アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 768

(堀兼支所におかれた特捜本部。写真は"差別が奪った青春"部落解放研究所・企画・編集=解放出版社より引用)

【公判調書2399丁〜】

                 「第四十七回公判調書(供述)」

証人=清水利一

                                           *

山上弁護人=「それから、もう一点ですが、狭山の方で清水さんが捜査をなさっておられた時に、堀兼の支所で捜査会議があったと、こういうご証言がありましたね」

証人=「はい」

山上弁護人=「それは、一日おきにやるとか毎日やるとか決まっているのですか」

証人=「これは毎日でございます。毎日捜査員が上がってくるのが、大体五月ですから五時半か六時頃上がって来ますから、それを警部補クラスの人がずっと一応聞いて、それを持ち寄っての会議です」

山上弁護人=「あなたが最初の捜査会議に出られたのは、何日頃からか覚えていますか」

証人=「行った晩です」

山上弁護人=「何日ですか」

証人=「恐喝未遂事件があった翌日の午後行ったんですから、三日ですね。三日の日からです」

山上弁護人=「これは、直接関係することではないんですが、ざっくばらんにお尋ねするんですが、捜査会議の際、共犯だとか単独だとか、顔見知りじゃないかとかいろいろ議論が出てくると思うんですが、最初の頃、捜査会議の内容で、そういう議論と言いますか、まあベテランの刑事さんが出される意見、そういうものを覚えておられたらお話し願いたいのですが」

証人=「まあ、私どもが初め捜査会議に出た段階では、初めから事件の単独犯ということが強かったと思います。多勢、百何十人という刑事を集めまして」

山上弁護人=「多かったというのは、少数ではあるがいろいろな意見もあったのですか」

証人=「中には、捜査の始まったばかりのわからないうちですからね、初めから、一本だとか、二本だとか、三本と決めるわけにいきませんから、捜査員の顔の違うように、単独説を唱えるやつも、複数説を唱えるやつも、いろいろございますが、捜査で解明していくと」

山上弁護人=「これは、あなたのご存じないことかも知れないが、当時の地元で発行された朝日、毎日、あるいはそういう地元の埼玉新聞ですか、そういうものによると、共犯説とか、顔見知りの線が強いということを、私読んでおりますのでお尋ねするのですが、顔見知りという線も強かったんじゃないでしょうか。高校の女の子が山の中をついて行くだろうか、顔見知りじゃないかという考え方も当時ありませんでしたか」

証人=「端的に言いますけど、新聞報道というのは、竹内署長が一手に引き受けたわけです。他の者は記者会見には、これは刑事部長も出ましたが、ほとんど竹内署長が記者会見をやってたわけです。これは午前十時、夕方三時、午後九時頃ですか、ほとんど竹内署長が記者会見専門にやってたわけですが、その時うんそうかなと相槌打ったから、そうなったかも知れませんし、まあいろいろ竹内さんが大体記者会見をやったことは間違いないです。他の者はほとんど記者会見やりませんから。だから、私ども、当時の新聞を全部、ああ、えらいこと書いてるなと思ったこともありますが、何でこんな話が出るんだろうということも考えますが、新聞報道は竹内署長が一人でやっていることだし、もちろん刑事捜査本部長の指揮を受けてるから、我々の気にすることはないということでした」

山上弁護人=「とんでもないことを発表すると、具体的にどういうご記憶ですか」

証人=「たとえばいろいろあるわけです」

山上弁護人=「たとえば三人共犯とか、顔見知りとか、そういうことですか」

証人=「そうでなくて、あたかも取調べ状況などがそっくりそのままの様な、ふうを装って出る、というのもありましたから、ずいぶんまあ、と思ったこともあります」

山上弁護人=「それからもう一つ、これは中刑事部長の質問の際にお聞きしたんですが、地元のほうから、狭山の川越(原文ママ)、あるいは堀兼、そういうところから、いわゆる未解放部落民を集中的に取調べているじゃないか、ということで抗議の声が上がっているので、捜査をする者は注意をしなきゃならないのではないかという趣旨の、中刑事部長の訓論と言いますか、話、そういうものは捜査会議で出ておりましたか。中さんはそう具体的に仰ってるんですが」

証人=「中さんから話が出たのは、とにかく捜査に言動を慎めという訓導を受けたのは知っています」

山上弁護人=「特にあなたは、いわゆる地元の未解放部落民を、特に調べておるんだというような雰囲気を与えるような捜査をしてはならないという説明があったということではないんですか」

証人=「私は、それまで聞いておりませんです」

(続く)