アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 891

昨日は、強風が吹く中、何とか晩飯を入手し生命を維持することに成功する。

酒瓶の右側に見えるビニール包みの平べったい物質はコンビニ特売おにぎりである。写真手前に写るのは本日のメインディッシュ、鮭塩焼きであり、これは干からびた大根おろしを添え、頂いた。はっきり言うと刑務所の食事の方がかなりマシに思えるが、しかしそこに酒は無く、食後の一服も望めない。ならばこの現状をこの上ない幸福と捉え受け入れよう・・・。

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昭和三十八年五月四日、狭山事件特別捜査本部が狭山市役所堀兼支所に設置され、本部長は中=県警刑事部長、副本部長は竹内=狭山署長、山中=県警鑑識課長、本部付警視として長谷部梅吉、将田政二が任命され、県下各署より八十二名の警察官の応援を得て、狭山署員を含め百六十五人の捜査員をもって構成された。これより先、三日の山狩りで、関 源三巡査部長が被害者中田善枝の自転車の荷台にカバンをしばっていたと思われるゴム紐を発見したと各紙は伝えた。関 源三の一審における証言で、入間川井戸窪の山林の中でS字形になって投げ出されていたという。この場所は現在すでに切り開かれて住宅地になっているが、急傾斜の山林で、どうしてこんなところを自転車で通ったのか、極めて不自然に考えられる場所である。なお、このとき新聞記者はゴム紐と一緒に「布地の切れはし」(毎日新聞5・4)を発見し、付近にタバコの「みどり」の包み紙と油じみた軍手袋の片方が落ちていたことを掴んでいるが、ゴム紐を除く物品の意味は少しも明らかにされていない。

このゴム紐が被害者中田善枝のものであったとすれば、事件の証拠品の最初の発見なのだが、発見者が関 巡査部長だったということを差し当たって記憶しておく必要がある。なぜならこののち、カバンを発見したのも彼であって、この事件に果たした関の役割は極めて大きいのである(狭山差別裁判第三版=部落解放同盟中央本部編より引用)。

【公判調書2778丁〜】

                    「第五十三回公判調書(供述)」

証人=関 源三(五十五歳・飯能警察署勤務、警部補)

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裁判長=「分かりますか、弁護人の言ってることが」

証人=「分かります」

裁判長=「それじゃ念のために、あなたの作った調書を読んで聞かせておきましょう。記録第七冊一九九六丁の表、三行目から、『その鞄を自転車のけつへくっつけて手紙を善枝ちゃんの家へ持って行き乍(なが)ら、捨てたんだね、自転車のけつには紐がついていたんだ、どんな紐だったかはっきりしたことはわかんなかった。それで善枝ちゃんが死んだ所から、山の中を山学校の方へ行って、山を出はずれる所の畑から二十メートルくらいで山の中から行くと、道の左側で三十メートルぐらいの所へ捨てたんだ。鞄の中には帳面と本があったのは知ってるけどその他何かあったと思うけどわかんなかった、それを自転車からおろして鞄ごと山の中へおっぽうっちゃったんだ、それから山学校の方を回って、善枝ちゃんの家へ手紙を持って行ったんだ、自転車の紐も鞄と一緒におっぽうっちゃったんだ、それっきり行かないから鞄がどうなっているか知らない』、そういう風になっていて、この前見せてもらった六月二十一日と鉛筆で、石川一夫と書いてある図面がくっついてるわけだ、それを今聞かれるわけです。それに答えて下さいというわけだね。紐から何十メートルというのは確かにこの調書には書いてない、そう初めから被告が言ったならば調書に書いてしかるべきものだということが確かにあるんじゃないか、それもくるめて弁護人は聞いているんだが」

証人=「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

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宇津弁護人=「どうですか」

証人=「よく分からなくなってしまったんです」

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裁判長=「よく分からないというのは、最初から紐から西のほう五、六十メートルの所に鞄は捨てたんだと被告人が言ったんだか言わないんだか、それが分からないというのか、どの辺がか、はっきり言えるなら言って下さい」

証人=「一緒に捨てたというのと、実際の図面で見ると、ゴム紐より五十メートルも離れているのを、じゃあ、そこがおかしいからどうしたんだと、そのことは、どうもはっきり分からないですが」

裁判長=「(記録第七冊一九九九丁、昭和三十八年六月二十一日付被告人の供述調書添付図面を示す)この図面でそういうことが分かるのですか」

証人=「この間ここへ来た時にこの⬜︎印のところが鞄を捨てた位置と言いましたが今もそう思っているわけです。で、これとこれが約五十メートルくらいです」

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宇津弁護人=「これとこれというのは」

証人=「この✖️印だと思うんです。学校の方から来た道の西側のここから四、五十メートルくらいあるわけです」

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裁判長=「その図面には、あまり説明の文句が書いてないんだが、ここは紐を捨てたところというような説明がないでしょう、ここに」

証人=「はい」

裁判長=「どうして説明をつけさせなかったの、ここは紐を捨てた所、この四角いところは鞄を捨てた所という風に被告が図面において示したならば、そう書かしておけば調書と相まって一番よく分かる。調書の中には確かに一緒に捨てたと、一緒に捨てたというのは、疑えば、場所的意味の一緒というのか、その時の時間的あるいは五十メートルやそこらぐらいの距離はあっても、大体その辺という風な意味の一緒を意味するのか、それは考えられないこともないが、まあ正確を欠くね。一緒と言うんだから同じ所だという風に普通考えるかもしれない、それを図面の上で説明させなかった。というのは、ほかの図面では説明させてるところがあるでしょう、これは何かを捨てた所とか書かしてある、ほかの図面ではね」

証人=「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

裁判長=「あなたはほかの図面には関係してないのか、二十日と二十一日だけか」

証人=「はい」

裁判長=「ほかの警察官が書かせたのでは、これは時計を捨てた所とか、何をした所という風に書かせてあるんだ。それは符号だけで⬜︎とか✖️しかないから、✖️は紐を捨てた所、⬜︎は鞄を捨てた所というのが図面の上じゃ分からない。あなたの説明を待たなければ分からないんでそれも今日になってみると"だろう"という証言しか出来ない原因になってるわけだね」

証人=「はい」

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宇津弁護人=「あなたは、当時の理解としてゴム紐を捨てた所は、インクの染みがあって隣に✖️がありますね、ここだと言われたんですか」

証人=「じゃないかと思うんですが」

宇津弁護人=「その✖️の下の印は何であるか思い出しませんか」

証人=「これは、今言われたんですけれども、細かい点が分からないんで・・・・・・」

宇津弁護人=「あなたは、地元にある程度長くお住まいになっていた方のようですが、ゴム紐と鞄を一緒におっぽったという言葉の意味ですが、たとえばそこに一緒にぽんと捨てたんだという風な理解になりますか」

証人=「それは、私一緒というのは、ある程度の付近も一緒のうちに入ると思ったんです」

宇津弁護人=「狭山地方でごく一般的に、これとこれを一緒におっぽったんだと言う時に、それは一緒に捨てたんだということになるんじゃないですか」

証人=「一カ所にまとめてという意味ですか」

宇津弁護人=「二つの物を持ってて、一緒におっぽったということは、そこに、それは何センチの隔たりがあるかは別として一緒にそこへ捨てたということになりませんか」

証人=「一緒におっぽったということは、同じでなくても、そんなに遠くはない所に捨てたというのが普通、一緒に捨てたと言ってるんです」

宇津弁護人=「今、裁判長のほうで、多少離れても一緒におっぽったという意味が含まれているのではないかと言ったのであなたはそういう風に言ったんじゃないですか」

証人=「いや、そういうことはありません」

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裁判長=「いや、裁判所は、そういうことは言いませんよ、あり得ると言ったんです」

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宇津弁護人=「あり得るということをヒントに言ったんじゃないですか」

証人=「そうじゃないです。ただ一ヶ所にまとめる、そういうことも含めてるんですが、そう遠くない範囲に捨てたのも、まあ、普通一緒におっぽったと、そういう風に言ってますから」

宇津弁護人=「あなたの言い方によると、ゴム紐と鞄を五、六十メートル 離れた所に捨てたという意味を、一緒におっぽったんだという風に理解していたということになるんですか」

証人=「その点が、五十メートルも離れてるということになると、一緒に捨てたというのもおかしいと思うんです。五メートルとか十メートル、そのへんならばあれですが」

(続く)

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