アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 809

(被害者の物とされる腕時計は写真右端、ト印の下で発見される)

【公判調書2499丁〜】

                   「四十八回公判調書(供述)」

証人=石原安儀(五十七歳・警察官)

                                           *

石田弁護人=「三輪車の捜査は私今その検察官が聞いた詳細な捜査報告書の中身が分からないのであれですが、堀兼、加佐志辺りの三輪車の持ち主を中心に聞込まれたと」

証人=「大体、旧堀兼村付近と思います」

石田弁護人=「そうすると田中辺りは除外されているわけですね、対象から」

証人=「向こうまではのびたか、のびなかったか記憶がないんですけど」

                                            *

裁判長=「上司から時計の捜査を命ぜられて、その辺に捨てておいたと言ったから捜したと、こういうわけですね」

証人=「そうです」

裁判長=「その時にどういう具体的な言葉で言われた」

証人=「それは多分図面で説明を受けたような気がするんです」

裁判長=「その図面と、この辺というものが今の三叉路の辺りだね」

証人=「三叉路の辺りです」

裁判長=「そこの地面の道路の上に捨てたということを言ってるから捜せということ」

証人=「いや、その付近という」

裁判長=「道路ですね」

証人=「そうです」

裁判長=「そうするとあなたは出かけて行く時から、もうそんなものはありはしないという風に思って行ったんじゃないの。さっきの話では一応、第一日目に十メートルか二十メートルくらい十分か二十分捜したが無いからもうこんな所じゃ無いに決まってる、誰かが拾ったんだという推測を付けて誰拾ったんじゃないかという聞込みをやったと、こう言うんだが、出かけて行く時からそんなものはある筈ないという考えがあったんじゃないの」

証人=「いや、行ってですね、現場へ到着しまして、現場はわからないものですから現場へ到着してやって見たんですが、これは拾われたんじゃないかというように思われたんで」

裁判長=「しかし日にちは経ってるんでしょう」

証人=「日にちはだいぶ経ってます」

裁判長=「人が通る所でしょう」

証人=「人が通る所です」

裁判長=「そんなもの常識から考えたって行く時から無いと思う方がむしろ常識に合ってるんじゃないの」

証人=「だから行って場所を見て私はそう」

裁判長=「場所が、これは道は道でも草深いような場所なら捨てたまま、ないでもないという考えはあったのか」

証人=「そうです」

裁判長=「しかし行って見て一目見たらもうこんな所じゃ無いという風に考えられたんじゃないのか。捜すまでもなく」

証人=「そうです」

裁判長=「それからもう一つは、実際に発見になった場所には立会ってないと、だから正確に発見になった場所は知らないと、こういうことだったね」

証人=「そうです」

裁判長=「で、あとで聞いてみたところではその発見をした所は自分達の捜した所に該当するんだということは分かったのか、分からないのか」

証人=「その点がはっきりしません」

                                            *

石田弁護人=「今の点ですが、今、裁判長の質問にあなたは答えてそうですということを言われてね、あれしたんだが、現場でいろいろ農家から道具まで借りて、どっちみちだめだという気持ちがあるならそこまでの捜索はしないと思うんですが、どうですか」

証人=「これはやっぱり念のためにやって見なくちゃならないです」

石田弁護人=「念のために一生懸命やったわけですか」

証人=「そうです」

                                            *

宮沢弁護人=「先ほどの石田弁護人のほうから質問があったんですが、捜査の班を三組に組まれたということですね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「で、記録によりますと、 先ほどもありましたようにあなたと鹿野警察官と、これが一組。それから飯野警察官と増野警察官、これが一組の報告書、それからもう一組は鈴木警察官と宇田川警察官、この三つの組の報告書があるんですがね」

証人=「はい」

宮沢弁護人=「それでですね、あなたは梅沢警察官も捜索に関与されたと最初に証言されましたですね」

証人=「はい、ですからそれはだから捜索と、要するに聞込みというのを私は一貫して申し上げているわけなんです。二日か三日やったその一貫したやつを申し上げているわけです」

宮沢弁護人=「そうすると、梅沢はこの時計の発見ですね、聞込みじゃなくて時計の発見」

証人=「聞込みのほうだと思います」

宮沢弁護人=「聞込みだけですか」

証人=「と、記憶していますね」

宮沢弁護人=「で、今日午前中に梅沢証人が来て、時計の発見も茶株の辺のこれを調査したと、こういう証言をされているんですがね」

証人=「じゃそのほうが正しいと思います。古いもんで誰と誰ということになるとどうも分かり兼ねるんです。だから本人が言ってればその本人が言ってるのが正しいと思います」

宮沢弁護人=「それじゃ梅沢も、あなたとしてはその梅沢がそう言ってるんなら時計の発見の努力をされたという風に承っていいわけですね」

証人=「結局本人が言ってれば本人の言うことが一番正しいと思いますから」

宮沢弁護人=「そうすると、その時計の発見のほうは一日でなく二日に渡ってやったんじゃないんですか」

証人=「捜索はそうだけど、あとはその付近もう私は拾われたんじゃないかという先入観があったんで、あの辺を片っ端から戸別に聞込みをしたんです」

宮沢弁護人=「だけど聞込みだけれども現実に道路付近、要するに時計を捨てたといわれるあなたが指示された図面の周辺ですね、そこを現実に鍬でやったりして捜されたのは」

証人=「一回だけです」

宮沢弁護人=「梅沢がやったのは梅沢の記録によるとどうも六月の三十日のようなんですがね」

証人=「ああ、そうですか」

宮沢弁護人=「二日に渡ってやったんじゃないですか」

証人=「そうすると私はそれが見つからず、じゃ三十日は私じゃなく私がほかをやって、梅沢、当時の部長今は警部補ですけれども、がやったんじゃないかと思いますけれども」

宮沢弁護人=「そうするとあなたの班は一回きりしかやらなかった」

証人=「私は一度しかやっておりません」

宮沢弁護人=「ほかの班は二度に渡ってやったということも考えられるわけですね」

証人=「私はあり得るんじゃないかと思います」

                                            * 

昭和四十六年六月一日          東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官 重信義子