アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1189

【公判調書3680丁〜】

               「第六十六回公判調書(供述)」(昭和四十七年)  

証人=石川一雄被告人

                                            *

山梨検事=「もう一つ尋ねるが、君としては五月一日は西武園にパチンコに行ったね」

証人=「はい」

山梨検事=「却(かえ)って、この法廷で言っているような事実であるとすれば、何も親父の口車に乗ってそんな余計な嘘を言う必要はないね」

証人=「当時は仕事をさぼっていたからです」

山梨検事=「さぼっていたから親父に対する手前という意味ですか」

証人=「いや、手前ということはないですけど、親父なんかも義男から聞かれたから多分、自分も聞かれるんじゃないか聞かれたらどこへ行っていたと、そこで正直に話しちゃったですね」

山梨検事=「そんなことはすぐ足がつくことだな」

証人=「そこまでは分からないです。我々は足がつくか、つかないか」

                                            *

山梨検事=「次に、裁判所で話すというジョンソン基地の問題。これはあなたは控訴審の二回公判の時に、今ここで言えますかという弁護人の質問に対して、ちょっと待ってもらいたい、といって述べなくて、三回公判になって内容を述べましたね」

証人=「はい」

山梨検事=「その二回公判の時に、その段階では弁護人にはその内容は示しておったんですか、示してなかったんですか」

証人=「誰とやったかということですか」

山梨検事=「要するにジョンソン基地に入った事件の内容」

証人=「はっきり言ってません」

山梨検事=「どの程度話しましたか」

証人=「三人でやったということはねぇ、パイプを盗んだということまで話さないけれども、ただ名前は挙げたかも知れません」

山梨検事=「二回公判当時のこと、二回公判は七月十三日だったんだが」

証人=「どの程度もう、答えたかというんでしょう、名前は教えられない・・・・・・」

山梨検事=「裁判所で、法廷で答えたんじゃなくて、弁護士さんに打明けて話しておったかということです」

                                            *

裁判長=「いつのことですか」

山梨検事=「四十年七月十三日の控訴審第二回公判廷まで弁護士さんにはその段階では、あなたはここで言えますか、ちょっと待ってもらいたいと言った段階では弁護士さんには」

証人=「話してないです」

山梨検事=「全然話してないの」

証人=「三人で悪いことをしたというのは話してましたが」

山梨検事=「それだけ」

証人=「ええ」

山梨検事=「しかしこれはこの前、中田弁護人がここで証人として答えた時にはだね、何か六月十五日ですかな、裁判所に言うというのは六月十三日の問題ですから、六月十五日の時にジョンソン基地のことを弁護士さんに言ったということじゃないんですか」

証人=「三十八年六月ですか。というと川越分室にいる時ですね。あ、いや、まだ狭山ですね。ジョンソンということは、俺は出なかったと思いますね。自分は登利造だけはどうしても伏せたかったからね、おっかなかったからねぇ、登利造というのはそこでは言えなかったと思いますねぇ。ジョンソンというとすぐ分かってしまうからねぇ、登利造が加わっているということは。ただ三人でやったということは話しました、それは裁判所に行って話すと」

山梨検事=「三人でやったということはいいんですが、やった内容ですよ」

証人=「内容まで具体的なことは話してなかったと思います」

山梨検事=「内容にもいろいろありますが、ジョンソン基地でパイプを盗んだというのは」

証人=「盗んだのは三人です」

山梨検事=「内容については何も話をしなかったの」

証人=「何も、というより具体的なことは話さなかったと思いますねぇ。自分としてはそういう記憶です」

山梨検事=「七月中、狭山にいる時」

証人=「ええ」

山梨検事=「話したのはいつの時になるわけ」

証人=「これは多分、十五日に話すといって川越に行ってからかな、話したとすれば。自分は東京に来てから弁護士さんに話したと思うんですがね、全部は」

山梨検事=「今聞いているのは、私の質問を聞いて考えて答えて下さい。二回公判の時に、あなたがその点今ここで言えますか、と弁護士に言われて」

証人=「ちょっと待って下さいと」

山梨検事=「そうそう、その段階では弁護士さんに話しておったかどうかということですよ」

証人=「その時は話していたかも知れませんね。いたでしょうねぇ。三人というのは何だって、自分がその、ここで無実を訴える時、それに対して三人というのはどうか、そういうことを考える時、三人というのは言ったかも知れませんね、多分」

山梨検事=「そうすると、弁護士に話をしたのはその段階では誰々とやったということもですか」

証人=「多分話したと思います。名前も挙げたと思います、裁判所では石田登利造にどうも疑問を持っておって・・・・・・」

山梨検事=「いやいやいいです。そうすると、二回公判の時に、ちょっと待ってもらいたい、などと言ってもそんな、かれこれ十年近い前の話だし」

証人=「十年ですか、三年でしょう、今だったらそうだが」

山梨検事=「そうそう、古い話だから言っても差し支えないだろうというような話は弁護士さんは言わなかったんですか」

証人=「そういう風に言われましたね。自分は無実で、すぐ出ると思ってたから、出たら登利造がおっかないから、自分はとってもおっかなかったからね、それだけはなるべく話すまい、話すまいと思ったんですね。自分は七月十三日ですか、自分は話さなかったんですけど次の三回ですか、その時は多分話したと思いますけど。どうしても話せと言われたから裁判所で真実を明らかにするために話せと言われて、話したと思いますね」

山梨検事=「そうすると弁護士さんに話をしたのは狭山時代には話してなくて・・・・・・」

証人=「いない、というのは断定的には言われませんけれども、多分そういう風に記憶しておりますね」

山梨検事=「川越に来てから話した」

証人=「話したとすれば川越に来てからだと思いますね。簡易裁判所に裁判官が来た時に話すって署長さんに約束してきたからね。裁判官に誰だと言われて、一応三人というのは自分は裁判所に行ってから話すって言ってきたから、秋葉裁判長かに話したからね。その日に弁護士も来ているから多分言っているかも知れないですね。ただしそこで登利造なんかの名前出したか、そこまではちょっと分からないんです」

山梨検事=「どこまで話したの」

証人=「事によったら登利造だけ抜かしてあとの人は全部話したかも知れない。どうしても登利造というのは名前は出しにくかったんですね」

(続く)

                                            *

    写真は航空自衛隊入間基地であるが、ここは事件当時頃までジョンソン基地であった。

    狭山事件の公判調書を読み「ほほう、ジョンソン基地から三人でパイプを盗んだのだな」などと昭和38年頃に思いを馳せつつ、現在では文化の日に同地で開催される入間基地航空祭の迫力を味わったりし、老生にとっては一粒で二度おいしい場所と化している。

    毎年、この入間基地航空祭を鑑賞して想うことは、我々および日本国は彼等に守られているのだな、という実感を得られることだ。例えば滑走路上に立ち航空機を誘導する隊員はその任務を完璧に遂行し、その無駄のない動作・立ち振舞いからは威厳すら感じられるのである。 朝酒をくらい充血した目でそれを見ていた老生は己を恥じ、隠れるための穴を探したほどだ。

(今年の航空祭にて)

基地内には大好きな高機動車も駐車しており老生の血圧は上がる一方であった。カッコいいな。