間か二週間、記憶ありません。とにかく捜査過程で住居は近い、なおかつ知っておるということが分かったわけですね」

宇津弁護人=「いつ頃誰からそれを知りましたか」

証人=「本人から聞きました」

宇津弁護人=「本人というのは誰ですか」

証人=「関部長」

宇津弁護人=「先ほど、前からの経緯と仰った言葉の意味はどういう意味ですか。関さんと石川君を会わしたのは住居が近いということと、前からの経緯があったということですね」

証人=「本人も一緒に遊んだことがあると。補導というか、警察官という立場で近所の少年をあの辺で野球やったことがあるということも聞いたし、それでは全然知らないよりもよかろうという、そういう意味です」

宇津弁護人=「それはあの特捜本部の席上か何かでそういう申し出があったわけですか」

証人=「いや申し出は。私の考えですね」

宇津弁護人=「いやいや、あなたは関さん本人から、本人と近くに住んでおるとか、野球を一緒にやったことがあるということを言われたと仰いましたのでね、そうでしょう」

証人=「ええ」

宇津弁護人=「それはどういう機会に、あるいはどういう席上でそういう話を聞いたのかと」

証人=「それは公開のそういう席で話したとかそういうことではなくて、捜査の過程、事件が起きて捜査しているうちに自分のところの署に、部下の署員とか、言い伝えというか、関部長はたまたま近所に住んでおると、住居が近いと、そういう話をしているうちに、近い以外にそういう面識もあるよという話がまぁ署員から耳に入ってきたと、そういうことですね。いつ、どういうことではないです」

宇津弁護人=「署員から耳に入ってきたと仰いましたが、そうすると、関部長さんからも、それからよその署員からもそういう話を聞いておる」

証人=「ええ、聞いております」

宇津弁護人=「そうすると、石川君と会ってみたらどうだろうという話は、関さんからもよその署員からもそういう提案があったということでしょうか」

証人=「いや、それは私の判断です」

宇津弁護人=「話するのはいいですが、あなたが判断するにあたって関源三さん及び、そのほかの署員さんの提案もありましたか」

証人=「特に提案はありませんね。私の判断でまぁ、そういうような話を耳にしておったので、まあ、毎日ほとんど夜遅くやっておるが、たまたまちょうど時間も空いたし、関部長も空いたということですね」

宇津弁護人=「とにかく、取調べが難関に逢着しているという段階で、何かそれを進展させようというお考えであなたの判断が出てきたということに聞いてよろしいですか」

証人=「まあ、そういう意味でも結構ですよ」

(続く)