アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1191

狭山事件公判調書第二審3686丁〜3688丁】

               「第六十六回公判調書(供述)」(昭和四十七年)  

証人=石川一雄被告人

                                            *

山梨検事=「今まで証人とか拘置所の看守なんかの証言から出て来たんだが、あなたは浦和拘置所の時代ですかなあ、自殺を計ったということがあったようだなぁ」

証人=「あったかも知れないですね。担当と喧嘩してかなぁ・・・。翌日かなぁ、八月頃ですね。三十八年の八月頃ですね」

山梨検事=「記録によると七月二十三日だが」

証人=「そうですか、自分は八月と記憶しておりますが」

山梨検事=「この前の証言なんかにも出てくるが、敷布を丸めたということを」

証人=「ええ、敷布裂いたと言ったが、裂いてなかったですね」

山梨検事=「で、どの段階でめっかったの」

証人=「布団の下に置いておいただけで」

山梨検事=「何をどうして下に置いておいた」

証人=「敷布を一番上に置くんです。それを布団の下に置いておいたからと」

山梨検事=「敷布を縄みたいなものに縒(よ)ったというような説明を・・・・・・」

証人=「いやそこまではないんじゃないんですか」

山梨検事=「あなた自身はどうしたんです」

証人=「ただ敷布を下に置いただけで、洗濯することになっていてね、時間がなかったんです。敷布もやろうかなと思ったんですが、時間だ、と言ったからすぐ布団の下に置いたんです」

山梨検事=「それでどうして自殺ということが分かるの」

証人=「一番上に置くんです、それを下に置いて隠しておいたからその前の日に担当看守と喧嘩したからねぇ」

山梨検事=「それですぐに自殺とは言えないでしょう」

証人=「それは看守のほうで判断したんでしょう。だから判断は分からない。自分としてもそういうことはよく考えなかったんですが、そういう風に向こうで考えたんですね、あの野郎怪しいと」

山梨検事=「敷布を縄のように捻(ねじ)って布団の下に隠しておいた、それがめっかったんで問題になったんじゃないんですか」

証人=「そこまでやらないですよ。そこまでやれば懲罰になってしまうんですよ。心得に書いてあったからね、そこまでやらないからね」

山梨検事=「それは懲罰に付するかどうかはね・・・」

証人=「拘置所で判断することだというんでしょう、そういう例があれば、これからもそういうことはないとは限らないからね。うるさいんじゃないの、ちゃんと心得に書いてあるんですからね」

山梨検事=「それは本人の心情を汲(く)んでだね・・・」

証人=「いやーそんなことないです。それならば十二月に革バンドかけて懲罰にかける、そこまではしないでしょう、そこまで自分をみてくれるならば」

山梨検事=「縄状に結んで布団の下に隠しておいたので問題にされたということはないですか」

証人=「そこまでやってないと思いますねえ」

山梨検事=「身分帳見れば分かることだがね」

証人=「それは自分はやってないです。警察でいくらそう言っても自分はやってないんですから、恐らく一時間たっても二時間たっても自分はやってないんですから」

山梨検事=「それで自殺ということになるのかな」

証人=「多分そうでしょう、自分はそうは考えないけれども向こうがそう考えたのだから」

山梨検事=「それでは誰が考えても自殺ということにはならないと思うがね」

証人=「だけど自殺ということ考えるんだったら、恐らくおれ懲罰にかけると思いますね、そこまでやれば」

山梨検事=「まあ、かける場合もあればかけない場合もあるでしょうが」

証人=「いや殆どかけますよ」

山梨検事=「布団をどういう風にした」

証人=「布団の下に置いたんですね」

山梨検事=「どういう風に敷布をしたんですか」

証人=「ただ下に置いたのかなぁ、とにかくね」

山梨検事=「どうやって」

証人=「丸めて下にね。普通、敷布は長いものでしょう、それを丸めて下に置いたからね。くしゃくしゃにしてね、多分そうだと思いますね。普通は一番上に畳んで置かなければならないんですね。自分は洗濯だって、十時十五分頃だったね、順番が来たから下に降りたんです。何ともなかったからね、自殺とも何ともなかったから、自分としてはそこまで考えてなかったと思いますねぇ、何か、そうだったら言うでしょう自分に」

山梨検事=「だから関さんが来たんじゃないんですか、原検事も飛んで来たんでしょう」

証人=「いや、原検事はそんなことを聞かないんですよ、石を置いたかどうかということだけ聞きに来たんですよ」

山梨検事=「関さんはこの前そういう風には言わなかったねえ」

証人=「何とも言わなかったですよ、区長もその時一緒に立会ったからね、関さんが恐らく飛んで来たのは接見禁止で接見したから、そういう風に言い訳になったんじゃないんですか。自分は今、そういう風に考えてます」

山梨検事=「最後に高橋良平の作業衣の問題でちょっと一点ですが、まあ作業衣を高橋から承諾を受けていたかいないか、という点で、あなた二回公判では、高橋も、おれの家に来た時に服を着ていたから了解を受けてると思う、というような言い方をしているんだが、この家に来た、というのはいつですか」

証人=「ええとねぇ・・・・・・・・・三月か、四月頃ですねぇ。三十八年の」

山梨検事=「で、三回公判では五月一日の日の話ね、入間川の駅に行ったら高橋良平が単車で通ったので、一応おれは高橋の方を見て隠れた」

証人=「隠れたです」

山梨検事=「なぜ隠れる必要があった」

証人=「作業衣を返さなかったからだと思いますね。だけど高橋はね、その前に自分のところに来た時には洗って返せと言ったんですね。自分ちに寄ると言ったんですね、その時は。それで普通だったら返さなくちゃならないんですね、洗って持って行かなくちゃならないです。それを自分は返さないでいたからじゃないですか」

山梨検事=「それじゃ、出て行って悪かったな、もうちょっと貸しておいてくれということを言えばいいでしょう」

証人=「だからそれを返さないから、そういう風になってしまったんです」

山梨検事=「隠れたの」

証人=「ええ」

                                                                  (以上  沢田怜子)

                                            *

昭和四十七年九月六日           東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官  重信義子

                                                      裁判所速記官  沢田怜子

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○今回で石川一雄被告への尋問は終え、法廷は次回、「鑑定」という問題へ進む。これは事件当時被害者の遺体を見分・検案・検視した五十嵐勝爾氏の報告書・鑑定書を、弁護団側に嘱託された鑑定人がそれをさらに鑑定するというものだ。内容はかなり専門的な話となり、凡人が理解出来るかどうか分からない。

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    ここからは狭山事件とは離れ、自衛隊で活躍している高機動車について触れたい。

この軍用車輌は見た者に屈強な印象を与えるが、しかしボンネットの材質はFRP、簡単に言えば強化プラスティック製である。

   コロナ禍前に開催された入間基地航空祭では高機動車も展示されており、付近には老生を含めこの軍用車に異常な興味を示す変人が群れていた。展示物に対する立ち入り禁止対策として高機動車の周囲には赤色のパイロンが置かれ、黄色の警告テープが張られていたが、その若くて弾けそうなプリンプリンの肌に触れようと、皆が靴先でパイロンを突つきその警戒範囲を狭めていった・・・。 

    やがて手の届く位置まで迫った高齢の変人がその指先でボンネットをノックすると、鈍くプラスティックの音が周りに響いた。「FRPだよ」「プラスティックだ」「ええ?」「弾が当たったらどうする」

    この答えはつまり、この高機動車の用途は人員の輸送や軍事物資の輸送にあり、弾丸の飛び交う最前線での使用は考慮に入れてないということだろうか。

     次に気になったのはフロント窓枠の、その両サイドに見受けられるヒンジである。

フロントピラー部が二分割されたように見える。この様な部位は一体化した成形の方が強度的に望ましいと思うが・・・・・・、

なるほど。写真は自衛隊の訓練状況から引用したものだが、フロントガラスはボンネット上に倒されている。あらかじめこの態勢が取れるよう設計されていたのだな。相手の攻撃に対し低姿勢で向かう・・・、カッコいい。