【公判調書2776丁〜】
「第五十三回公判調書(供述)」
証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)
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宇津弁護人=「それでは、最初捜しに行って、どれくらいの時間捜したのですか」
証人=「全部で、出てから二時間ちょっとかかったんじゃないかと、今、そういう風に感じます」
宇津弁護人=「川越から、いわゆる現場まで何で行きましたか」
証人=「オートバイです」
宇津弁護人=「往復どれくらいの時間ですか」
証人=「往復大体三十分くらいです」
宇津弁護人=「すると、一応一時間半程度、区切られた地点で捜したということですか」
証人=「はい、時間は正解に一時間半とはっきり言い切れませんけれども、大体そのくらいの見当です」
宇津弁護人=「すると、かなり広い範囲で、その山の中を捜したことになりそうですね」
証人=「ええ、そうですね。学校の方から来る道があるんですが、その道の西側ということなんです、ですから最初そこを、その山を捜したんです。それからもう少し、それじゃこの道を間違ったかなという感じもいろいろしましたんで、その辺付近を捜したんです」
宇津弁護人=「道の東側はどうなんですか」
証人=「東側はあまり捜さなかったんですが」
宇津弁護人=「でも少しは捜したんですか」
証人=「はい」
宇津弁護人=「山裾の溝か川か、そういう窪みの辺りにもあるかという想定で捜されたことがありますか」
証人=「そっちは行かなかったんです」
宇津弁護人=「どうしてでしょうか」
証人=「裾の方と、図面を書いたところとは方角が違うし、山の何と言いますか、中腹の所ですから」
宇津弁護人=「しかし、あなたの言う第一回の図面がくっついている調書の内容と照らし合わせますとね、自転車の紐も鞄と一緒におっぽっちゃったんだという表現で書かれている調書なんですね」
証人=「はい」
宇津弁護人=「そういう調書の内容と、今あなたが述べている、いわゆる第一回の図面の鞄を捨てたという場所は、ゴム紐から五、六十メートル西方だというのとは大きな隔たりがあるのですが」
証人=「一緒に捨てたということでございますか」
宇津弁護人=「あなたが取った調書の内容がその調書に添付した第一回の図面となっているようですが、その図面の内容が大きな隔たりがあるようだけれども」
証人=「・・・・・・・・・・・・」
宇津弁護人=「それともあなたの、六月二十一日付のゴム紐と鞄を一緒におっぽったという風に書いた調書に添付されている図面は、あなたが捜す時持って行った図面と違うものなのですか」
証人=「いやそれは持って行ったのは同じなんです」
宇津弁護人=「と、真実、石川君がゴム紐のところから西方、五、六十メートルのところに捨てたような趣旨のことを述べていたとするならば調書がそのようになっていないといけないのではないかと思うがどうですか」
証人=「調書では鞄と一緒におっぽったという風に私は記憶しておるんですが」
宇津弁護人=「質問についてどうですか」
証人=「・・・・・・・・・・・・」
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裁判長=「弁護人、証人に質問を繰り返して下さい」
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宇津弁護人=「質問を繰り返しますが、あなたが取った六月二十一日付の調書の内容には、自転車の紐も、鞄と一緒におっぽっちゃったんだという風な記載があるのです。それでその調書には、あなたの言う第一回目に捜しに行った時使ったという図面が添付されているのですね」
証人=「はい」
宇津弁護人=「その図面であなたが当時理解したのは、ゴム紐の地点から西方、およそ五、六十メートルということだ、というのが只今の証言でしたがそうすると、最初述べたゴム紐と鞄を一緒におっぽったんだという供述とは大きな隔たりがあるのですが、それはどういうわけですかという問です」
証人=「最初は一緒におっぽったというのに、先生の言う五十メートルも違うのでは、その点が違うと、こういうことでございますか」
宇津弁護人=「そうでもないんだ、あなたがね、自転車の紐と鞄と一緒におっぽったんだという調書を六月二十一日に作っておるようなんですね」
証人=「私もそれはそういう風に記憶しております」
宇津弁護人=「その調書に添付されてる図面がいわゆる第一回に捜しに行った時に使った図面だというわけでしょう」
証人=「はい」
宇津弁護人=「すると、あなたがその図面、あるいは石川君が説明したというならば、図面及び石川君の説明によって理解した地点はどこかということの答えとしては、ゴム紐発見地点より西のほう五、六十メートルのところだという説明でしたね」
証人=「はい」
宇津弁護人=「調書作成、あるいは図面作成の時点でそのような説明があり、あるいは理解があったとするならば、調書の中身が鞄とゴム紐を一緒におっぽったという風にまとめられ完成するのはおかしいんですよ、それは何故だろうかと、実際に取調べをしたというあなたに聞きたいのです」
(続く)
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⑬は教科書発見地点であり⑭が鞄発見地点となる。石川被告人はこれらを"一緒におっぽった(捨てた)"と供述、これは調書に記載される。ところが、実際の教科書・鞄の発見地点は距離が離れ過ぎており、"一緒におっぽった"という供述とは乖離している。
図面左下⑬教科書発見地点。図面中央やや上⑭鞄発見地点。⑬と⑭はこれだけ距離があるが、これを一般的に、"一緒におっぽった"と言えるのか、また取調べ側も疑問に感じなかったのか、証人を含む警察側は後世まで重大な疑義を残すこととなる。