アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 610

【公判調書丁1905〜】

                  「第三十九回公判調書(供述)」⑳

証人=中  勲(五十七歳・埼玉県消防防災課長。事件当時、埼玉県警刑事部長)

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石田弁護人=「石川の善枝さん事件の容疑に対しては確信をもって追及するという趣旨の言明をなさったことを覚えておられると思うんですが、いかがでしょうか」

証人=「脅迫状の記載についてということじゃないかという風に考えますが、これはもう正式な、正式と言っちゃ失礼ですが鑑定の中間結果が出てますので、これについては、少なくとも恐喝未遂の脅迫状を書いたことについては確信があるという風に表現したように記憶しております」

石田弁護人=「石川君を容疑線上に最初にのせた時期は大体五月の何日ごろの時期でしょうか」

証人=「筆跡、血液型を採取して、結果が出た時点で一応、疑わしいという考えを持ったように記憶しております」

石田弁護人=「血液型は逮捕後じゃないですか、石川一雄を逮捕してからあと、血液型を出したんじゃないですか」

証人=「違います。血液型は大体もう出ておった筈です」

石田弁護人=「どんな資料(注:1)がありましたか」

証人=「資料は煙草の吸いがらだと思います」

石田弁護人=「煙草の吸いがらは、石川一雄君を狭山署へ留置してから、煙草を警察官が被疑者である一雄君に与えて、そしてそれを領置して、そして鑑定した結果に基くもので、逮捕後の問題なんですよ」

証人=「いや、それは以前に、二十日の日ですか、脅迫状の同一筆跡を書いていただいた日に煙草の吸いがらを採取してきている筈です。一応あれは、もうその前に石田さんの、豚屋さんの関係も大分了解を得て筆跡をいただき、煙草の吸いがら等いただいております。兄さんの六造さんが立会って筆跡を入手してきたという時点で、煙草の吸いがらもいただいてきてると思います」

石田弁護人=「筆跡の入手と言われましたが、石川一雄君の筆跡を入手したのは上申書という題名の書類ですか」

証人=「はい」

石田弁護人=「記録によると、五月二十一日のようですね」

証人=「ですから、二十二日にそれに対する中間結果がそれぞれ出てる筈です」

石田弁護人=「そんな書類はさっぱりないんですがね、何か書類上あるんですか」

証人=「なきゃならんと思います。二十二日に関根技官の同一筆跡と認められるという報告と、鑑定の中間報告が電話で、やはり同一筆跡と認められるというような、表現が少し違うかも知れませんが、いずれにしてもそういう回答があったように記憶しております」

石田弁護人=「ところで石田豚屋の関係ですね、その石田一義さんの関係に、ある時期からかなり捜査の重点が移っているようなんですが、そういうことはあったのですか」

証人=「いずれにしても石田豚屋さんで、死体の埋没に用いたであろうというスコップが紛失しているわけです。しかも、石田さんのところはご存じのように犬が数頭おる。特にスコップをとられた現場のすぐわきにもよく吠える犬をつないでおったと。従って、全然関係のない人がそのスコップを簡単にはとりにくい。しかもその犬が吠えれば、母屋の方にいる数匹の犬が直ちに応援に行くというような態勢になっておったわけです。それが全然犬に吠えられずスコップを持って行ったわけですから、いずれにしてもそこに関係のある者であろうということで捜査をいたしたわけであります」

石田弁護人=「そういう風に捜査本部で考えて、そこに重点的に捜査を絞るようになっていった時期というのは、スコップが発見された直後からという風に理解していいんでしょうか」

証人=「特に重点をそこに置いたというよりも、出て参りましたそれぞれの物証関係につきましてはいずれも重点を置いたわけでございます。どれに重きを置いて、どれが軽いということはございません。いずれにしても、スコップをとり得る者、これがやはり非常に疑わしい要素を持つということはあり得るわけであります」

石田弁護人=「その五月十一日に死体発見現場の近くの麦畑から発見されたスコップが、石田一義さん宅のものであるかどうかという点についての意見は事実問題もいろいろありまして、あなたに細かいことを聞きませんが、とにかくそのスコップが発見されたところから石田豚屋を中心にした捜査が進められるようになったということは間違いないでしょうか」 

証人=「そうですね。いずれにしてもそれ以前からやはりやっておったと思いますが、スコップがなくなったという届けを受けまして、簡単にとり得ないスコップだということでございましたのでやっておりましたけれども、特に重点を置いた時期とすれば、やはり発見をされた頃に更に力を入れることになったと思います」

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○調書の引用は続く。

(注:1) 何かを分析する場合、その分析対象(ここでは煙草の吸いがら)を指す言葉は「資料」ではなく「試料」という文字が適してはいないだろうか。 ここの文脈の趣旨は「石川被告人の血液型は、本人が吸い終えた煙草の吸いがらより特定」であり、煙草の吸いがら=サンプル、見本、検体、つまりそれは試料と呼ぶと思うのだが。

また、血液型を特定するにあたり、その手がかりとなる試験、検査、分析方法などが記載されたもの、判断のもとになるもの、そういったものを資料と呼びはしないだろうか。いや、気のせいかも知れないのでこの件は忘れよう。