アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 611

物々しい雰囲気を漂わせるこの物質は、重量12kg、必要とする電源は100Vとなる携帯可能なポリグラフであり、呼吸、皮膚電気反射、脈波を同時に、しかも連続記録できるという代物である。できれば一台欲しいところだ。

使用状況の模様。(写真二点は"ポリグラフ検査"=日世社より転載。なお本文とは一切関係なく、イメージとして載せたものである)

【公判調書1908丁〜】

「第三十九回公判調書(供述)」㉑

証人=中  勲(五十七歳・埼玉県消防防災課長。事件当時、埼玉県警刑事部長)

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石田弁護人=「石田一義及び東島明を、六月に入ってから逮捕しておりますね」

証人=「はい、・・・・・・窃盗でございましたか・・・・・・」

石田弁護人=「ええ、被疑事実は、そういう容疑事実でね。石田義男という人も逮捕してますね、豚屋の弟さん」

証人=「そうですか、・・・・・・どうもはっきり」

石田弁護人=「記憶ない」

証人=「はい、ございません、一義さんは知っておりますが」

石田弁護人=「これはどういう目的で逮捕したんですか」

証人=「これは被告人の供述によりまして窃盗がだいぶ出て来ましたものですから、それの共犯として検挙したという経緯でございます」

石田弁護人=「それだけじゃないでしょう」

証人=「ほかにございません」

石田弁護人=「狭山事件の捜査の進展に資するんだということで逮捕したんじゃないですか」

証人=「さような事実はございません。私ども最初からそう多くの人間でやった犯行だという風に私は見ておりませんでした」

石田弁護人=「多くか一人かは別として、石田一義さん、或いは東島明さん、或いは石田義男さんなども、五月一日の行動のことを聞かれて、非常に聞かれたということを述べているんですがね、そういう報告は受けてないんですか」

証人=「私としますとそれは共犯として処理をしたわけですから」

石田弁護人=「新聞報道によりますとね、石田一義さん、東島明さん、そういう人たちに対する逮捕というのは石川一雄くんに対する善枝さん事件の捜査の進展に資するためだというのがいずれの新聞も報じているところなんです」

証人=「私ども、その新聞記事や何かの発表した事実はないと思うんですが」

石田弁護人=「現に石田一義さんにしても義男さんにしても、東島氏にしても、みんな五月一日のことを聞かれておるというんですよ、非常に」

証人=「これはやはり聞かれるということはやむを得ないと思いますけど」

石田弁護人=「だから、それは捜査方針と関係があったんじゃございませんか」

証人=「ございません。長谷部警視を窃盗の捜査に充てておったわけでありますから」

石田弁護人=「石田一義さん、或いは石川一雄くん、或いは東島氏、そういった人たちが未解放部落の出身者であるから逮捕し取調べたのと違いますか」

証人=「そうじゃございません。大体捜査に左様な考えは全然入れておりませんし、左様なことは事実を知らなかったですから」

石田弁護人=「六月十三日に恐喝未遂は起訴されずに窃盗などの微罪を検事が起訴しましたね」

証人=「はい」

石田弁護人=「引続いて、狭山事件の関係で石川一雄くんを取調べようと捜査本部では考えていたわけでしょう」

証人=「左様でございます」

石田弁護人=「弁護人が保釈を請求したり、或いは勾留の取消を請求したりというようなことをこの六月十三日の別件微罪を起訴して間もなく知りましたですね、弁護士から保釈申請が出てることを」

証人=「はい、知っております」

石田弁護人=「保釈申請が出されたのは十四日なんですけれども、当日既にご存じですね」

証人=「さあ、ちょっと記憶がないです」

石田弁護人=「川越署の分室を十四日ごろから整備されたといいますかね、そういう整備の作業に掛かったんではないですか」

証人=「一日ぐらいではないかと思いますが、日時はちょっとはっきり致しませんけれども」

石田弁護人=「何日か掛かってるようなんですがね、近所の人の話だと」

証人=「堀の壊れの修繕等が中心になったわけですから、そんなに何日も掛かってないと思います」

石田弁護人=「再逮捕するということが考えられたから川越署分室を整備されたんでしょう」

証人=「それはそうです」

石田弁護人=「再逮捕の際に使われた逮捕状は飯塚警視が小川簡易裁判所という所の裁判官に請求されているようなんですが覚えていますか」

証人=「知っております」

石田弁護人=「検事とは相談の上でなされたわけですか」

証人=「さあ、はっきりしません。その小川を選んだ理由ですね、検事さんと相談されたかどうか、はっきりしておりません」

石田弁護人=「じゃ、若干広く検察官との関係についてお尋ねしますが、特別捜査本部を設置してから検察庁との関係はどういう協力関係をとっていましたか」

証人=「これはもう刑事訴訟法、私どもの警察官犯罪捜査規範に基づきまして誠実に緊密な協力関係をとっておったわけですが、特に私が記憶いたしておりますのは、第一回の逮捕の際に次席検事さんに私から電話をいたしまして、逮捕の連絡を、特に筆跡鑑定等が一応中間結果が同一筆跡であるという結果が出ましたので、逮捕したい、するという連絡をいたしておりますが、そのほかは例の主任の原検事さん以下、毎日のように特捜本部に二人ないし三人の方が見えておりましたので、特別改まった打合わせをしたという記憶が私無いんですございます。常時、接触を緊密に保っていたと」

石田弁護人=「そうしますと再逮捕しようというのは要するに六月十三日に窃盗などで起訴し、そして弁護人から保釈などの請求が出たということを知った段階で既に検察庁とは打合せを済ませたわけですね」

証人=「具体的に、はっきりしません」

石田弁護人=「日にちがはっきりしないのですか」

証人=「しませんが、いずれにしても緊密な連絡は常時とっておったことは、事実です」

石田弁護人=「ところで第一次逮捕の段階で石川くんに対して取調べをした事実がありますね、知りませんか」

証人=「鑑識関係でないと、ちょっとわかりませんが」

石田弁護人=「ポリグラフを使用した捜査がなされたかどうか、捜査本部の部長聞いてないですね」

証人=「一応、ポリグラフを使用するであろうということは当然考えられます」

石田弁護人=「したということは」

証人=「記憶がちょっとございません」

石田弁護人=「これは、当時の警察庁刑事局長の宮地直邦さんもいろいろ言われていることなんですがね、あなたは知らないんですか」

証人=「私はやはり刑事部の統括があり、上司のあれがありますから、大体将田警視に総括的なことは任せておりましたので細かい点はちょっと記憶がございません」

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