アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 889

【公判調書2767丁〜】

                     「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

昭和四十六年十一月九日 午前十時。

                                            *

宇津弁護人=「前回、山狩りのことをお尋ねしましたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「五月三日の山狩りの時にあなたがゴム紐を発見したということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「その時、これは事件に関係あるものではないかという風に感じたということでしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それが、被害者の自転車の付属品であるとはっきり確認されたのはどういう時期になるのでしょうか」

証人=「それは本部の方で、向こうの被害者の家へ行って確認したんです。で私は、直接行って確認はしないです」

宇津弁護人=「と、大体、発見のその日のうちに被害者宅に見てもらって、これは善枝の自転車に付けてた紐だということがわかったということですか」

証人=「それは、その日か翌日かどうかはっきりしませんです」

宇津弁護人=「その日か、翌日ぐらいだろうという感じですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「このゴム紐が発見されたということになって、それではそのほかの品物がそこを中心に発見されるかも知れないということで、引き続き捜索を行なったということがありますか」

証人=「はい、そのまま山狩りを続けたわけです」

宇津弁護人=「前回、五月四日も山狩りを続けてその結果、死体が発見されたということは述べていただいたわけですね、あなたは参加しなかったそうだけど」

証人=「はい」

宇津弁護人=「私の今のお尋ねは、やや観点を変えて、ゴム紐を発見したということがきっかけになって、その他の品物も、ゴム紐発見付近から発見されるのではないかという予測でその付近の捜索が行なわれたことがあるかということなんです」

証人=「特別そうは感じませんけれども、いずれにしてもゴム紐が被害者のじゃないかという風に感じたんで、その辺に何かまだあるかというような感じはありました」

宇津弁護人=「あなたの感じは聞きましたが、捜査陣として、あなたが入っても入らなくてもいいが、五月三日のゴム紐発見に引き続いて、その他の物件の発見に、その現場をさらに捜索したことがありますかという質問なんですが」

証人=「さらにというのはないと思います。私は、まあ四日の関係は分からないんですけれども」

宇津弁護人=「四日に限らなくてもいいんですよ、五日でも六日でもね。もう少し問いを簡単にしますとね、五月三日にゴム紐発見されてから後ですね、三日、四日、いずれも結構ですが、そのほかの物件について捜索が行なわれたかどうかです」

証人=「それは分からないですが」

宇津弁護人=「それでは、前回の証言では、ゴム紐を発見されて、その直後のあなたの行動について若干言い方の変更もありますが、最終的にはあなたは誰かに頼んで捜査本部に連絡したということでしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「で、山狩りはそのまま先に進んでいったということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それで、証人は現場と申しますか、そこに残ったんだということですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そこに残ったのは、証人お一人ですか」

証人=「いや、私だけではないです。あと消防の人が幾人かいたという風に、数は分かりませんけれども考えております」

宇津弁護人=「警察官は、あなた以外に誰か残ったのですか」

証人=「誰かいたんですけれども、忘れてしまいました」

宇津弁護人=「総勢何人くらいそこに残ったという記憶ですか」

証人=「四〜五人ぐらいと思っております」

宇津弁護人=「その四〜五人の方々は、そこで何をされたのですか」

証人=「別にこれということはしないで結局、本部からの指示、連絡があるまで待ってろというわけで待ってるわけです」

宇津弁護人=「何もしないで待機していたのですか」

証人=「そこにぶらぶら、何といいますか、ひと休みしてるような格好でいました」

宇津弁護人=「本部からの何らかの連絡、あるいは指示があったのですか」

証人=「ええ、あったんです」

宇津弁護人=「あなたに直接その連絡はあったのですか」

証人=「実況見分をやるからという連絡があったんです」

宇津弁護人=「その後、実況見分が行なわれたことになるんですか」

証人=「それで、関口部長と思いますが、実況見分をやることになったということを聞きました」

宇津弁護人=「と、実況見分が行なわれるという段階では、あなたはその現場を立ち去ったのですか」

証人=「そこに私もいたんですが、関口部長たちが来たその時に、入曾の方の山狩りをするんでお前は向こうへ行けというような指示が本部からあったと思います」

宇津弁護人=「それは、本部の方々がその現場に到着してから、そういった指示を受けて、入曾の方に行ったということですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「その現場に本部の方々は全部で何人くらい見ましたか」

証人=「関口部長のほかに二人くらいと思いますが」

宇津弁護人=「その入曾の山狩りというのは、あなたとそれから一緒に残っていたとそれから、一緒に残っていたという消防団の人たちも一緒に入曾の方にまわったんですか」

証人=「私は、先に一人でまた行ってしまったんです、入曾の方へ」

宇津弁護人=「消防団の人々は」

証人=「で、あとの人は、私が行く時はいたんですけれども、あとは帰ったかどうかということはちょっと分からないんですが」

宇津弁護人=「あなたは実際に入曾の方の山狩りというのに参加したのですか」

証人=「それから行ったんです」

宇津弁護人=「それは前回述べていただいた五月三日ですね」

証人=「三日です」

宇津弁護人=「前回お述べになったような山狩りの態勢ですね、それと全然別個に入曾のある所を山狩りしたというご趣旨ですか」

証人=「別個でなくゴム紐のあった山は一応終わったので向こうへ移動したわけです」

宇津弁護人=「あなたは、ゴム紐のいわゆる実況見分が終わった段階で当日もしくは翌日以降でもいいですが、ゴム紐発見現場付近を、何か物を捜して歩いたということがありますか」

証人=「いやありません」

宇津弁護人=「証人は鞄の捜索に関係されているようですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「今までの証言ですと、最初図面を書かせて行って捜したが無くて、二回目の図面を持って行ったら出たということになってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「最初、鞄の現場に行ったというけれども、その時は誰かと一緒でしたか」

証人=「私と清水部長と思います」

宇津弁護人=「清水輝雄さんですか」

証人=「ええ、そうです」

宇津弁護人=「その際には、石川君の取調べにはあなたの他に清水輝雄さんも立会人みたいになっておったんですか」

証人=「それは二十一日でございますか」

宇津弁護人=「いや、日にちは特定することないが、あなたの言う、第一回の図面を書かせて行ったという時ですね」

証人=「そのときは、誰もいなかったと思います」

宇津弁護人=「と、捜しに行く時だけ清水輝雄さんを誘って行ったという形ですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「捜しに行く時には、上司に連絡あるいは指示を受けて出かけたのですか、第一回の時」

証人=「はい」

宇津弁護人=「どういうことを言って、どういう指示を受けて出かけたのですか」

証人=「こういうところに捨てたと言ってるからということを報告しましたら、じゃあ、行って捜して来い、見て来いと、こういうわけで私が言われたんですが、それでじゃあ清水部長、お前と二人で行けということで、二人で行きました」

宇津弁護人=「第二回目に行った時は、川越の方から以外に捜査本部の方からもある場所で落ち合って、合流して何人かの人間が行ったことになってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「第一回目に行った時には、どういうわけであなたと清水輝雄さんだけが行ったということになるんですか、何か理由があるんじゃないですか」

証人=「どういうわけというのは私は分からないですが、その報告をしましたら飯塚課長が、じゃあ、清水部長と二人でお前行って来いと言われて、それで二人で飛び出したんです」

宇津弁護人=「二回目の時には鑑識とか、そういうメンバーも加えて行かれたようですが」

証人=「はい、そうです」

宇津弁護人=「最初の時には証人は、この図面では現場になぞ、鞄は無いであろうという、ある程度の予測を持っていたのではないですか」

証人=「私は、無いんじゃないかという気はしました」

宇津弁護人=「その根拠は、どういうところからですか」

証人=「それは、私が五月三日の日に、その場所だろうと見当がついた、まあ何というか、図面から見てこの辺だという所は、私が実際に通った所ですから」

宇津弁護人=「すると第一回のいわゆる図面というのは、ゴム紐が発見されたという地点とほぼ同じ地点になるのですか」

証人=「それから六、七十メートル離れていると思います。まあ五十メートル以上あると思います」

宇津弁護人=「ゴム紐発見地点からどちらの方向になりますか」

証人=「ほぼ西、大体西の方角です」

宇津弁護人=「つまり、山裾の方になるとも言えるのですか」

証人=「山裾でなく、山裾の方へ降りると学校の方になるんですが、学校を北という風にしますと、大体西の方向です」

宇津弁護人=「あなたが図面で指示した地点と鞄を捨てた所という地点は今言われたような地点であるように理解して出かけたのですか」

証人=「はい、西の方という風に感じて出かけたわけです」

宇津弁護人=「つまり図面を書かせた時に、ゴム紐発見された地点から西方約五、六十メートルの所だなあと理解できたのですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「それでは出かける前に、これは散々大勢で山狩りして、無いことは分かってるんだと、ここじゃないんじゃないかというような、そういう吟味はしてないのですか」

証人=「自分が通った所だから、まず無いんじゃないかと思ったんですけれども、見落としたかなという感じはしたわけです」

宇津弁護人=「実際には、一度目の図面を書かせて、その図面によってわざわざ現場にあなたが行ったということはないのではないですか」

証人=「あります、行ってます」

宇津弁護人=「警察がすでに何らかの方法で発見されていた鞄を、あなた自身が持参して現場付近に埋めたことはありませんか」

証人=「絶対ありません」

(続く)

                                            *

○ここからは裁判を離れ、事件に関連する書籍での話であるが、石川被告に書かせた最初の図面を手に、第一回目の鞄捜索へ向かった証人=関 源三は、やがて泥まみれで署へ戻って来たという。この泥まみれになった原因とは何か。まさか何かを埋める作業によって汚れたのではあるまいな。ただし"泥まみれ"という表現は、その汚れ具合が明確でなく、ズボンの裾に土が付着した程度であってもそのような表現をする場合もあり、そこで当時の鞄発見現場の写真から、その泥汚れの具合が分かるか検証してみる。

(写真は当時の被害者の鞄が発見された現場付近。皆、白系のTシャツ、半袖シャツに黒系のズボンを着用している)

(こちらは鞄を溝から掘り出す捜査員の写真。上の写真に写る人々よりも衣服が汚れる度合いが高いと思われるが・・・・・・)

(左端の方のズボンはピシッと糊が効いている印象を受けるが、このような現場に何かを捜しに来て泥まみれになるのか、という疑問は結局解けず、老生の不粋な検証結果となる)