アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 968

【公判調書3027丁〜】

                 「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

石川被告人=「六月の再逮捕されてからですけれども、雨が漏って使えないことがありましたね、取調室が。それで弁護士接見室を使ったことがあるんですが」

証人=「あったかも知れませんな、ちょっと」

石川被告人=「雨が漏ったということは」

証人=「雨が漏ったかも知れませんなあ、言われてみると記憶が出てきますね」

石川被告人=「二回、自分としてもあるんですが雨が、漏ったということが」

証人=「そうかも知れませんなあ・・・・・・」

石川被告人=「その点思い出して下さい」

証人=「あるかも知れませんよ」

石川被告人=「何回くらいですか」

証人=「いや当時のことは何回かと言われても記憶ないが、そういう雨が漏ったというようなことを言われてみると漏ったなあ、という感じが致します」

石川被告人=「昼間ですか、夜ですか」

証人=「昼間じゃないですか」

石川被告人=「前、夜漏ったというようなことを誰か言ってるんですね。夜、取調べはどうです」

証人=「夜はないですね、石川君も夜調べられたことはないでしょう」

石川被告人=「はい。遠藤さんは取調べの時に腕時計は持ってましたか」

証人=「持っておりましたね」

石川被告人=「川越に行ってから夜七時すぎる頃、腕時計はめて来なかったのはどういうわけですか。長谷部さんも青木さんも持ってないと言ったけれども、遠藤さんはどういうわけです」

証人=「私は腕時計はめてましたよ」

石川被告人=「ほとんどかけてなかったですね、当時調べ室から帰って、留置場から西北に当たるんですけれども、柱時計が鳴るんです、教会の。教会があったのはご存じですか」

証人=「あったかも知れませんね」

石川被告人=「留置場の西北か、はっきりしませんが教会があったんですね、そこの柱時計の音が鳴るんで何時かということがよく分かったんですが、何故そういうことかというと、遠藤さんは夜、調べる時に腕時計を持ってなかったから、そこへ帰って初めて分かるんです。夜、看守が二人付いていてお前どうして分かるんだと言うから、柱時計が鳴っているというようなことを言ったんですね、自分は」

証人=「石川君に何時だと聞かれて教えなかったことはないじゃないですか、私は」

石川被告人=「そんなことはないですよ」

証人=「石川君に何時だと聞かれて今何時だということを言わなかったことは、聞かれた場合ですよ、聞かれないのに何時だよ、というようなことを言ったことはございませんが、聞かれれば何時だよというようなことはちゃんと教えたんです」

石川被告人=「昼間聞いたことはありますけれども、夜など遠藤さん達、はめて来ないということは不思議に思ったんですよ」

証人=「そんなことはないでしょう、私に限ってそういうことはないです。石川君に今何時だと聞かれて教えなかったことはないでしょう。まあ裁判長の前でこういうことを言うとどうかと思いますが、私も子を持つ親の一人ですから」

石川被告人=「再逮捕されてから食パンなんか買いに行ったことは遠藤さんも何回かあるんじゃないですか。長谷部さんが持って来てくれたんだけれども」

証人=「他のあそこに詰めておった人に、長谷部さんか青木さんかその他の者が言いつけて買って来てもらったと思いますが、私はその使いはやったことはありません」

石川被告人=「金額の細かいことまで入るんですけれども、絶食したんです、五百八十三円か四円とか、六月十八日です、その頃から絶食が始まったんです。その前に不味いからというので長谷部警視にパンを買ってほしいと言って、四日間で五百八十四円かその記憶がまだあるんです、そういうことを計算していくと、大体一日にパン五個か六個を、ということになりますね、そうすると、十九日頃から絶食を始めたと、自分は五日間くらい絶食したというように記憶しておるんですが、その点はどうですか、何日くらい絶食したか」

証人=「そんなに絶食したでしょうか、とにかく、どなただか弁護士さんにお答えしましたが、とにかく斉藤さんだと記憶しておるんだが、あの人が」

石川被告人=「留五郎さんね」

証人=「あの人が監視にあたったんですね、留置場の看守に、それが石川君がごちそうさま、と言って出すというと、開けてみると、中がいっぱいで箸を付けてなかったというようなことからして、ごはんを食べてない、ということになったわけでしょう。それでどうして食べないんだという話を石川君が聞かれたわけだ、その時私等が聞いている範囲では弁当箱がくさくて食えないんだという話で、それで弁当を食わなかったということからして、その後、そういう話をするのもどうかと思いますけれども、私のところに運んで来たのと同じものを私が石川君にやっているんです」

石川被告人=「何日くらいですか」

証人=「何日か記憶ありませんけれどもやったことについては記憶あります、石川君にちゃんと取調室でもって朝も昼も、という具合に我々と同じめしをやってあるんじゃないんですか」

石川被告人=「それはあります。当審で、先ほどの関巡査部長が当審では絶食三日後に自白したということを言ってるんですね」

証人=「そうですかなあ、そういうことはどうか、と思いますね」

石川被告人=「署長から言われて来たということを述べているんですが」

証人=「私は私なりの記憶からいって分かっていることは申し上げるが、分からないことは申し上げられないんです。私の知っているのは弁当箱がくさいということで手をつけなかったというので、こちらのご飯をというので我々と一緒のものを石川君は食べていたんですよ。そういうことでしたねえ、その後は」

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昭和四十七年二月二十一日   東京高等裁判所第四刑事部

裁判所速記官                      佐藤治子  重信義子  沢田怜子