【公判調書2362丁〜】
「第四十六回公判調書(供述)」
証人=鈴木 彰(四十四歳・埼玉県警察官)
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石田弁護人=「鞄について尋ねますが、質屋や古物商に立ち寄っていろいろな情報が得られましたか」
証人=「鞄についてはなかったと思います」
石田弁護人=「鞄が発見された日は覚えていますか」
証人=「覚えていません」
石田弁護人=「鞄が発見されたことはあなたはどういう風にして知りましたか」
証人=「捜査本部で聞いたと思います」
石田弁護人=「堀兼にある捜査本部で聞いたのですか」
証人=「鞄についてはちょっと分かりません」
石田弁護人=「万年筆について質屋、古物商等に立ち寄った結果はどうでしたか」
証人=「質屋、古物商等では特になかったと思います」
石田弁護人=「万年筆が発見されたということは捜査本部で聞いたのですか」
証人=「そうだと思います」
石田弁護人=「その月日は覚えていませんか」
証人=「日にちは覚えていません」
石田弁護人=「鞄、万年筆、時計はどれが一番先に発見されたという風に記憶していますか」
証人=「鞄か万年筆ではなかったかと思います」
石田弁護人=「特に時計に関して尋ねますが、あなたが時計を発見しようとして直接捜索した場所は駐在所の裏の方だけですか、それ以外にもありますか」
証人=「駐在所の裏についてははっきり記憶していますが、他はちょっと覚えていません」
石田弁護人=「最初の一般的な聞込みはどの付近を歩いたのですか」
証人=「加佐志街道の方だったと思います」
石田弁護人=「加佐志街道のどの辺りからどの辺りまでですか」
証人=「西武線の線路がありますが、その線路から堀兼に寄った方の沿線の聞込みだったと思います」
石田弁護人=「その聞込みというのは主としてどういうことが含まれていたのですか」
証人=「被害者を見た人がいるかどうかということが相当ウェイトを占めていたと思います」
石田弁護人=「それに次いでウェイトを占めていたと記憶しているのはどんな事項ですか」
証人=「いわゆる不審者というか、そういう人の立回りとか、そういう関係です」
石田弁護人=「車の持ち主なども調べたことがありますか」
証人=「あります」
石田弁護人=「あなたの場合、それはやはり加佐志街道の付近が主だったのですか」
証人=「車についてはどこと特定していなかったような気がします」
石田弁護人=「車についての聞込みをしたのにはどんな目的があったのですか」
証人=「ちょっと分かりません」
石田弁護人=「車についての聞込みにはあなた自身相当広い範囲に渡って歩いた経験があるのですね」
証人=「車の捜査について何回か下命された記憶はあります」
石田弁護人=「それは、初期の一般的聞込み捜査の時からやったわけですか」
証人=「前後のことはちょっと・・・・・・・・・」
石田弁護人=「時期のことはどうなのですか」
証人=「記憶だけではちょっとはっきりしません」
石田弁護人=「被害者の学校への往復経路を加佐志街道について特に調べましたか」
証人=「そういう聞込みもしました」
石田弁護人=「そういう聞込みの中で何か自分でキャッチしませんでしたか。若干具体的に尋ねますが、被害者の善枝さんの中学時代の一学年下の堀兼中学の生徒が関口という自転車屋の付近で被害者と出会ったという聞込みを得たのではありませんか。あるいはそれに関係する聞込みをしたのではありませんか」
証人=「・・・・・・・・・・・・・・・」
(当時の関口自転車店)
(同じく関口自転車店。別角度からの撮影。)
石田弁護人=「あなたの場合、それ以外の聞込みだったのですか」
証人=「聞込みをしたときの具体的な印象はありません」
石田弁護人=「普通よくある事件と違って善枝さん事件というのは当時多くの人が関心を抱いて警察官でなくても新聞を眺めていた時期なのだから、まして捜査に直接タッチしたあなたとしては特に印象が強いのではありませんか」
証人=「記憶していません」
石田弁護人=「車の持ち主ということであなたが主として当たった家は農家が多かったのですか」
証人=「あの付近ですから農家が多かったと思います」
石田弁護人=「あの近所と言うと加佐志の付近ですか」
証人=「加佐志とか堀兼とか、全般的にあの付近は農家が多かったです」
石田弁護人=「今言ったような聞込みの結果は書面で全て報告してありますか」
証人=「その日に下命されたことの捜査の結果は毎日報告しております」
(続く)