【公判調書2456丁〜】
「第四十八回公判調書(供述)」
証人=梅沢 茂
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宮沢弁護人=「あなたのご証言で、三、四人ですか、そういう人たちと時計の発見の所に捜査をしたというようなことですが、そのとき石原安儀という警察官はおりませんでしたか」
証人=「やっぱり一緒に捜査した人ですから居たかも知れません」
宮沢弁護人=「鹿野さんという人は」
証人=「その人も捜査しておりました。時計に行ったかどうかは記憶にありませんけれども一緒に捜査をした人ですから」
宮沢弁護人=「時計で一緒にあなたと組を組んだかどうかは別として、捜査には行っていた一人ではないんですか」
証人=「鹿野ですか、それが今、果たして鹿野が居たかどうかという記憶はありませんが」
宮沢弁護人=「一緒に捜査をしたという記憶は」
証人=「あの事件の当時捜査員で、やりましたからね」
宮沢弁護人=「あなたと同じ班に属していたんですか」
証人=「別に班という極まりはなかったわけですね、捜査の進展状況によって人員が違って来ますから」
宮沢弁護人=「増野という警察官はどうだったんですか」
証人=「増野というのは何人か居たような記憶があるんですが、名前は何というんですか」
宮沢弁護人=「増野孫治」
証人=「おりましたねえ」
宮沢弁護人=「その人も時計の捜査にあたったんじゃないんですか」
証人=「それは記憶ありません」
宮沢弁護人=「鈴木とおるという警察官はどうです」
証人=「記憶ありません」
宮沢弁護人=「宇田川昭治という人は」
証人=「宇田川昭治はおりました」
証人=「鈴木章という人はおりましたですね」
宮沢弁護人=「井上という警察官はどうですか」
証人=「名前は何というんですかね」
宮沢弁護人=「それもちょっと名前は分からないんですが、あなたとよく組を組んで動いた人のようですが」
証人=「私と一緒にですか、やったのは。井上熊造というのが居たかも知れません」
宮沢弁護人=「その人も一緒に時計の捜査なんかに従事されたんじゃないですか」
証人=「時計の捜査に従事したかどうかという記憶はありません」
宮沢弁護人=「一緒にやったという記憶はあるんですね」
証人=「はい」
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中田弁護人=「さっきから時計を捜された付近の民家で聞込みをしたということを何度か聞かれたわけですが、その聞込みというのは何を聞きに行ったんですか」
証人=「要するに時計をその付近で拾ったか、あるいは見た人はいないかということが重点だったと思います」
中田弁護人=「どんな時計かということは勿論、説明したわけでしょうね」
証人=「説明したはずです」
中田弁護人=「そうすると狭山事件に関して犯人がここに捨てたと言っているんだと、こういう時計だと、そういう説明もしたんですか」
証人=「そういうことは原則として我々は言わないわけですから、言ってないはずです」
中田弁護人=「とにかくどういう時計かということは説明したわけですね」
証人=「そうです」
中田弁護人=「当然に女持ちのこういう時計だということは言いましたね」
証人=「はい」
中田弁護人=「特別重要品触についてさっき示されたものの半分くらいの、時計だけのものを作ったように思うと。はっきりしないにしても」
証人=「はい」
中田弁護人=「今の記憶では何かいっぺん書いて作り替えたという、そういうあれがあるわけですね」
証人=「無論これを作るにしても一回で作ったんじゃなくて、書き替えたり紙を汚したり、字を間違えたりしてやり直ししたんです」
中田弁護人=「そういった間に、品触れに載せる時計の側番号が何か間違ってるとか何とかいうので、書き替えたというようなことはありますか」
証人=「記憶がありません」
中田弁護人=「記憶がないというのは、そういうことは多分なかったろうという感じなんですか。今、そう言われても全然そういう記憶はないということでしょうか」
証人=「困りましたねぇ、記憶がないんですね、そういうことがあったかどうかについて」
中田弁護人=「のちになって、お前が作った特別重要品触に書いた時計の側番号は間違っていたと、誰かから言われたことはありますか」
証人=「さあ、そういう記憶もありません」
(続く)
(特別重要品触)