アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 959

○教科書・カバンの発見場所の位置関係。写真二点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書3006丁〜】

                  「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

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(石川被告による供述調書添付図面二〇〇三丁)

松本弁護人=「(同二〇〇三丁の図面を示す)これが本件のカバンの捜査に役に立った調書というか、図面ですか」

証人=「同じ日に二通供述調書を作っておるんですが、青木警部が作った調書だったらばそうです」

松本弁護人=「ところが、ここに先ほど福地弁護人からの質問がありましたけれども、ここに溝という表現が使ってありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「ところが、この供述調書を私、一読したんですが、二〇〇一丁の表の、終わりから三行目の『山と畑の間の低いところの土を少しばかり、履いていたゴム長靴でかっぱいで、本は鞄から出して鞄だけその土をかっぱいた所へ放り出し、そのそばにあった藁一束くらいを』伝々と書いてありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「溝という表現はこの供述調書全体を見たんですが、少しもないんですよ、ところがこの図面に溝と書いてあるんですがね、何かちょろちょろと草が生えてるような感じのものも書いてありますけれども、供述調書に書いてないものがどうしてこの図面に出て来るのか覚えてませんか、何かそういう理由があったんですか」

証人=「石川君が分かりいいように書いたんじゃないかと思いますが。あったものを」

松本弁護人=「それじゃ、この調書を作る時にはまずこの図面を石川君が書きますね、その書いた図面について供述調書が作成されるんでしょう。供述調書を作ってからこの図面が作成されるということはないんですね」

証人=「順序からはそうですが。図面が出来て」

松本弁護人=「そうすると図面に溝という表現が使ってあれば当然その辺りは解明されていいんじゃないでしょうかね」

証人=「そうですね」

松本弁護人=「どういうことで溝という表現を使われていないのか、警察調書の中では溝という表現ではなかったように見ているんですが、検察官調書は別として、現場は溝でしょう、カバンが発見された所はあなた後になって行きましたか」

証人=「後から行きました」

松本弁護人=「それは溝でしたか、どうですか」

証人=「低い所ですね」

松本弁護人=「私が聞いているのはカバンが発見されたのは溝の中からであったかどうかということですよ」

証人=「溝とも言えるし、低い所とも言える状況の所でしたなあ」

松本弁護人=「二〇〇三丁の図面によりますとカバンが発見された現実の位置もそうなんですけれども、あれは先ほどの同じ日付の調書添付の図面によって指示したところは教科書が発見されたところと道路一つ隔てた反対側の溝の中でしたね、カバンが発見されたのは。記憶ありませんか」

証人=「その点記憶ありません」

松本弁護人=「教科書の発見された位置は、その後で行って調べたりした記憶はないんですか」

証人=「行きましたねぇ、行ってると思います」

松本弁護人=「道路から見ると教科書が発見された方がやや高めに傾斜面を上がって行くような感じの所になるんじゃないんですか、やはり低い所ですけれども、反対にカバンが発見された所は道路からやや低く反対の方に降りていく所と、截然と別れているんじゃないですか、場所的には」

証人=「ただ、山でしたが低かった、ということきり記憶ないですね」

(続く)

カバン発見現場付近。

教科書・ノート発見場所。

○石川被告の自白では、カバンと教科書は同じ場所に捨てたということであるが、現実には、両者は百五十メートル以上も離れたところからそれぞれ見つかっている。これだけの距離が離れていながら、この矛盾点を突き詰めなかった警察・検察は、すると百五十メートルという範囲をも"同じ場所"という解釈で済ませたということになろうか。つまり被告の言う"同じ場所"という定義は百五十メートルぐらいは含むのだと、こういう恐ろしくも呆れた解釈で犯行の立証を敢行してゆくのである。

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カバン発見時、牛乳瓶、ハンカチ、三角巾などが共に見つかっているが、これらについては石川被告からは何の供述もされておらず、捜査側も追及した形跡はない。