アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 635

(狭山事件検証調書より転載)

【公判調書1979丁〜】

                    「第四十回公判調書(供述)」⑱ 

証人=河本仁之(三十七歳・弁護士。事件当時、浦和地検検察官)

                                          *

石田弁護人=「被告人が自白したのち、あなたが最初に被告人を取調べたときには若干曖昧な点もあるようですが、調書を作成したような記憶がある、と述べましたね」

証人=「多分しただろうと思います」

石田弁護人=「その調書は一審で法廷に提出されたかどうか覚えていますか」

証人=「提出されただろうと記憶します」

石田弁護人=「あなたが石川一雄君から取った調書で一審段階で提出されなかった調書はない、という記憶なのですね」

証人=「第一次逮捕のときの調書は提出になっていなかったのではないかと思います」

石田弁護人=「第二次逮捕後、いわゆる自白が始まったのちにあなたが被告人から取った調書はどうですか」

証人=「それは全部出ていると思います」

石田弁護人=「原検事のはどうですか」

証人=「分かりませんが、検察官調書で提出しなかったのはなかったのではないかと思います」

石田弁護人=「検察官調書は皆提出した記憶ですか」

証人=「そういう記憶が強いです」

石田弁護人=「あなたが最初に取ったのはいわゆる自白が始まってから数日のちという風に理解していいのですか」

証人=「数日と言いましたが、日数の点は必ずしも定かではありません」

石田弁護人=「六月段階ではなく七月に入ってからのような記憶のようですが、そう聞いていいのですか」

証人=「先程の橋本弁護人の尋問によると私の調書は大体七月になってからのようですから、その点から言うと全面自供後に私が被告人に当たったのは再逮捕後かなり勾留満期が近付いてからではなかったかと思います」

石田弁護人=「再逮捕の前後頃はあなたも含めた何人かの検察官は特別捜査本部に日常的に出入りしていたのですか」

証人=「そういう状態でした」

石田弁護人=「六月十三日の窃盗などの起訴の時点でも特別捜査本部に大体日常的に出入りしていたということですか」

証人=「はい」

石田弁護人=「六月十三日に多分渡辺要検事正と思いますが、窃盗などの起訴、それから恐喝未遂の不起訴について記者会見をしていますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その記者会見には鈴木次席検事も立会っているようですが、あなたは立会いませんでしたか」

証人=「私は立会っていません。それから、今不起訴と言われましたがそれは処分保留です」

石田弁護人=「その記者会見の席で検事正がどういう発表をしたか、その要旨は覚えていますね」

証人=「当時の新聞記事を読んでおりますからある程度は覚えております」

石田弁護人=「その記者会見の談話で石川一雄君の身柄を引き続き確保して捜査を続けたいという意志が表明されていたことは覚えていますね」

証人=「ちょっとはっきりしません」

石田弁護人=「六月十三日の検事正の記者会見は警察の県警本部長なり刑事部長なりと打合せの上でしたのでしょうね」

証人=「事の性質上むしろ打合せはしてないのではないかと思います」

石田弁護人=「どうしてですか」

証人=「検察庁検察庁として処分を決めたのでありそれについての新聞発表ですから警察は関係ないです」

石田弁護人=「検察官は捜査本部に日常的に出入りしているのですから十分流通をよくしておくということは意味のないことではないと思いますが」

証人=「事件をどのように処理するかという点については警察に連絡したと思いますが、記者会見自体についての打合せは行なわれていないだろうと思います」

石田弁護人=「あなたは先程、石川君の署名押印が得られなかった六月十一日付の調書について述べましたが、その調書の件で翌日も石川君を調べたと言いましたね」

証人=「はい」

石田弁護人=「翌日、清水という警察官が石川君を取調べていたかどうか覚えていますか」

証人=「翌日の私の調べが何時ごろ終わったかその点の記憶がはっきりしませんが、もし比較的早めに終わっていればその後調べているかも知れません」

石田弁護人=「六月十一日はあなたは午前中から調べたということになりますか」

証人=「そういう記憶です」

石田弁護人=「あなたは東島明という人を調べたということですが、石田豚屋の石田義男という人を調べたこともあるのではありませんか」

証人=「東島君を調べた記憶は非常にはっきりしているのですけれども、石田義男君についてははっきりした記憶はありません」

石田弁護人=「東島君を調べたのは六月十一日の前のことですか」

証人=「前後が定かでありません」

石田弁護人=「大体六月十一日にほど遠くない時期に東島君を調べているのですか」

証人=「そういう記憶です」

石田弁護人=「東島君との関係で尋ねますが、五月の何日か分かりませんがあなたが捜査に加わる以前の段階で、植木職の奥富さんという人の司法警察員調書が既に作成されていたのではありませんか」

証人=「記憶がはっきりしません」

石田弁護人=「奥富という植木職の人の供述調書があったかどうかという点の記憶はどうですか」

証人=「奥富という名前はちょっと記憶がありますが、調書については記憶がはっきりしません」

石田弁護人=「調書でなくて捜査報告書とかいう形のものはどうですか。東島君と石川君に結び付いた内容の植木職の供述があったのではないかと思われるのですが、どうですか」

証人=「それは私は知りません」

石田弁護人=「全然知りませんか」

証人=「はい。植木屋だったかどうか分かりませんが、奥富という名前は記憶があります」

石田弁護人=「あなたはこの事件の捜査に加わるようになった最初の頃、それまでの証拠資料、供述調書類、捜査報告書等の捜査書類は見たのではありませんか」

証人=「出来る限り見るように努めたと思います」

石田弁護人=「原検事からこういうものとこういうものは見るようにと、ある程度話を聞いた上で見たのですか、それとも捜査本部に行って、あるものを片っ端から見たのですか」

証人=「片っ端から見たという方に近いです」

石田弁護人=「五月二十五日に教科書、ノート類が発見されましたね」

証人=「記憶がはっきりしません」

石田弁護人=「その頃あなたは捜査に加わっていましたか」

証人=「加わっていなかったと思います」

石田弁護人=「東島明さん、石田一義さんなどが六月上旬に逮捕されていますが、その頃は捜査に加わっていましたか」

証人=「東島、石田が逮捕されてから捜査に加わったという記憶が強いです」

石田弁護人=「東島さんを調べるについて、先程の植木屋の奥富さんという人の供述調書なり、あるいはその人からの聞込みという形で作られている司法警察員の捜査報告書類に目を通していたのではないかと思われるのですが、本当に記憶がありませんか」

証人=「目を通したという記憶はありません」

石田弁護人=「警察官なり他の検察官から話を聞いたという記憶もありませんか」

証人=「そういう調書なり捜査報告書があるという話を聞いたことはありません」

石田弁護人=「被告人の司法警察員に対する供述調書類には、恐喝未遂関係であろうと窃盗などの関係であろうと捜査に加わった時点で目を通しましたか」

証人=「ざっとという程度に見ていると思います」

石田弁護人=「その中に、所沢のおばさんのいる農家に東島君と石川君が奥富という植木屋に連れられて行ったという趣旨の証拠なり供述記載はありませんでしたか」

証人=「そういう供述記載があったかどうかはっきりした記憶はありません」

(続く)