【公判調書3683丁〜】
「第六十六回公判調書(供述)」(昭和四十七年)
証人=石川一雄被告人
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山梨検事=「あなたとしては対弁護士じゃなくて、君の友だちか何かに対してはその話はしたことはないか」
証人=「友だちですか、そういうことは全然しません」
山梨検事=「豚小屋に寝泊りしている時に話をしたことはなかったか」
証人=「豚小屋に寝泊りしていた時は自分と義男だけですからね、自分の兄貴とは話してもそんなことは言うわけないから、当時は怪我してしまっていないから、自分が辞めるまでね」
山梨検事=「義男に話したことは」
証人=「義男はパイプの話、するもしないも知っていたんだからね、自分ちに置いたんだから知らないわけないでしょう」
山梨検事=「だからしたということになるの」
証人=「話するもしないも知っているんだからね、する必要ないでしょう」
山梨検事=「それは理屈だがね、それでしたということにはなるんじゃないの」
証人=「自分は話してないと思います。知っていたんだから」
山梨検事=「どの程度知っていた」
証人=「登利造が車で自分ちに置いたんだからね」
山梨検事=「誰々で」
証人=「おれ、登利造、北田収」
山梨検事=「それでジョンソン基地からパイプを盗んできたということは知っていたと、そういうことですね」
証人=「ああ義男なんか、石炭袋なんか被せて来たんですからね、義男なんかもパイプ出したあとそれを敷いたんですから、話す必要ないんです」
山梨検事=「もう六月四日には義男はその話を警察にしているんだね、何も君が一生懸命隠す必要もなかったね」
証人=「自分はそこまでは分からないんですよ、何しろ出たら登利造にやられると思ったから話さないんですよ。そんな検察官はそう判断するだけであってね、自分はそういうつもりでおったからね」
山梨検事=「当然その時、警察官が君にもそういう話をしたんじゃないの」
証人=「したならね、調書あるでしょう」
山梨検事=「それでジョンソン基地から盗んだというのは被害届が出てないから勘弁してやろうと言ったんじゃないのか」
証人=「言ったならそれは認めますが、言わなかったから認めなかったんです」
山梨検事=「そうか、まあそれくらいの問題なんだなあ。隠す、隠すといって重要視しているのは」
証人=「問題はともかくとしてね、自分は石田登利造は自分は怖かったからと言っているんじゃないですか、問題はそんなことは小さい問題ですよ、今考えれば」
山梨検事=「登利造は子供はある」
証人=「ありますよ、ありますけれども、自分の近所で登利造といったら知らない者ないですよ、ものすごくおっかないですからね」
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山梨検事=「それから、これも腑に落ちないんだが、まあ筆跡鑑定人に対して、あなたがよく答えておることなんだが、脅迫状を見せて原検事が練習をさしたと」
証人=「はい、まあ脅迫状ってはっきり言わないんです。脅迫状って言ってますか」
山梨検事=「何かセルロイドに入った・・・・・・」
証人=「はい」
山梨検事=「これが狭山署に捕まってから六月六日までは殆ど毎日、川越に行ってから六月二十六日頃までね、六月六日までは殆ど毎日だったと。何のために一体、原検事はそんなことを君にやらしたのか」
証人=「そこまでは自分は分からないですよ。セルロイドケースに入った、今から考えるとそうなんですよ、とにかく青い字が書いてあったね。何のためにって、そんなことは当時、自分には分からないですよ」
山梨検事=「当時、君は窃盗のほうは認めても、脅迫、殺人のほうは否認していたわけだろう」
証人=「はい、そうです」
山梨検事=「否認していた男が言われたままだな、大人しく写していたのか」
証人=「そうですよ、書けと言われたからね、これはだから弁護士さんにも話していたね」
山梨検事=「そういう態度を取っていたかどうか、極めて疑問だがね」
証人=「疑問と言われても原検事に言われたからね、書いたんですね」
山梨検事=「当時そんな窃盗のほうは認めても、脅迫とか善枝ちゃん殺しのほうは全然おれは関係したことはないんだと、そう言っていたんでしょう」
証人=「もちろんそうですよ、やったことないんですから、自分は」
山梨検事=「何で脅迫状を一生懸命にだね・・・・」
証人=「脅迫状だか何だか分からなかったんですよ」
山梨検事=「見れば分かるでしょう」
証人=「見ても分からないですよ、これ見て書けと言うから」
山梨検事=「読めば分かるでしょう、字は読めるでしょう」
証人=「字なんか分かんないですよ」
山梨検事=「字は読めなかったの」
証人=「そうですよ、だから自分が事件起こす前に字がありますか、殆どないでしょう、東鳩にある早退届だって人から書いてもらったのを写したんです。"かじ"とかね、それも弁護士さんに調べてもらったんですよ。"かじ"とか、"かじやま"とかね、そういうの全部調べてもらったんです。そして書いたやつを写したんですから、恐らく自分が書いたやつはないと思いますね。自分が、この事件起こる前は自分が字を書くなんてことないと思いますね、早退届以外には」
山梨検事=「脅迫状のひらがなの部分も何書いてあったか分からなかったというのか」
証人=「ええ、ただ夢中だったからね当時は。そういうのを書くのに。まして河本検事なんかすごかったからね。おっかなくて当審でも清水警部も述べてるけどね、毎日藁(わら)半紙に書かされたからね、殆ど。ただ一つね証拠として出てないのが不思議だと思うけれども、自分が漢字を習わされたような気がするんですよ。原検事は、自分が逮捕されて五、六日経ってから殆ど漢字ばかりだったようですね、それを書けと言って、そうですねぇ、それ二日間ばかり書かされたんですねぇ、それが出てるわけなんですけれども。拇印押せというので押したんですけど、それも出てないのが不思議なんですね」
(続く)
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○前回、ブログ末尾で入間基地(旧ジョンソン基地)について触れ、その基地内に駐車している高機動車にも触れた。狭山事件とは全く関係ないのであるがこの高機動車という物体が私の頭の中では狭山事件の隣に存在し、両者に対する興味を天秤にかけるとそれらの重みは釣り合うほどだ。
私が知る高機動車についての情報は、トヨタ製(トヨタ社が受注し日野が製造し自衛隊へ納入という説も)。4WS(ここでこのシステムについては触れない)。のちに高機動車の市販バージョンとして「メガクルーザー」なる車両が販売された(現在は製産終了)。販売価格が約一千万円であったにも関わらず中古車価格はそれを下回ることはない・・・・。
写真中央付近に見えるツマミをひねりエンジンを始動させる。
うむ、実にいい車だ。