【公判調書1911丁〜】
「第三十九回公判調書(供述)」㉒
証人＝中 勲(五十七歳・埼玉県消防防災課長。事件当時、埼玉県警刑事部長)
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石田弁護人＝「再逮捕してから、暫く記者会見をあなたはしなかったですね。何日くらい記者会見しなかったか覚えておりますか」
証人＝「日にちは判りませんが私は非常に仕事が多うございました。要するに刑事部の統括という業務がまずあるわけです。そのほかに刑事部長としての仕事がございますのでそちらもやらなければならない、ということで一応本部長から仕事が過重であるということで、記者会見は一応竹内署長をしてあたらせろという指示でございましたので、暫く離れていました。その間が何日ぐらいあるかは記憶しておりません」
石田弁護人＝「竹内署長も六月十七日の再逮捕後は、記者会見などしていないようですがね」
証人＝「一日に一度ないし二度はしておった筈ですが」
石田弁護人＝「再逮捕して、被告が川越分室にもってこられてからは、あなた方はしてないんではありませんか」
証人＝「署長がしておる筈でございます。私は、そういうわけで一応報道関係は竹内署長があたるということになりまして、暫く離れておりました」
石田弁護人＝「すると、それ以外に理由はなかったということですか」
証人＝「ございません」
石田弁護人＝「六月二十五日に記者会見をなさっておるようですね」
証人＝「これは例の単独自供、これだけは本部長が、部長行ってこいと」
石田弁護人＝「単独自供も含めて、全然自供の記者会見はなかったですよ、六月二十五日に至るまで」
証人＝「自供についてはしておりません」
石田弁護人＝「脅迫状と自転車というのはこの狭山事件捜査の最初の証拠になるわけですがね、その脅迫状について、四月二十八日の夜とか、前の門とか、少時というようなところが訂正されたことは記憶がありますね」
証人＝「ええ、ございます」
石田弁護人＝「その脅迫状について、あなたはどういう風な見方をしておりましたか。訂正について」
証人＝「これは、個人的な考えでありますが･･････」
石田弁護人＝「捜査本部としての考え方でもけっこうです。あなたは一番の責任者ですから」
証人＝「最初は吉展ちゃん事件に類似しているために、子供を対象にしたものである。しかも日時も四月二十八日ですか、最初そう書いてありました。少時様という宛名、それがたまたま五月一日にあの犯行が行なわれて、あの文面にあったように少時様を消して江さくという風に訂正して持って行ったものであるという風に捜査本部は見ておりました。従って、その少時さんという相手を重点的に捜査致しましたけれども、確定をするに到ませんでした」
石田弁護人＝「少時と書くしょうじさんは見当たらなかったんですね」
証人＝「ございません。しかし、あれは当て字であろうという風に私どもは判断しました」
石田弁護人＝「当て字であろうというのは、最初から当て字だと判断したのですか」
証人＝「少時という姓名は殆どないだろうということで考えたです」
石田弁護人＝「訂正の際に使われた筆記用具が何であるかについては、鑑定などを命じたことがありますか」
証人＝「これは鑑識課の関係になりますので、私記憶がございませんですが、もっぱら山中鑑識課長が中心になってそういった作業を進めておりました」
石田弁護人＝「鑑定をしたかどうか、あなたは記憶がない」
証人＝「恐らく鑑定はしたと思いますけれども、これは推測の域を出ませんから」
石田弁護人＝「あなたが山中鑑識課長に対して命令されるわけでしょう」
証人＝「実際問題といたしますと、将田警視が総括監督をいたしまして、出てくる書類に目を通すというのが一応刑事部長の仕事でございます。大綱について指示はいたしますけれども細かい事柄につきまして、刑事部長が直接指示をするということは実際問題として下してございません」
石田弁護人＝「そういう具体的な指示は、そうしますと将田さんあたりがなさっていたんですか」
証人＝「大体将田警視が総括責任者として指示をいたしておりましたので、もし何でしたら、将田警視の証言等ご検討いただきたいと思います」
石田弁護人＝「それから、奥富さんという名字の植木屋さんを調べたことがあるんではありませんか」
証人＝「記憶ございません」
石田弁護人＝「そういう報告は受けた記憶がないですか」
証人＝「存じません」
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中央の人物は当時の狭山警察署長。(写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集"＝部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社より引用)
