アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 880

【公判調書2744丁〜】

                 「第五十二回公判調書(供述)」

証人=青木一夫(五十六歳・川越市役所臨時嘱託)

                                            *

山梨検事=「(記録第七冊二〇七五丁の昭和三十八年六月二十四日付被告人の司法警察員に対する供述調書添付図面、及び二一一四丁の同年六月二十七日付被告人の司法警察員に対する供述調書添付図面を示す)この、二〇七五丁と二一一四丁の図面を見て下さい。これは先ほど弁護士さんから示されて、いずれも、その時計を捨てた場所の図面なんですがね」

証人=「はい」

上二点は2075丁添付図面。

下二点は2114丁添付図面。

山梨検事=「二〇七五丁のほうは、まあ非常に雑と言いますか、道路が一本線で書いてありますね。それから二一一四丁のほうは、少なくとも道路が道路幅を含んだ、いわゆる普通の、まあ丁寧に書いた図面ということになりますがね。これは、こういう風に二つの図面を簡単と複雑に書いておるわけですが、これはまあ、何か書くについての動機なり、何かあったんでしょうか」

証人=「当然、何か動機はあったんだと思いますが」

山梨検事=「したがって、その初めの図面を見ますと、時計を捨てた位置なんかは、もう一本の線、二つの線の交わったところに書くしか仕方ないんですわな」

証人=「これは最初の二〇七五丁ですか、これは本当に、その広い地域の中の一角を示したものだと思うんです。それから、二一一四丁、これはある程度具体的に位置を示したものだと私は推測するんですが、調書の内容は如何でございましょうか」

山梨検事=「見る人によっては二一一四丁の図面は、他の、被告人が書いた図面と比べると、非常に自信を持って書かれた図面だというような言い方をされる人があるんですがね。それは要するに、前の二〇七五丁の図面をそのまま道路を二つに書いたと見ていいんでしょうか」

証人=「まあ、そうとるより、とりようがないんですが、今申し上げましたように、これの具体化したものがこちらであるという風に私は思うんですが」

山梨検事=「だから、二一一四丁のほうは上手に書いてあると。上手というか、わかりませんが、ある程度自信を持って書かれている図面だと言えるわけでしょうな」

証人=「はあ」

山梨検事=「で、その二一一四丁の図面を書かした日の調書に、捨てたときの状況について、そのとき雨は降っていなかったかと、わざわざあなたが問を発しているんですがね。これは何か理由があったんでしょうか」

証人=「この調査する段階で天候等の状態を調べたわけです。ですからそのときに、たとえば何月何日の何時頃ということを言われた場合に、果たしてその頃ということが事実かどうかということを知るために、あるいは、そういう問を発しているかも知れません。自衛隊でしたか、どこかで、その当時の天候状態をずっと調べたものがあるわけです。だから、何月何日の何時頃、こういうことをしたという場合に、そういう問をしたことがあるかと思うんです。従いましてそういう、時計を捨てた時刻なら時刻に、ひょっとしたら雨が降っているかどうかですね、現実の問題として、それは何かどこかの記録の中に降雨状態というものを、調べたものがありますから、それを調べていただきたいと思います」

山梨検事=「その結果は、あなたの調書の上では、雨が降っていないという風に本人は答えているんですがね。で、検事調書では、雨が降っていたという風に言っておるんですがね」

証人=「さあ、検事調書のほうは私は全く見ていないから分かりませんが」

山梨検事=「まあ、何か特に印象を憶えておられたら」

証人=「特に印象ございません」

山梨検事=「(記録第七冊二〇四九丁の昭和三十八年六月二十三日付被告人の司法警察員に対する供述調書添付図面を示す)先ほどの牛乳壜の問題です。これは書いた字の説明が非常にはっきりしないんですが、まあ、この図面に書かれた字だけから推定すると、片方は牛乳壜を捨てたところとなっておりますし、片方は牛乳を捨てたところと、こういう風になっておるわけですが、これは牛乳壜が二本あるのだから、要するに、牛乳を捨てたところというのは、これは意味のないところなんで、そこが一本、それからこっちに一本ということじゃないでしょうか」

証人=「さあ、何かその牛乳のことについて、捨てた状況が調書に出ておりませんでしょうか。今、私がこれを見て、牛乳捨てたところと、牛乳壜を捨てたところとが別になっているんじゃないかという風に、ちょっと推測したんですがね」

山梨検事=「特に、そういう風に分けた説明があったところがあったわけですか」

証人=「記憶がないですね」

山梨検事=「素直に考えれば、牛乳壜を一本ずつそこへ捨てたという風に、いずれも線が引いてありますね、捨てた位置に」

証人=「どうでしたでしょうかな」

山梨検事=「それから、その次の二〇五〇丁、ちょっと見てくれませんか。これは前回、あなたの証言で、上のほうに万年筆で"この辺で自転車を俺が持つと受け取った"という記載がありますね」

証人=「はあ」

山梨検事=「これはいつ、というのは図面が出来上がったときか、どういう段階で、そのあなたが書かれたかということですが」

証人=「これは図面を書いて、説明を聞いたときに書いたものだと思いますが、説明を聞きながらですね。ですから、おそらく向かい合っていて、こっちへ書いたので、逆さになっているんじゃないかと思いますがね」

山梨検事=「そうすると、いわゆる調書の謄本なんかを作成する段階よりも前ですか」

証人=「当然、前だと思いますが」

山梨検事=「ちょっと裏を見て下さい。それはあなたの筆跡ですか」

証人=「私の筆跡じゃないでしょうね」

山梨検事=「どうも、ちょっと見ただけでも違うようですね」

証人=「はあ」

山梨検事=「少なくともあなたが作成した段階では、裏にカーボン紙なんかは敷いていなかったと見ていいわけですな」

証人=「はあ」

                                                                  (以上  佐藤房未)

昭和四十六年九月十日           東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官  佐藤治子

                                                                               佐藤房未