(狭山事件裁判資料より転載 )
【公判調書2037丁〜】
「第四十一回公判調書(供述)」⑫
証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)
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中田弁護人=「関さんと一緒に会った調べ室の場所ですが、あなたさっき一号室か二号室かは別にして留置場のすぐ隣と言いましたね」
証人=「ええ」
中田弁護人=「狭山署の玄関を入って捜査課の中をずっと通り抜けて、ちょっと左に曲がってすぐ又右に曲がると留置場に突当たるでしょう」
証人=「そうですね」
中田弁護人=「あなたが石川君と会ったという部屋は」
証人=「留置場の手前の右側です。向かって右側の手前の部屋かその辺どっちか、二つ部屋がありましたが」
中田弁護人=「そうするとあなたが会ったというその部屋を右の方へ曲がると接見室のところに行くわけですね」
証人=「その先に行きますと接見室ですね」
中田弁護人=「いつも入口のところに白い布をカーテンみたいにかけてあったあの部屋ですか」
証人=「そうですか・・・・・・覚えてませんね」
中田弁護人=「あなたは当時、狭山署に石川君がいた頃ですが、弁護人が何度か接見していることを知っているでしょう」
証人=「ええ、直接ではありませんが、聞いています」
中田弁護人=「今日弁護人二、三人が来たということを報告が当然あなたにもあるでしょう」
証人=「聞いてます」
中田弁護人=「そんな報告は誰からですか」
証人=「誰という決まった今記憶はないんですが」
中田弁護人=「担当は誰ですか」
証人=「まあ幹部が、弁護士さん関係は当ったようですね」
中田弁護人=「例えば諏訪部さんから」
証人=「大体、幹部の方から話があったと思います」
中田弁護人=「今日弁護士が会って、弁護士が石川君にこんな話をしていたという話を、報告を受けたこともあったでしょう」
証人=「そんな報告はないですね」
中田弁護人=「石川君は私どもが会うと後で調べ官がさっき弁護士はお前にこういうことを言ってたろうということをしょっ中聞かれたということを言ってますが」
証人=「聞いてませんね」
中田弁護人=「私ども接見室の隣に誰か人が聞いてるような様子を感じておったことがしばしばあるんですが」
証人=「それは事故防止のために、ちょっと遠くにいた場合じゃないですか」
中田弁護人=「事故防止のために傍に警察官がいたのは当然であろうということですね」
証人=「当然であろうというか、わざわざその接見の状況を聞こうというという意味じゃないんじゃないですか」
中田弁護人=「捜査本部が弁護人から、正規に付いている弁護人以外の者を弁護士と称して石川君に会わしてるといった抗議を受けたことがあるでしょう」
証人=「弁護士以外の人をですか」
中田弁護人=「あの当時私を含めて弁護士は三人付いていたことを知ってるでしょう」
証人=「知ってます」
中田弁護人=「その三人の弁護士さん以外の弁護士という人が石川君に会ったということを石川君が言っているけれども、どういうことであるか調査して事態をはっきりせよという申入れを私どもがしたことは覚えているでしょう」
証人=「記憶はないですねえ、そいつは、署長室で皆さんと会った覚えは、用件は忘れましたが、大勢あそこにいましたからね、何か抗議を受けた覚えはあります」
中田弁護人=「狭山市長石川何某なる者が石川君に会ったという話があるが、これはどういうことかという抗議と調査を要求した私どもの申入れを聞いたこともあったでしょう」
証人=「市長ですか。全然知りません、初耳です、現在・・・・・・」
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裁判長=「質問がわかっているんですか、狭山市長が会ったというんじゃなく狭山市長と称する人間が会ったということで弁護士から抗議を受けたことがあったか、狭山市長じゃない、本当の市長じゃない人が市長と称して被疑者に会った、そういうことについて抗議を受けたことはないかと」
証人=「内容は覚えてませんが、確かに署長室で皆さんに抗議を受けたことは覚えてます」
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中田弁護人=「内容は抗議だったことを覚えている」
証人=「はい」
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昭和四十五年十二月十四日
裁判所速記官 沢田怜子