【公判調書3024丁〜】
「第五十六回公判調書(供述)」
証人=遠藤 三(かつ)・七十歳
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山上弁護人=「石川君が単独自供をしたということになってる後は、青木さんとかあなたは共犯という筋は消えたといいますか、全然考えなかったんですか。あなたが無心だと言うから聞きたくなるんですが、主として取調べにあたったあなた方の考えの中に、三人説とか共犯説とかは考える余地はないんで、全く単独犯ということで、自供ということを信用してずっと捜査が進んだということになりますか」
証人=「ということになります。というのは何回も間違いないか、間違いないかということは念を押しておりますから、間違いございませんということで、ずっとその通りとってますから」
山上弁護人=「単独自供したあとの、だいぶあとの六月二十五日にも、埋(うず)めることを誰かに手伝ってもらったかということを、ちゃんと聞いているでしょう、疑っておったんでしょう」
証人=「ええ、間違いないかということを確かめるためにはやります。それはやらんことはないです。間違ったら大変ですから、単独自供したあとでも間違いないか、間違いないかということを、念を押しますよ」
山上弁護人=「無心というようなことを聞いたので聞くんだけれども、供述調書を書く時、それぞれの冒頭には『自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げて取調べたところ』とちゃんと書いてるでしょう。あなたは取調べたんでしょう、警官として無心ということはないでしょう。逮捕された被疑事実について、それを立証されるということがあなたの立場でしょう、無心ということがありますか」
証人=「それはどういうことでしょう」
山上弁護人=「無心だったというからね、これは取調べたと書いてあるでしょう」
証人=「それは勿論そうですよ」
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裁判長=「それはもう水掛論になるから、それは調書のあれで、やればいいんじゃないんですか」
山上弁護人=「自供調書を一貫して立会っておる遠藤証人が、裁判長はそういうことはよく分かっているという、そういう趣旨で受け取ります」
裁判長=「それは結構です」
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石田弁護人=「六月二十日、裁判官が川越署分室へ勾留尋問で来たのを本当に知らないんですか」
証人=「知らんのじゃない立会わなかったということですよ」
石田弁護人=「来たのは知っている」
証人=「来たんじゃないかと思いますけれども」
石田弁護人=「忘れた」
証人=「ええ、忘れております。というよりも、もう記憶がないんですよ」
石田弁護人=「それで、誰から聞いたんでもいいんですが、裁判官が当時の被疑者、現在の被告を取調べの際、どういう風に裁判官に対して答えたかということを聞いて知っておるんじゃありませんか」
証人=「そういうことは分かりませんねぇ、裁判官にどういう風に答えたかは」
石田弁護人=「誰から聞いたかは別として聞いておらないですか」
証人=「誰からか、あるいは聞いたかも知れませんけれども、今どういう風に聞いたかということは記憶ございません」
石田弁護人=「聞いた内容は忘れたと」
証人=「はい、分かりません」
石田弁護人=「赤心堂病院というのがあるのはご存じでしょう」
証人=「言われて、そうだったかな、という感じがするだけで・・・・・・」
石田弁護人=「そこのお医者さんを長谷部さんなりあなたなりが分室へ呼んで一雄君の体を診させたかどうか、その点は記憶、本当にないですか」
証人=「記憶ありません、記憶はないんだけれども、とにかく前に申し上げたように、お弁当を食わなかったという関係で、どこか具合が悪いんじゃないかということがあったかも知れません。したがって医者にみせたかも知れませんけれども、どこの医者にみせたとか、いつみせたというようなことは記憶ないんです」
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石川被告人=「狭山署にいる時のことを聞きますけれども、その時遠藤さんはどういう立場で自分を調べておったんですか」
証人=「立場ですか」
石川被告人=「結局、清水警部がいたでしょう、あの人が調べている時、遠藤さんが六月五日頃だと記憶しておるんですけれども、その当時から遠藤さんは主として清水さんが調書をとって、その時遠藤さんが口を出して調べていたんじゃないんですか」
証人=「勿論先ほど申し上げたように主任官が調べる時に、私もそこに、調べにまあ、ずっとじゃなくて、いわゆる調べ足らんところについては私の方からも助言をしておったということになりますね」
石川被告人=「何日頃から加わるようになったんですか」
証人=「はてなあ・・・・・・。多分六月に入ってから間もなくじゃなかったかと思いますが」
石川被告人=「再逮捕される二、三日前に記念写真撮ったのはご存じですか。遠藤さんも長谷部さんもいたと思いましたねぇ、調べ室で。前、清水警部が来て当審でそういうことは述べているんですが」
証人=「記憶ないですね」
石川被告人=「手錠の件について、遠藤さんいる時はどうだったですか、両方外したとか、片手外したとかは。川越にいる時に遠藤さんが捕縄を持っていたですね」
証人=「はい」
石川被告人=「狭山にいる時からそうだったですか」
証人=「私が立会った時にはあるいは、狭山にいる時もそうだったかも知れませんね」
石川被告人=「ほとんど、両手、片手錠とすると」
証人=「両手ということはおそらくなかったんじゃないかと思いますが片方だったと思いますね」
石川被告人=「全部外したことはないですね、ほとんど」
証人=「そんなことはないですね、全部外したこともあれば、いろいろですね。片方の時もあれば、両方の時というのはおそらくないでしょう」
石川被告人=「外したのですよ、両方外したことはないですよ」
証人=「ないかも知れませんが、あったかも知れませんよ」
石川被告人=「雷が鳴った時、片手錠かけてあったんですね、当審で、飛びますけれども、川越に行ってから六月二十七、八日頃、雷がものすごく鳴った時、遠藤さんが雷が鳴ったから手錠を外してやろうかと、両方外してやろうかというようなことを言ったことはあるんですが、当審でそういうことを述べたことがあるんですが」
証人=「この前ですか」
石川被告人=「ええ、ですから、自分としてはほとんど両手錠外されたということはないんですね、自分としては。遠藤さんもないでしょう」
証人=「両方外したことは、それはおそらくないと思いますよ」
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裁判長=「ちょっと、あなたさっき両手錠かけたということはない、かけたとすればおそらく片手錠で、両手錠外したこともあったかも知れませんと言ったが、今の答えはそれと違うことを言うわけですか」
証人=「いや違いません」
裁判長=「両手錠外したことはほとんどないと言ったんだね」
証人=「両手錠外したことはほとんどなかったと思いますが、あるいは両方外したこともあったかも知れませんと」
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石川被告人=「遠藤さんがいる時はそういうことはなかったんじゃないですか。遠藤さんがいる時、途中でお茶汲みなんかに立つ時は椅子に縛って立って行ったんじゃないんですか」
証人=「両方の手錠を外したことはない、おそらく片方の手はかかっておったんじゃないかと、かけてあっただろうと、だけれども長い間だから記憶ないけれども両方外したこともあるいはあるかも知れませんと、こういう話なんです」
石川被告人=「遠藤さんはそういう記憶あるんですか」
証人=「はっきり覚えてないんですよ」
(続く)
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ところで私は気分転換のため入間川河川敷沿いを散策していたが、ここで見覚えのある猫に遭遇した。
実は今、入間川周辺では盛んに河川敷の護岸工事が行なわれており、この地に長く住まわれた猫達はその居住地を新たに探さねばならない状況に追いやられている。立退料として高級チュールなど一年分相当が保証されたかと思いきや、そういった配慮は全く無く、彼ら彼女らは行政システムから完全に排除されている模様である。
こちらは2022年10月23日.12時53分撮影の同猫。この二年後が1枚目の写真であり、見ての通り明らかに痩せていた。