アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 885

昨日、何者かが家の郵便受けに何かを投入し足早に立ち去った。不穏な気配を感じながら老生は少しだけ開けた木製扉から片手を伸ばし、郵便受けからその投入されたものを抜き取った。

滞納している家賃に業を煮やした家主による立退請求か、あるいは税金滞納に対する役所からの差押通告書か、戦々恐々としつつ封書を開けると、それは「狭山裁判を支援する市民の会」からの連絡であった。

書面によると、「皆様既にご存知のとおり、東京高裁の大野裁判長は英断を下すことなく昨年12月に退官し、石川一雄さんの再審請求は後任の家令 和典=裁判長が担当することとなりました」  とあった。

引き継いだ者はその全記録に目を通すということを考えれば、これは途方もなく時間が費やされることは明らかであり、これは家令という名の裁判長がよほど仕事ができる人物でない限り、石川被告の存命中に再審が開始される可能性は低くなるであろう。

同封された葉書の裏面。これは署名捺印し送付しよう。

                                            *

さて、狭山事件第二審公判調書へ移ろう。

事件当時の山狩りの模様。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書2758丁〜】

                    「第五十二回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

                                            *

宇津弁護人=「今まで五月三日のことをお尋ねしたのですけれども、善枝さんの死体が発見された日は何日か記憶していますか」

証人=「ちょっと申し上げますが、先ほど、電話をかけて連絡したというのをよく今考えてみましたんですが、誰か消防団の人を頼んだように私記憶しておりますので」

                                            *

裁判長=「そう訂正するわけですね」

証人=「はい」

                                            *

宇津弁護人=「その点に戻りますが、消防団の人に頼んであなた自身は山狩りから外れたんですか、続行したんですか」

証人=「外れてその場にいたんですが、幾人か消防団の人が残っていましてあとの人が続けたように思います」

宇津弁護人=「消防の人に連絡を頼んで山狩りはそのまま今までのように進行したということになるわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「で、あなたは山狩りそのものから外れた」

証人=「はい」

宇津弁護人=「今の言葉で言うとそこに残った」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そこで先ほどの質問に移りますが、善枝さんの死体が発見された日を覚えていますか」

証人=「四日じゃないかと思います」

宇津弁護人=「あなたは死体が発見された時に現場に行きましたか」

証人=「行きませんです」

宇津弁護人=「いわゆる、同じように山狩りの際に発見されたということでしたでしょうか」

証人=「それは後で聞きました」

宇津弁護人=「当時は山狩りを一旦その、じゅうたん的にずっとやった後は同じ所をもう一回やるということはしたんですか、しないんですか」

証人=「私は四日の日は」

宇津弁護人=「いや、一般的なことを聞いているんですがね、山狩りのやり方に戻りますが、同じ所をもう一度やるということはありましたか、ありませんか」

証人=「あると思います」

宇津弁護人=「いや、当時あったようですか」

証人=「私は堀兼の支所の方にその日は居たんで、よく分からないんですが」

宇津弁護人=「たとえばあなたがゴム紐を発見されたという地点を三日の山狩りの後でさらにもう一度やったということを聞いていますか」

証人=「やったともやらないとも聞いていませんです」

宇津弁護人=「やったということは聞いていないという風に聞けますか」

証人=「はい、やったやらないは聞いていなかったです」

宇津弁護人=「三日の山狩りのことですが、山狩り部隊全体ではどの範囲まで山狩りを行なったのですか」

証人=「三日の日は先ほど申し上げましたように一列に並んで行きまして、で、山が切れて畑になる所までやりました」

宇津弁護人=「どこまで山狩りをやりましたか」

証人=「畑になる所まではやったです」

宇津弁護人=「つまり先ほど予定された範囲は証言して頂きましたけれども」

証人=「はい」

宇津弁護人=「予定された範囲を全部やったということですか、五月三日に」

証人=「そうです。山を全部やったわけです」

宇津弁護人=「あなたが後で聞いたという、善枝さんの死体が出てきた所は五月三日の山狩りでは行なわなかった所になるわけですか」

証人=「はい」

宇津弁護人=「そうすると五月三日の山狩りと、あなたは参加しないにしても五月四日に行なわれた山狩りとの間に、やり方に何か方針の変化があったということを聞いてますか」

証人=「聞いてません」

宇津弁護人=「あなたの参加不参加は別として、山狩りは五月三日と四日にかけて行なわれたということではないでしょうか」

証人=「四日はまあ私も行かなかったので知らなかったんですけれども、やったのかも知れませんです」

宇津弁護人=「それは、やり方は五月三日の山狩りの延長という風に考えてよろしいわけですか」

証人=「いや、私は三日だけ言われて四日はもう行きませんので、まあはっきりそうだとも言えませんですが」

宇津弁護人=「特にやり方を変えたということは聞いてないわけですね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「証人はこの裁判で石川君が善枝さんを殺したと言われている場所、いわゆる犯行現場というものを知っていますか」

証人=「あとで何したから現在は大体見当がつきます」

宇津弁護人=「そのあなたが後で知ったという、いわゆる犯行現場は五月三日の山狩りの、あなたが歩いたかどうかは別ですよ、全体的な山狩りをすべき範囲に含まれていたのですか」

証人=「いました」

宇津弁護人=「あなた、前にも裁判所で質問を受けていることですが、あなたは石川君が鞄を捨てたという場所を図面に二回書かして、で、最初の図面に基づいて、まず第一回は捜しに行ったと、こういうことでしたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「あなたが最初に石川君に言わせた鞄を捨てた場所というのはどういう所だったと思いますか」

証人=「それはゴム紐のあった所から西の方へ少し行きました細い山道があるのですが、その山道の西側の山です」

宇津弁護人=「調書から伺えるところですが、最初はゴム紐も鞄も教科書も一緒くたにほっぽったと、まあ表現は正確じゃありませんがね、まあそういうようなことになっていたのですか」

証人=「いや、調書と言いますと」

宇津弁護人=「あなたが取った調書です」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

(続く)