アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 651

(当時の街灯も無い道は、真夜中など、肝が据わった者以外通れぬだろう・・・。写真は狭山事件裁判資料より転載)

【公判調書2031丁〜】

                  「第四十一回公判調書(供述)」⑩

証人=竹内武雄(五十六歳・埼玉県交通教育協会評議員。事件当時、狭山警察署長)

                                          *

中田弁護人=「堀兼に捜査本部があった時期がありますね」

証人=「はい」

中田弁護人=「堀兼の捜査本部を引揚げたのはいつですか」

証人=「七月上旬だと思います、はっきり期日は覚えてません」

中田弁護人=「五月二十三日に石川一雄君が逮捕されたんですが、石川君が逮捕されてから六月十七日川越警察の分室に移されるまでの間、あなたは主としてどこで執務しておりましたか」

証人=「堀兼の捜査本部です」

中田弁護人=「大体毎日捜査本部に行くということですか」

証人=「毎日ですね」

中田弁護人=「狭山警察署にはいないんですか」

証人=「警察署には一般の事務をせいぜい一時間くらいで、こちらに来てました。決裁をしてすぐ捜査本部に殆ど、夜遅くまで勤務していたということです」

中田弁護人=「午前中の証言で、あなたは日に二、三回は新聞記者に会っていたんだという趣旨のことを言いましたね」

証人=「はい」

中田弁護人=「時期的にはいつのことでしょう」

証人=「まあ記憶ははっきりしておりませんが、最初の晩、張込みをして犯人に逃げられた、その晩、それから若干間を置きまして数日後か、一週間後、最初は刑事部長の本部長という意味で、刑事部長が会見して、私が脇添えという形におったんですが、そのうち段々捜査が進んできまして、途中から私が引継いだような形になって、はっきり期日は覚えておりませんが、多分六月中旬頃から大体私が関係してると思います」

中田弁護人=「最初は中さんがやっていたのを引継ぐ形になった」

証人=「当時鑑識課長も鑑識の方についてやっていたんです」

中田弁護人=「山中さん」

証人=「はい。やはり副本部長ですから鑑識の面についてだけは発表しました」

中田弁護人=「引継ぐということは中本部長が当らないようにすると、まあ簡単に言えばそうですね」

証人=「非常に人員も多いし、県下から集めたことであるし、構成というか、なかなか気心もまあ・・・・・・、忙しいということで中さんが主として捜査のほうを中心に全部を見るという形になったと思いますので」

中田弁護人=「六月中旬ということですけれども、まだ石川君が狭山署にいる頃ですか」

証人=「ええ、いる頃私が多分会見した覚えがあります」

中田弁護人=「その記者会見はどこでするんですか」

証人=「狭山署の二階で主として、あるいは段々人数が少なくなって現地でもやったことがあります。まあ原則としては狭山署の二階で一日二回程度は記者会見に臨んだと思います」

中田弁護人=「記者会見をなさる時にはその当時の捜査状況がどうであるかについては正確に知ってなければなりませんね」

証人=「そうですね」

中田弁護人=「それは主として、あなたとしては各捜査官からの報告を基にしたんですか」

証人=「いえ、直接じゃなくて、まあ中さんと相談して、まあ、この、こういう点については現在まあ大丈夫だろう、捜査上支障ないだろうと判断をすると、発表した形です」

中田弁護人=「発表する中身については中さんと相談されたんですか。どういうことを発表するかという選択ですが、その基になる材料は誰から聞いたんですか」

証人=「私ですか、私は直接捜査員に聞いてません」

中田弁護人=「誰があなたに」

証人=「中さんと相談して、中さんはあるいは当時の次席の将田ですか、それに、ずっと順序を経てまとめたと思いますが、私は直接捜査員からは聞かないです」

中田弁護人=「あなたはむしろ正確に言えば中さんから聞いたことを・・・・・・」

証人=「捜査本部として発表すべきものを発表するのがそういう記者会見というかっこうです」

中田弁護人=「あなたが記者会見を引継がれたのは、先ほど証言した関巡査部長と一緒に石川一雄君に会う前でしょうか、あとでしょうか」

証人=「その前からずっと会ってました」

中田弁護人=「いや引継いで、あなたが主として会うようになったのは六月中旬と仰いましたね」

証人=「五月でしょう」

                                          *

裁判長=「さっき六月と言ったね」

証人=「六月じゃなくて五月ですね、まだ全然捜査が進まないうちから会ってましたから五月ですね」

                                         * 

中田弁護人=「石川君が狭山警察署にいる間、五月二十三日から六月十七日までの間も同じように記者会見をあなたとしては続けていたんですか」

証人=「主として、私ですね。しかしまあ、石川被疑者を逮捕した一、二回は刑事部長がやったと思います、最初に発表は。その後私がまた引継ぐというか私がやったと思います」

中田弁護人=「石川君が再逮捕されて川越警察署の分室に移されてしばらくの間、あなたは記者会見をやってないでしょう」

証人=「ええ、してません」

中田弁護人=「どうしてしなかったんですか」

証人=「どうしてというか私の方はまあ向こうに移しまして、捜査本部はこっちにあって、事務処理はしておりましたが、実際の取調べなどは川越に移してますから、強いて私は記者会見はしなかったんですね」

中田弁護人=「中さんもしてないでしょう」

証人=「その辺どうか、記憶ないですが、多分いちいちその前のようにはしてないと思います」

中田弁護人=「再逮捕してからは、川越に移ってからは、あなたが記者会見をしていたのを中さんに引継いだという事実は特にないんですね」

証人=「ないです」

中田弁護人=「あなたとしては川越署に移ったことでもあるし、取調べに直接関与してないので、記者会見はやらんようになったと、こういうわけですか」

証人=「そうですね」

中田弁護人=「当時、中さんはどこにいました。主として再逮捕後です」

証人=「まだ堀兼にいました」

中田弁護人=「中さんからしばらく記者には会わないでおこうという相談がありませんでしたか」

証人=「そんな相談はありません」(続く)

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中さん=中  勲。事件当時、埼玉県警刑事部長・狭山事件特捜本部長。