記者会見に応ずる竹内狭山署長。狭山事件発生時には連日六百人近い報道陣がつめかけた。
同じ狭山署内での石川一雄氏。写真二点は、"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。
【公判調書2873丁〜】
「第五十四回公判調書(供述)」
証人=関 源三(五十五歳)
*
山上弁護人=「あなた、その当時交通係をしておったんですね」
証人=「そうです」
山上弁護人=「石川事件については山狩りをしたことと六月二十日前後でしたか、竹内狭山署長と何か警察署長室かどこかで石川君と会ったことがあるんですね」
証人=「署長室じゃないですがあります」
山上弁護人=「それは何日頃でしたか」
証人=「六月」
山上弁護人=「七日か八日かな」
証人=「その頃だったと思います」
山上弁護人=「その当時警ら交通係の人は狭山署に何人いたんですか」
証人=「交通の係長と私と、あと係が三人くらいと思います」
山上弁護人=「同僚は三人くらいと聞いていいんですね」
証人=「大体三人くらいだと思います」
山上弁護人=「その中から特にあなたが石川君と署長と会うようになったというのは何か理由があるんでしょうかね。交通は皆さんお忙しいんでしょう、その中からあなたが特に署長室で会うようになったというのは何かそこに理由がないとおかしいと思うのでお伺いしているんですがね。石川君を知っているという事実があれば関君来いよということも分かるんですがね」
証人=「分かっていたかどうかは私は知らないんですけれども、石川君と私の家はすぐそばだということがあるんです」
山上弁護人=「分かっておった、狭山署長にもね」
証人=「はい」
山上弁護人=「そうすると、そういうこともあって自分は呼ばれたんだなとあなたは思ったと聞いていいですか」
証人=「呼ばれる時は私は何だか分からなかったんです」
山上弁護人=「あなたの石川君と知り合ってるということで呼ばれたんだなという気持ちはあったんですね」
証人=「すぐそばですから、それで呼んだんかなという気はしました」
山上弁護人=「それ以来あなたが石川君の、我々からすれば嘘の自供ということになっているんだけれども、自供に立ち会うという重要な役をなさり、それからずっと四十年まで手紙を出したりお金を差入れたりしている。あなたはやはり自分で立派な役目をしたなと思っておりますかどうですか、現在」
証人=「まあ私は警察官という立場から行けば、やっぱりこれは犯罪があればやらなくちゃならん立場ですから」
山上弁護人=「あなたは趣味として青年時代催眠術の勉強をしたというようなことはありませんか」
証人=「私は全然そういうことはないです」
山上弁護人=「石川君というのはまあ三年間お付き合いなさって、それでどういう性格とあなたは思っていますか」
証人=「私は『おっ』と言える仲でしたから悪いとかそういう感じは持っていなかったです」
山上弁護人=「最初はおれは殺してないんだとか、手紙を持って行ったとか、それから実は三人でやった、入曾、入間ですか、そういうことから変わってきているんですが、この人の言うことをあなたは後ろにいるから言いにくいでしょうけれどもあてにならんでしょう、どう思いますか。今考えてちょっと虚言癖と言うか、どこを信用していいか分からんという気持ちはありませんか」
証人=「・・・・・・特にそういう感じもしないんですが」
山上弁護人=「しかし、くるくるくるくる変わっているのはあなたの感じとしてはどう受け取ってます」
証人=「・・・・・・まあ簡単に言えば嘘を言ってるということでございますか」
山上弁護人=「まあ供述が大きく変わっているんですがね、それはご存じですね」
証人=「それは聞いておるから知っております」
山上弁護人=「それを今あなたが考えてみて石川君というのは喋ることを信用していいのかどうかということで、あなた自身何を信用していいか分からんという気持ちになっておったかということです」
証人=「そういう気もしないんです」
山上弁護人=「あなたの判断で石川君は『おっ』と言う仲で、まさかあの男がという感じは今もあるんですか」
証人=「私はその時はそう思ったですね」
山上弁護人=「性格は一般的に言えばどうなんですか」
証人=「私は普通に付き合って、向こうも普通だったと思うんですよ」
山上弁護人=「で、四十年まで、あなたに対してさっきの弁護士さんがお読みになったけれども、ああいう素直な手紙を書いてますね」
証人=「はい」
山上弁護人=「多少暗示にかかりやすい性格だとは思われたのかね」
証人=「・・・・・・・・・・・・」
(続く)