弁護人=「石川君が接見禁止中に検察官が石川君を浦和拘置所において取調べたことがありませんか」 証人=「ございます。一回か二回来られたと思います」 弁護人=「原正という検事さんでしょう」 証人=「はい」 弁護人=「ご存じですね」 証人=「知っております」 弁護人=「原検事が狭山警察署の巡査部長と一緒に来たという記憶はありませんか」 証人=「あります。一緒にですか・・・・・・、来られたと思います。一回は二人で来られたように記憶しております」 弁護人=「関源三という狭山署の巡査部長を知っておりますか」 証人=「知っております」 弁護人=「その人が原さんと一緒に来たんですね」 証人=「検察官と一回来られたのは記憶しております」 弁護人=「検察官と一緒じゃなくて、関巡査部長だけが来たことありませんか」 証人=「ございます。面会かたがた来られました」 弁護人=「警察官であっても接見禁止中には接見させないんじゃないですか」 証人=「接見禁止中ですか」 弁護人=「関さんが接見禁止中に来なかったかと聞いているんです」 証人=「その時は参りません、その後です」 弁護人=「検察官が来られた時には、その検察官は実際に取調べをなさったんでしょうか」 証人=「取調べの事は、その場には入って行きませんから、部屋の中には。どのような内容で来られたか存じませんが約五、六分でもって帰られたと思います」弁護人=「大変短い時間」 証人=「はい」 弁護人=「その検察官が来られた頃、石川君は房内で何か作業をしておりませんでしたか」 証人=「作業はやっておりません」 弁護人=「石川君は浦和拘置所に居る間なんか作業をしていたんじゃないですか」 証人=「いや、石川君は房内にいる時は作業はやってないと思います。記憶はありません」 弁護人=「未決の人でも請願で作業をすることがありますね」 証人=「はい」 弁護人=「石川君は袋貼りの仕事をしておりませんでしたか」 証人=「袋貼りはやらないと思いましたが、請願作業をやったような記憶はしておりません」 弁護人=「石川君が房内にいる時に、房内にあなたが入って行くようなことはありましたか」 証人=「別に私自身単独で中に入ったことはございませんです」 弁護人=「一般的なことを伺いますが、未決の被告人は房内では起訴状その他の書類は持つことが出来るんでしょうか」 証人=「起訴状ですか、持つこと出来ます」 弁護人=「冒頭陳述書のようなものも持っておれますか」 証人=「いいえ、この件について起訴状が来たと見せて区のほうに出して領置して貰いたいと本人が言ってすぐ領置します。もし紛失するといけませんから」 弁護人=「やっぱり領置してしまうわけですか」 証人=「ええ、そうです」 弁護人=「接見禁止中であった頃、あなたが石川君に何か書面を房内で手渡したことがありませんか」 証人=「房内でですか、そういう記憶はございません」 弁護人=「房内に限らなくても結構ですが、まあ然るべき手続きを取ってあなたから書面を渡したことがありませんか」 証人=「ありません」 弁護人=「あなたは、石川君が起訴されている事件について自白しているということは知っていたんでしょう」 証人=「分かっておりました」 弁護人=「石川君は起訴状をどういう風にしていたか今覚えてますか。先程言われたように、見ただけで直ぐ領置をして下さいと願い出たかどうか」 証人=「石川君の場合は多分しばらくというか、持っておりまして、それから領置したように記憶しております」 弁護人=「そうすると領置せずに書類を房内で持っていることもあるわけですか」 証人=「そういう場合もあります」 弁護人=「起訴状ではなくて、ワラ半紙三枚くらいの紙にボールペンで書かれた書面を石川君が持っていたことがありませんか」 証人=「そういう記憶は、覚えておりません」 弁護人=「あなたが、そのような書面を石川君に渡したことはありませんか」 証人=「私のほうから渡したこともありませんです」弁護人=「あなたは石川君がどのような自白をしていたか、もっとも細かい事はお分かりにならないでしょうけれども、おおよそどのような事件でどのような自白をしていたか、分かってましたか」 証人=「まあ被害者をやったのはおれだと、こういった程度の事しか私は想像出来ませんでした」 弁護人=「想像出来なかったというのはどういう意味ですか」 証人=「いや、その程度の事しか私は聞いておりませんから」 弁護人=「あなたはその自白に関して誰からお聞きになったんです」 証人=「本人におかあさんと弟さんが面会に来た時に私が立会いましてですね」 弁護人=「刑務所では家族の人やなんかにそういう自白の内容やなんかを話させないでしょう」 証人=「おかあさんと弟さんが、この事件を起こしたのはあんちゃんじゃないと言った時に、いや俺だということを、それで事件のことは話さないようにそれきり止めましたから、あと詳しいことは聞きません」 弁護人=「区長自身、立会われることもある」 証人=「あります」 弁護人=「重大犯に関するものに立会うと」 証人=「別にそうではありません」 弁護人=「今言われた面会の時以外に、あなた自身はもう少し被告人の自白内容を知っていたんじゃないですか」 証人=「本人の自白内容は別に聞いたこともございませんから、内容についてはよく分かりません」 弁護人=「もういっぺん重ねて聞きますが、接見禁止中であった三十八年八月頃暑い盛りに、あなたはワラ半紙三枚くらいに書かれた書面を被告人に渡したことはありませんか」 証人=「記憶にありません」・・・続く。
*公判調書1270丁では、ここで一旦区切られており、もしかすると休憩でも挟んだのかも知れない。ところで弁護人が重ねて聞いたワラ半紙三枚ほどの書面とは何を指すのか、前回の血書に続き、脳内に保留する事項が増えるばかりである。気分転換に自転車で旅に出てみると老生はたくさんの友だちに会えた。
コイツは初対面である。
コイツには兄弟が五匹いる。
これは・・・
この二匹と兄弟のようだ。
もつれ合う兄弟。お幸せに。