【公判調書2741丁〜】
「第五十二回公判調書(供述)」
証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)
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宇津弁護人=「証人は時計が発見されたという現場に行ったことがあるという証言でしたね」
証人=「はい」
宇津弁護人=「何度行ったことがありますか」
証人=「一度でしょう。とにかく、発見された後に、突然にあそこへ行って」
宇津弁護人=「何度かと聞いておるんです」
証人=「一度だと思いますが」
宇津弁護人=「誰と行きましたか。一人ですか」
証人=「それも、先ほどお尋ねを受けたんですけれども、二人か三人行きましてね」
宇津弁護人=「一人ではないですね」
証人=「一人ではありません。おそらく、調べの合間でしたか何かに行ったと思いますが、一人でないとすれば、長谷部さんとか遠藤さんなんかが一緒じゃなかったかと思いますが」
宇津弁護人=「調べの合間というのは、それは時計の調べをしている際に、いずれかの日に行ったということですか」
証人=「いえ、時計の調べではありませんですね。とにかく、時計が発見になった後ですから」
宇津弁護人=「そうすると、取調べ担当だというあなたが、調べの間、時計の発見された現場にわざわざ行くというのは、どういう用件、あるいは目的があって行かれたのですか」
証人=「こういうこともあるんですね、私どもが・・・」
宇津弁護人=「一般的なことでなくて、そのとき、どういう用件で行かれたか」
証人=「そのときと言われても思い出せませんけど、こういうこともあるということを参考に聞いて下さい」
宇津弁護人=「私の質問に対してね、一般的なことではなくて」
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裁判長=「例証をまず述べて、それからあなたのそのときのことについて述べて下さい」
証人=「私が調べておりましても、その間に検事の調べもあったわけです。そうするとその間、手が空くわけですね、そういうときにあるいは、行ったかという風に、はっきりそうだったと断定は出来ませんけれども、そういうこともあり得るということを申し上げておきます」
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宇津弁護人=「だから、あなたが実際に行った記憶があるらしいが」
証人=「行ったことはあります」
宇津弁護人=「その行ったときの目的、用件は何だったんですか」
証人=「目的は時計のあった場所を見に行ったんです。時計の発見された場所を見に行ったわけです」
宇津弁護人=「誰かに案内を受けて行ったんですか」
証人=「私は誰かの案内を受けて行きました」
宇津弁護人=「いわゆる発見者と言われる老人に面会しましたか」
証人=「老人にね・・・・・・、おったかどうかね、現場にその人が。もう、おぼろげなんですが、今の私の記憶の中に何か、背の高い、身体のがっしりした人が発見してくれたんだという記憶があるんです。ですから、その日にそこにおったかどうか、記憶がありませんけれども、その日におったような記憶があります」
宇津弁護人=「あなたは小島朝政さんと時計の発見されたという場所に一緒に行った記憶ありますか」
証人=「ああ、さっきからそれをですね、小島さんが一緒だったかなと言おうと思っておったんですが、居たような気がするんですが、小島朝政さんが」
宇津弁護人=「あなたが今、小島さんと行ったと思われる時期は、ひどく雷雨があった直後にあたりませんか」
証人=「その日でしたか、その前日辺りですか、雨が降ったように思います」
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山梨検事=「先ほど、善枝ちゃんを縛った縄の出所についてね、被告人が自供する前に調べ官の方で掴んでいたのは家の周りの柵から持って来たことと、それから、たくさん捨ててあった場所があったんだと、これは茶畑と聞いていいんですか」
証人=「茶畑でしたでしょうかな。山がありまして、それで、その山の裾と言いますか、山林ですから道路の向こうに寄ったところの一角にたくさん捨ててありましたから、茶畑だったかどうか、はっきりしませんが」
山梨検事=「それから、山林のことだから、あちこちに縄のあるところがあるんだというような証言をされましたですね」
証人=「あるんだということでなくて、私どもの考えとして、あり得るという風に考えておったわけです」
山梨弁護人=「その中で、自供がある前に、一番これが可能性があるというか、これではないかという風に捜査官で考えていたのがあるんですか、それとも、そういう風に主眼を置いたというのは無かったんですか、どうなんでしょうか」
証人=「私どもといたしますと、これはありふれた縄ですから、今申しましたように、どこから持って来たか分からんというような白紙の状態でありましたですね。ただ、そういう風な場所に何箇所かあったという風に捜査官が調べてきておったと。私ども、事件の発生直後、縄がたくさん捨ててあるということで、見に行ったことがあるんですが、どこからということは考えておりませんでしたが、多分、その近所からであるだろうという推測は成り立ちました」
(続く)