アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 696

(狭山事件裁判資料より)

【公判調書2189丁〜】

                  「第四十四回公判調書(供述)」③

証人=清水利一(五十六歳・会社員)

                                         *

石田弁護人=「石川一雄君が五月二十三日に逮捕されておりますが、それまでの間あなたは主としてどんな仕事をなさっておられたでしょうか。狭山事件捜査の中で」

証人=「私がしたのは、現場周辺の聞込みということが一番多かったものですから、たとえば通行人であるとか、被害者の家の近所、周辺」

石田弁護人=「上赤坂といいますか、堀兼部落付近ですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それが主だったんですか」

証人=「いや、そればかりではないですけれども、いろいろなあれが、ありますから、いろいろ情報もありますし、そういうのを私のところが主としてやったのは、いろいろ刑事さんから来る情報を私の手もとで解明して、白黒つけていくということが多かったです」

石田弁護人=「今お話に出ました被害者の付近の聞込みの中では、物的証拠との関係の問題もあったと思うんですけれども、どんな物的証拠などを中心にその被害者の周辺の聞込みをなさったんでしょうか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「死体発見現場から出た物的証拠などとの関わり合いを被害者宅周辺の部落民の人たちに対して、いろいろ聞込みに歩いたということはないのでしょうか」

証人=「私は石川君が逮捕される前やったということは殆ど上がってきた情報の解明が主たることで、あと聞込みは被害者の善枝さんの家の近くのあの晩の足取り、要するにいわば自転車があそこへ来たということで、その足取りに相当重点を向けて捜査させたように覚えております」

石田弁護人=「あなた自身が直接聞込みに行ったというわけでなくて、部下をそういう聞込みにやらせて、そういう聞込みをあなたが操作したり、こういう方法でやれと言ったわけですか」

証人=「端的に言いますと、ああいう大きな捜査になりますと、警部が七人も八人もおるわけですな。その上に捜査一課長、地元の署長もおり、地元の次長がおり、今お話しの飯塚さんというような方とか、それに大勢ですから、全部会議にかけて翌日の役割が決まって、それでどの面は誰ということでその日その日に操作していくわけですから、継続的に一つことというわけにはいきません」

石田弁護人=「堀兼部落など聞込みに歩かれたのは、一つには被害者の足取りということがあったわけですね」

証人=「ええ、もちろん被害者の足取り捜査をやりました」

石田弁護人=「被害者の足取りは掴めたのでしょうか」

証人=「被害者の足取りの捜査は担当が私ではなかったけれども、学校から出て或る程度のところまでは掴めたように・・・・・・」

石田弁護人=「学校から出て或る程度と申しますと」

証人=「ちょっと具体的な場所、そういうのは記憶にないんですがね」

石田弁護人=「学校の近くの郵便局あたり迄ですか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「わかりませんか」

証人=「忘れました」

石田弁護人=「仮に被害者の学校の近くまでということになりますと、堀兼部落とは関係ないんですが、堀兼部落の人たちに対しても被害者を見なかったかとか、そういう聞込みを非常にやられたということですね。そうお聞きしていいですか」

証人=「いや、そういうことではなくて、被害者の足取りは、まあ前半の捜査の段階としてやったことで、被害者が発見された場所があると、すると学校へ行った事実があると、その間に被害者というのはどの辺まで、誰かに見られているんじゃないかということで、情報をということでございます」

石田弁護人=「その点は分かったんですが、堀兼部落の捜査の重点はどんなものがあったか覚えておられますか」

証人=「これは、私の記憶に今あるのは被害者の死体に関連のあった手拭いとかタオルとかいうものは相当捜査したように覚えているんですがね。それを被害者の善枝さんの発見されたあと、私があれしたんですから。発見した状況は知りませんが」

石田弁護人=「手拭いとかタオル以外の、現場から発見されたものについて記憶ありますか」

証人=「・・・・・・・・・」

石田弁護人=「若干具体的に聞いていきますと、被害者の死体と一緒に、その死体の頭のすぐ近くに置かれていた玉石が発見されておりますが、その玉石については記憶がありますか」

証人=「石ですか」

石田弁護人=「はい、人の頭ぐらいの大きさと書かれておりますが」

証人=「これも私直接の担当じゃなかったけれども、写真でも見たし、なんかその石のほかに、ほかの物か何か一緒にあったように覚えているんですが」

石田弁護人=「そのほかの物といっても、いろいろあったようですが、荒縄なんかについては記憶がありますか」

証人=「あったような気がしますね」

石田弁護人=「その荒縄のことも関係するのかしないのか分かりませんが、丸京青果という果物市場の荷札がその荒縄といわば一緒になって発見されておりますか」

証人=「荷札の点はちょっと記憶がないんです。縄は今思い出しました」

(続く)